アウディA8 6.0クワトロ
AUDI A8 6.0 quattro

アウディのハイテク・ショールーム

新世代アウディの象徴ともいえるシングルフレームグリルだが、実はプロダクションモデルとして初めてそれをフロントエンドに組み込んだのが、A8のトップモデルであり、アウディのフラッグシップでもあるこの6.0クワトロだ。
本国ではすでに'03年に発表されていたが、熟成を重ねた上でようやく日本上陸と相成った。


リポート|熊倉重春|S.Kumakura  フォト|望月浩彦|H.Mochizuki

その正体は走るロボット

 アウディはRS路線も凄いが、ノーマル系も負けてはいない。いや、これをノーマルと呼べるかどうかも疑わしい。ドイツを蹂躪する「これでもか!」の暴風に艦隊を率いて斬り込むA8 6.0、まったく呆れたドリームセダンだ。特に諸元表にこだわる日本では、崇拝の対象にさえなるかもしれない。
  A8はアウディ・セダンの最高峰。それに自慢のW型12気筒を詰め込んだ(文字通り『詰め込んだ』のが、ボンネットを開ければわかる)のが、この6.0だ。ゴルフVR6から始まった特異な超狭角モノブロックV型6気筒を2セット組み合わせたのがそれ。一個のブロックに3気筒ずつ2列が15度ずれて並び、それをまた互いに72度向かい合わせた構成だから、W12というよりツインV6という方が正確かもしれない。だから全長が4気筒より短く、楽にフロントオーバーハングに搭載できる。こんな場所にこんなものを縦に置くなど、世界でもこれしかない。
  それにしても、排気量に勝るチューンなし。NA6リッターが絞り出す最高出力450psは、静粛性などのため遠慮しすぎた数字だろう。それよりも60kg-m近いトルクに注目すべし。この排気量なら55kg-mあたりが常識なのを思えば、高効率ぶりに驚く。しかもその8〜9割を、ほとんどアイドリング近辺からズズ〜ッと生み続けるのだから、どんな抵抗も意味がない。
  想像してみたまえ。こんなエンジンからお家芸のフルタイム4WD機構、それに考え得る限りの豪華安楽装備を満載し、おまけに全長5mオーバーとくれば、空車でも2トンを超える(それでも総アルミボディの御利益で、メルセデスやBMWの12気筒車よりは軽い)。そんな巨漢なのに、ゼロ発進100km/hまでわずか5.2秒、ほとんどポルシェ911に匹敵する突進力を発揮するのだ。そう聞くと、いかにも筋力と肺活量モリモリの体育会系を連想しそうだが、まったく違う。そこがA8 6.0だけの特技で、本当にいとも涼しげにやってのける。
  だから舌なめずりしながらアクセルを踏み込んでも、みごとに肩透かしを食らう。極端に言うなら「体感がない」。バックレストに身体が押し付けられるとか血流が偏るとかではなく、ただボンネットの向こうから低く滑らかなため息が聞こえた瞬間、周囲の風景が五色の帯となって後方に飛び去るだけなのだ。感覚的には、地上で最もクールな超特急だろう。
  ただし、こんなパワーとトルクに感心するだけでは、まだ値打ちの半分しか理解できない。これを余すところなく路面に刻み込み、寸時も安定を失わないシャシーあってこそ、初めてエンジンも生きる。その第一は、やはり自慢のフルタイム4WD(クワトロ・システム)だ。前後パワー配分のどんな瞬間にも、あらゆる現象が時間差ゼロで実行されるトルセン・センターデフにより、50対50を基本として前75/後25から前25/後75まで無段階に変わることにより、とにかくパワーを無駄遣いしない。やや濡れたヘアピンから2速など低いギアで全開をくれてやっても、計器盤の中のトラクションコントロール警告灯が一瞬光るだけで、簡単すぎるほど猛然と立ち上がる。ここがメルセデスやBMWの12気筒と根本的に違うところで、あちらは完全に直進状態に至るまで、ずっと断続的に制御が介入し続ける。高性能車はすべて4WDであるべしという主張も、これに乗れば納得できる。
  もちろん電子制御のエアサスペンションをはじめESPなど各種の安定保持装置も余裕たっぷりなので、どう操ってもクルマの動きは常に一定している。というよりも、クルマがドライバーの意思を読み取り、無限に用意されたプログラムの中から、瞬間的に最善のレスポンスを提供しているだけにも思えてしまう。つまり、姿こそ自動車でありながら、その正体は走るロボットというわけだ。これは同じA8でも4.2クワトロをテストした時に報告したが、さらに115psと16kg-mを上積みし、160kg重くなっても、まだ余裕を残して同じ演技ができている。
 
2基の狭角V6ユニットを向かい合わせにドッキングさせた6リッターW12。基本構成はVWフェートンのそれと共通ながら、パワーで+30ps、トルクで+3kg-mほどこちらの方がハイチューンとなる。
バリエーションは写真の標準ボディと、ホイールベースが+130mm延長されたストレッチ版の2モデル構成。6.0クワトロのみ、左右に振り分けられたテールパイプはリアスポイラーと一体化する形で顔を覗かせる。
フラットなトルク特性が与えられたW12ユニット、さらに最新の電子制御が盛り込まれた高知能シャシーにより、まさに緩急自在の走りをいとも簡単に引き出すことができる。
Copyright (C) GAKKEN CO., LTD. All Rights Reserved.