

#10 Luxury Open

アストンマーティンDB9ヴォランテ
ASTON MARTIN DB9 VOLANTE

メルセデスベンツSL55AMG
MERCEDES-BENZ SL55AMG

所有すること自体がアイデンティティ。

コスチュームとして着飾るなら――。

いま、粋なラグジャリーオープンを一台選ぶとすれば、その筆頭格がDB9ヴォランテだ。その理由は、ひと言でいって“カッコイイから”に尽きる。日常性を加味するならば、メルセデス・ベンツSLという選択もある。しかし、このクラスのクルマはまず、所有欲が満たされてこそ存在意義があるというもの。ゆえに、どちらがコスチュームとして身にまとって心地よいかで考えると――。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|郡 大二郎|D.Kori

 
高級オープンカーに求められる要素とは

贅沢なオープンカーを問われれば、まず十人が十人、メルセデスSLを挙げるに違いない。それも当然で、そういうクルマに求められる要素を、きっちり満遍なく具えているからだ。それで足りなければ、同じSLでもスーパーチャージャー付き爆裂馬力のAMG仕様がある。まあ、クルマとしての在りように違いはないが。
まず値打ちの第一はメルセデスであること。オープン2シーターであろうとセダンであろうと、それぞれである前にメルセデスであることを運命付けられている以上、例によって例のごとき質感と走行感覚が保証されるからだ。妙にスポーツカーっぽく構えていないのも、SLの大きな魅力だろう。
走らせてみての満足感と安心感も折り紙付き。そのうえAMGときたら、いかにもメルセデス界ならではのヒエラルキー意識を満たしてくれるばかりか、踏んで引っ張ればアメリカン・ビッグバンガーばりにブチ切れたエキゾーストノートをまき散らすなど、ワル的な演出にも事欠かない。
おまけに、オープンであることのデメリットが非常に少ない。つまりクローズド状態での居住性と使い勝手がよろしい。いや、むしろ「クーペ、時々カブリオレ」が真の姿。基本的にクローズド状態で乗り、よほど気が向いた時だけコンソールのスイッチで屋根を開け放つのが正しい使い方だ。だからこそ、折り畳んでも嵩張ってトランクの大半を占領し、もちろんコストもかかるメタルトップ(望めばさらにガラス化も)なのだ。
しかし、メルセデスであること自体がマイナス要因にもなる矛盾もある。ブランドとしての神通力はたいしたものだが、最近どうもポピュラーになりすぎた気配もある。これではせっかくのSLも、「みんな、いいって言ってるしぃ」的に深く考えずに先入観だけで買ったように見えてしまう。
そこに思いが至ったならば、思い切り一発ヒネリを入れて発想を切り替え、たとえばアストン・マーティンなど、真剣に検討する価値はある。ただ者ならぬ佇まいでありながら、誰もが知っているようでよく知らず、どことなく高貴であり、そのくせ武力腕力も兼ね備え、過度に華美ではないが艶やかな充実感は見る者を沈黙させる。
そんなアストンの中で贅沢なオープンといえば、DB9ヴォランテを指名せざるを得まい。今オープンといえばこれしかないという消極的な理由でなく、DB9系そのものが、現行アストン一族の中でやや軟派に属するからだ。
軟派といっても軟弱とは違う。スーパーGTたるヴァンキッシュほど筋骨隆々と仕立てられていないというだけで、世間の基準では微々たる差でも、アストン的価値観ではソフトなのだ。ある意味で、DB9はタウンカー的アストンと分類してもよろしい。ある種の階級のためには、やたらカッ飛ばすより、パーティなどに乗りつけるコスチュームも必要なのだ。
そのポイントは変速機にある。ヴァンキッシュ系が2ペダル・シーケンシャル6速MTなのに対し、DB9はAT(ZF製の6HP26型)。穏やかにシティドライブする状況には、シーケンシャルMTの自動シフトモードより百倍は好適だ。あちらの場合、あくまでオートモードは余技であって、シフトショックもかなり目立つ。
ただし、うっかり予習せずに乗ると騙されるから要注意。変速機そのものは違うのに、ダッシュ中央に並ぶPやRなどの切り替えボタンや、ステアリングの向こう側のシフトパドルなど、形も操作方法もヴァンキッシュとまったく変わらないからだ。そこでオートモードを使うと、まったくギクシャク感がないのに驚き、ついつい「シーケンシャルMTのソフトウェアが大幅に改善された」と思い込まされることになる。そのうえマニュアルモードでのシフトレスポンスも非常に鋭く、急激なアクセル操作に対するトルコン・スリップも感じにくいなど、スポーティに乗る場合でもシーケンシャルMTに対する不利が見つからない。
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これが最新ブリティッシュ・モード
先進テクノロジーと伝統のクラフトマンシップをハイレベルで融合した、ブリティッシュ2+2オープンスポーツ。ヴァンキッシュS同様の6リッターV12ユニットを搭載するが、こちらは450ps/58.1kg-mとスペックはやや控えめ。軽量かつ耐久性に優れたキャンバストップの採用により、トランクルームはオープン時でもクーペと同容量を確保する。内装の組み合わせは20色のレザー、8色のカーペット、3種類のウッドトリムから選択可能で、ブラックおよびサンドストーンを含む7色のルーフカラーが用意される。

Specification
■全長×全幅×全高=4710×1875×1270mm
■ホイールベース=2740mm ■車両重量=1800kg
■エンジン種類/排気量=V12DOHC48V/5935cc
■最高出力=450ps(336kW)/6000rpm
■最大トルク=58.1kg-m(570Nm)/5000rpm
■トランスミッション=6AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/40ZR19:275/35ZR19
■東京標準現金価格=20,055,000円
(問い合わせ先=アトランティックカーズ TEL:03-3583-8611)
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