ある種の階級のためには、
やたらカッ飛ばすより、
パーティーなどに乗りつける
コスチュームも必要。



DB9ヴォランテを選ぶ価値とは――


 エンジンは例の60度V型12気筒5935cc。燃焼室設計などにフォード・デュラテックで開発した理論を応用したモダンなもので、ヴァンキッシュSの520psよりややマイルドな450psを生む。逆に低中速を重視したバルブタイミングのためトルクは58.0kg-mと、2.7kg-m太い。AT仕様というだけでなく(普通の6速MTも選べる)、より広範囲の日常的ドライビングに対する配慮が見える。おもしろいのは、それでも荒法師的なフィーリングにこだわったのか、アクセルを踏んで3500rpmを超えるとストレート系の排気管が開き、やおらグォッと野獣の咆哮をまき散らす。
  走行感覚はヴァンキッシュと変わらない。どちらかといえば昔風の操縦性で、ウェットサンプのため比較的高くマウントされた12気筒が基本的な性格を決めてしまっている。コーナーに向けて切り込んだ瞬間、長いボンネットの奥の重量物を実感させられる。フロントの重心も高めで、なんとなくドッコイショ感覚で曲がり出す。もっとも、だから鈍感というわけでもなく、それを承知でワンテンポ早めに操作するのがコツだ。
  ところで話題をオープン関係に絞ると、大きな魅力のポイントが二つある。まず、本当にオープンの実感が濃い。最近この種のクルマはウィンドスクリーンが大きく寝ているため、ちょっと上を見た程度ではオープンエアの爽快感が薄い。でもDB9ヴォランテはウィンドスクリーン上端の位置決定が非常に巧みで、しっかり空気や光と、さらに頭上を過ぎてゆく梢や摩天楼と戯れることができる。
  一方、クローズド状態でのいささか過度なまでの囲まれ感、包まれ感もいいものだ。リアウインドーが非常に小さく、余裕のない車庫入れなど難儀だが、そこにこそわざわざキャンバストップであることの良さもある。閉じた姿を斜め後ろから観察しても、全体と幌との比率や輪郭に譬えようのない風格が漂う。
  この存在感をメルセデスで得ようとすれば、おそらく'60 年代まで遡らなければならないだろう。それだけでも今、DB9ヴォランテを選ぶ値打ちは決定的だ。しかし最近テストで経験した範囲でも、小さいトラブルの可能性など、けっして少なくない。機械としての完成度が高いメルセデス(さらにはレクサス)などと比較すれば、こちらはある意味で動物のようなところがある。だから単なるクルマとしてではなく、愛犬と過ごすように接することのできる気持ちの持ち主にだけ、こっそり薦めたいクルマではある。
 

MERCEDES-BENZ SL55AMG

まさに全能のスーパースター
メルセデス・ベンツが誇る完全無欠のロードスター。試乗車は'02年のF1セーフティカーのイメージをロードカーとして具現化したSL55AMG“パフォーマンス・パッケージ”で、専用デザインのフロントスポイラーやマルチピース19インチホイールを装着。5.5リッターV8スーパーチャージャー・ユニットに変更はないものの、ブレーキやABCには専用チューンが施される。この他、3.5リッターV6のSL350、5リッターV8+7GトロニックのSL500、5.5リッター/6リッターV12ツインターボのSL600/SL65AMGをラインナップ。

Specification
■全長×全幅×全高=4535×1830×1300mm
■ホイールベース=2560mm ■車両重量=1970kg
■エンジン種類/排気量=V8SOHC24V/5438cc
■最高出力=500ps(368kW)/6100rpm
■最大トルク=71.4kg-m(700Nm)/2750〜4000rpm
■トランスミッション=5AT
■サスペンション(F:R)=4リンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/35R19:285/30R19
■東京標準現金価格=19,320,000円
(問い合わせ先=ダイムラー・クライスラー日本 TEL:0120-190-610)
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