アウディA8 3.2 FSIクワトロ
Audi A8 3.2 FSI quattro

迎撃体制、完了セリ!
アウディの旗艦は、バリエーション拡大で
Sクラスを包囲。


アルミボディやW12エンジン、さらにはMMIにクワトロ……、といった具合にアウディが誇る最先端を満載する旗艦、A8にベーシックなV6モデルが登場。もちろん、ベーシックといえそこはA8。独自のテイストは、薄まるどころか、むしろより鮮明になっていた――。

リポート|小野泰治|T.Ono(本誌) フォト|アウディジャパン

その「世界」はV8版と変わらない

 ビッグセダンならでは、と言える贅沢な感覚を必要にして十分な走りをもたらす小さなエンジンで満喫できる──。A8の新グレード、3.2FSIクワトロの魅力を手短にまとめるとこうなる。まあ、一般的な尺度だと3.2リッターのV6は間違いなく大きなエンジンだが、同じボディのまま6リッターの12気筒まで飲み込む高級セダンの心臓部としては、最小レベルと言って差し支えないだろう。
  このV6、日本でもすでにA6やA4に採用されて上陸しているから、アウディのエンジンとして特に目新しくはない。当然ながら、90度のバンク角や気筒あたり4バルブとなるDOHCヘッド、FSI(直噴)といった根っこの部分は変わらないし実質的なパワー&トルクも同じ。だから、全長5mオーバーとなる巨体を目の前にすると、いささか心許ないというイメージを抱きがちになる。
  だが、そうした先入観は実際に走らせればキレイになくなる。2400〜5500rpmという広いレンジで最大トルクの90%以上を発揮するV6は、1.8t近いボディをストレスなく走らせるのだ。もちろん、高級感(といまやある種の背徳感)の演出に貢献する力強さはソコソコ、というレベルにとどまるが鈍重な感触、あるいはミッションのギア比などで帳尻合わせをしているようなせわしなさとは無縁。プレステージセダンに相応しい、落ち着きのある加速感とでも言えば良いだろうか。個人的には、もう少し吹け上がりに潤いが欲しい気もするが、高級車のユニットとしては及第以上の水準だと思う。
  もちろん、絶対的なパフォーマンスにも不足はない。むしろ0〜100km/h加速7.7秒、最高速が250km(リミッター作動)という数値は社会的に見れば過剰な部類に入るハズ。今回、国際試乗会が行なわれたミュンヘン近郊では瞬間的に何度か200km/hオーバーを試す機会もあったが、その速域に達する時間はカタログデータを裏付ける短さであったことをご報告しておく。
  シャシーの味付けも、ビッグセダンとしては真っ当な仕上がりだ。フロントのオーバーハングにエンジンを“ぶら下げる”レイアウトとあって、シリーズ中最軽量のユニットを搭載するとはいえ身軽な印象は乏しい。そうした意味では、同じV6搭載車でもサイズから想像される以上の軽快感で乗り手を驚かせるメルセデスSクラス(もちろんW220だ)やジャガーXJのようなグレード固有の魅力が見出しにくいのは事実。
  だが、裏を返せばそれはサイズに見合った重厚感と表現できる類のものであり、なおかつV6でも大筋においてV8以上のエンジンを搭載するA8と同じ世界が得られるということでもある。スポーティなイメージもウリにするA8だから足回りは引き締まっているが、標準ボディでも3m近いホイールベースを持つだけに乗り心地は落ち着いたもの。こうした美点は、まさに冒頭に書いた「贅沢な感覚」の最たる部分だ。
  蛇足ながら付け加えておくと、操縦性も基本的には他のA8同様スポーティだ。もちろん、前述のレイアウトに加え4WDということで攻め込んでいけばアンダー傾向は強まる。だが、スロットルのサジ加減次第でクルマの向きを変えられる性格だから(当然、スタビリティはクワトロシステムがギャランティする)、たとえば中速以上のコーナーではサイズに似合わないシャープさ披露してくれる。
  このように、A8のベーシックとはいっても兄貴分に見劣りしない内容を持つV6モデル。そのボディに対して小さなエンジンが「社会性にも配慮している」というアピールになり得ることも加味するなら、実にアウディらしい1台だと結論付けることができる。
Specification
Audi A8 3.2 FSI quattro
■全長/全幅/全高(mm)
5062/1894/1444
■ホイールベース(mm)
2944
■トレッド(前/後)(mm)
1629/1615
■車両重量(kg)
1785
■エンジン種類
V6DOHC24V
■排気量(cc)
3123
■最高出力(ps(kW)/rpm)
260(191)/6500
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
33.7(330)/3250
■トランスミッション
6AT
■サスペンション(F:R)
4リンク/エアSP:
トラペゾイダル/エアSP
■ブレーキ(F:R)
Vディスク/Vディスク
■タイヤ(ホイール)
235/55R17(8J)
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値です。
 
日本には、8月末の上陸を予定している3.2FSIクワトロ。今年は600台の販売が見込まれているA8の中で、約10%がこのモデルになるというのがインポーターの読みだが……。ちなみに、本国には同じエンジンにマルチトロニック(CVT)を組み合わせた仕様もある。
3.2リッターV6のFSIユニットは、大柄なA8に必要にして十分な動力性能と優れた経済性をもたらす。燃費は、本国における走行モードの総平均で10km/リッター以上。クワトロ仕様に組み合わせるミッションは6速ATのみ。
'06年モデルでは、映像&音声シグナル付き「アウディ・パーキングシステム・プラス」やデジタルラジオチューナーに代表されるアメニティの充実化が図られたA8。インテリアの仕立ては、基本的に従来と変わらない。
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