アストン・マーティン・ヴァンキッシュS
ASTON MARTIN VANQUISH S

紳士的なGT、ときどき、
狂気的なスーパースポーツ


specification ASTON MARTIN VANQUISH S
■全長×全幅×全高=4670×1920×1330mm■ホイールベース=2690mm■車両重量=1875kg■エンジン種類/排気量=V12DOHC48V/5935cc■最高出力=520ps(388kW)/7000rpm■最大トルク=58.8kg-m(577Nm)/5800rpm■トランスミッション=6速シーケンシャルMT■サスペンション(F:R)=Wウィッシュボーン:Wウィッシュボーン■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=255/40ZR19:285/40ZR19
■東京標準現金価格=27,300,000円:問い合わせ先



笹目二朗S.J.Sasame : valuation

高級サルーンにも匹敵する
静粛性とスムーズな走行性


 ドライビングポジションは、スポーツカーというより豪華GTのそれ。やや高年齢層向きの趣味で、雰囲気を楽しむクルマだ。F430はガンガンかっ飛ばしても不安や不満を感じないが、これは壊れないことを祈って、恐る恐る探っていく感覚がある。この日も実際には問題なかったが、警告灯が点いたりして信頼性に欠けた。少数台数を作るスペシャリストは1台1台を入念にチェックできるはずで、その分も高価な価格に含まれているのだから、こうした細部にまで特に神経を尖らせるべきだ。信頼性が確保できなければむしろプリミティブなままにして、電気部品は使わない方がいいと思う。
  基本的な構成はむしろオーバークオリティなくらいで、ガッシリと作られている。よって、やや鈍重な感じを受けるほど大きくて重さを感じる。とはいえ、動き出してしまえばV12パワーで身軽に走り回れ、静粛にしてスムーズな走行性は高級サルーンにも匹敵する。
  2ペダルMTは6速もあるが、無理矢理パドルシフトしなくてもオートモードで流せばいい。マニュアルシフトを好むならば、むしろ足でクラッチ操作する本来のMTを選んだ方が賢明だ。ギアもエンジンも回転する質量の慣性が大きいから、どっちみち素早いシフトは望むべくもないからだ。7000rpmからレッドの回転計、340km/hスケールの速度計など、400mを13秒台で走る実力を誇示しなくとも存在感はある。

熊倉重春S.Kumakura : valuation

ビッグパワーを纏った古典的筋肉系スポーツ

 466psから520psへの大幅パワーアップとはいえ、元々どこからでも暴力的に持ち上げる怪力の持ち主だっただけに、同時にサーキットかテストコースで乗り比べなければ違いははっきりわからない。ただただ呆れるほどパンチに富むというだけ。身のこなしは古典的筋肉系ビッグスポーツそのもの。始動の瞬間あたりを払う排気音も、スポーツカー乗りの心の琴線をかき鳴らす。とろとろ街を流しながらもドキドキするのは本当で、やはり英国は男の道楽の本場なのを痛感する。
  ただし冷静に観察すると、エイヤッと振り回す瞬間、やはりウェットサンプゆえかエンジンが前方に搭載されているためか、マラネロなどに比べフロントの重心の高さを感じることもあるのが惜しい。いや、そんなに限界まで攻めず、ゆるやかにうねるカントリーロードで生け垣をかすめながら、パドルシフトで2、3、4速を使いわけてアクセルワークを楽しむのが本来あるべき姿に違いない。
  特にS用というわけではなく、生産する過程でシーケンシャル6速MTの制御も初期型より細部が改善された感じだ。
  ただし、これほど豪華に仕立てられたコクピットでも、シフトの瞬間ギアボックス内のコクンという音は直接的に聞こえる。実用に供することもできるが、電装系や配管の一部など細部の信頼性に少し不安が残る点で「生物的」なクルマと見ておこうか。

萩原秀輝H.Hagihara : valuation

アストンらしい立ち居振る舞い

ヴァンキッシュSはスタイリングのディテールにスゴ味がある。走りも同様であり、エンジンにしろシャシーにしろ、荒々しさを隠していない。そのほうがアストン・マーティンらしいという考え方もあるだろう。だが、個人的には全体としての洗練度が高いDB9に魅力を感じる。スタイリングの美しさは比類ない。

齋藤 聡S.Saito : valuation

そのパフォーマンスは刺激よりも麻薬に近い

刺激というよりも麻薬に近い魅力を持っている。スムーズかつパワフルなV12気筒エンジンと、氷の上を滑るような乗り心地の織り成すハーモニーは別世界のもの。操縦性は、古きよきFRスポーツの匂いを持っているが、躾がよく、驚くほど穏やかなパワードリフトを見せる……ってそういう走りはしないか。

島下泰久Y.Shimashita : valuation

不足なき完成度と濃厚なブリティッシュネス

スタイリングも各部の仕立ても、そしてもちろん動力性能も、すべてが豊潤で過剰で贅沢なヴァンキッシュをさらにパワーアップしているのだから、何か不足があるはずもない。内外装ともに懐古趣味的要素を排しながら、V12の咆哮含めて見事にブリティッシュ風味を醸し出しているあたりも相変わらず見事だ。

軽量アルミニウムおよびカーボンファイバーを、アストンマーティン独自の特殊技術で組み合わせることで、類い希なるボディ強度&剛性を確保。520psのハイパワーにも耐えうる高剛性ボディが、卓越したハンドリングにも貢献している。
乗る者すべてを魅了すると断言できるほど、官能的&刺激的なサウンドを奏でるオールアルミ製V12ユニット。520psと58.8kg-mというパワーとトルクにより、最高速度は321km/h、0→100km/h加速は4.8秒という動力性能を発揮する。
19インチの軽量鍛造アルミホイールが標準。その内側には、378mmの大径ベンチレーテッドディスクと、新開発の6ピストンキャリパーが組み合わされる。リアディスクはフロントよりも厚く、放熱性とフェード性に優れる。
インテリアには、フルグレインレザーなどの自然素材をふんだんに採用。グラブハンドルとパドルシフトは上質感あふれるキャストアルミ仕上げ。センターダッシュのスタータースイッチを押せば、V12ユニットの咆哮が響き渡る。
クッションに厚みが持たされた、やや張りのあるスポーツシートはサポート性、快適性ともに申し分のないもの。キャビン内のレイアウトは、後席を持つ2+2と、リアシェルフ付きの2シーターからチョイスすることができる。
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