癒し系にこそ宿る旨味

RENAULTルノー・カングー
KANGOO

FIAT フィアット・ムルティプラ
MULTIPLA

CITROEN シトロエン・クサラ ピカソ
XSARA PICASSO

ゆるやかに流れるラテン時間を堪能するなら

目くじら立てて走るばかりがクルマの楽しみではない。
存在そのものがユーモラスで、乗るだけで癒されるクルマ。
ラテン車にはそんな魅力を持つモデルがしっかり存在する。
ここではそんな癒し系ラテン車3台を集めてみた。
そのワクワク感の源は果たして何処にあるのか、
じっくり考察してみる。


リポート|萩原秀輝|H.Hagihara  フォト|柏田芳敬|Y.Kashiwada

キーワードは空間演出の巧みさ

 ラテンなクルマは、気持ちを高ぶらせる。エンジンの性能を目いっぱい使いながら、ボディを盛大にロールさせつつコーナーを駆けぬける。それでいて、ドライバーはニコニコ顔で鼻歌交じり。あるいは、同乗者とともに大きな口を開けて笑い合っている。そんなイメージがある。
  もちろん、日本人の勝手な思い込みかもしれないが、特別なスポーツカーを別にすれば「そうなんだよね」とうなずいてくれる人が多いのではないだろうか。でも、すべてのクルマがそうではない。もちろん、気持ちが暗くなったりということではない。気持ちがホッとするような、そんな癒し系のクルマもなかにはあるのだ。
  キーワードは、空間演出の巧みさだと思う。居心地の良さと言葉を変えてもいい。単に広いだけでは素っ気なさすぎて、かえって不安になる。そうではなく、ゆったりとくつろげる感じ。たとえば、フィアット・ムルティプラだ。
  室内には、大人6人が均等に座れるシートとスペースが用意されている。とはいっても、ラテンな人はもちろん、日本人でも大柄な男性6人というのはちょっとキツイ。でも、何人かが女性だったり子供だったりすれば、とたんに雰囲気は変わるはずだ。乗り込む前から、誰がどこに座るかの席決めで盛り上がる。そして、決まった席に座ってからも、それぞれの専用シートをスライドさせたりリクライニングさせたりしながら、またまた盛り上がるわけだ。
  ここまでの段階でも、ムルティプラは気持ちを高ぶらせるタイプのラテンなクルマとしても素質の高さを十分に感じさせてくれる。ところが、走り始めるときっと乗り込んだ人の雰囲気が変わっていくことに気付くはずだ。高ぶった気持ちが、自然と癒されていくからだ。それはもう、いい意味で高級サルーンの味わいといえる。
  まず、乗り心地が文句なしに素晴らしい。クッションは軟らかめだがダンピングがしっかりしているシートが体にフィットし、路面からの入力を遮断する。そもそもシートに振動が伝わる前に、ボディが抑え込んでしまう。さらにいえば、サスペンションがしなやかなので、補修を繰り返したような路面の荒さが気にならない。
  それでいて、ボディは無駄に動かない。この点は見事だ。まさに高級サルーン並みのトレッドとホイールベースを備えているので、サスペンションが十分に動いていてもロールやピッチングが抑えられる。もうひと回りボディがコンパクトであれば、ロールもピッチングももっと大きめに感じただろう。ムルティプラの特異なパッケージングが、このフラットな乗り味を実現しているわけだ。
  そういった、高級サルーンのような刺激の少なさが乗り込んだ人の雰囲気を穏やかにする。エンジンは、大柄なボディの割りには排気量が1.6リッターしかなく最高出力も103psと数値的にも物足りない。エンジンを目いっぱい回しながら走りたくなるところだ。ムルティプラも、そう走らせれば期待通りの気持ちの高ぶりが得られるのだろうが、でも、実用回転域のトルクを生かしながら走ると、高速域でも優れた静粛性が確かめられ快適さが実感できる。
  そのころには、乗り込んだ人が気持ちよさそうに眠っているかもしれない。もし、高級サルーンであれば自分がいきなり運転手になったような気持ちになりかねないが、ムルティプラはそうならないはずだ。自分も癒されていることに気付くからだ。インテリアに漂う独特のセンスは、運転する人の余計な緊張感をスッと抜かせるような力を備えていそうだ。
 
FIAT MULTIPLA

顔は普通でも独自の世界感は失わず
フロントウインドー下に丸形の複眼ヘッドランプを配置して、あたかも威嚇する甲殻類を思わせた初期型から、マイチェン後は一気に普通のフィアット顔になったムルティプラ。とはいえ前3席、後ろ3席というシートレイアウト、ファブリックで覆われたインパネ回り、良好な乗り心地と素直なハンドリングなどがもたらす独特のムルティプラ・ワールドは健在だ。1.6リッター直4DOHCエンジンは、103ps/14.8kg-mとスペック上は平凡ながら高回転まで元気に回るイタリア印。

−採点表− エンジン★★★ 乗り心地★★★★★
ハンドリング★★★★ ワクワク度★★★ ラテン濃度★★★★

Specification
■全長×全幅×全高=4095×1875×1680mm■ホイールベース=2665mm■車両重量=1410kg■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1596cc■最高出力=103ps(76kW)/5750rpm■最大トルク=14.8kg-m(145 Nm)/4000rpm■トランスミッション=5MT■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム■タイヤサイズ=195/60R15■東京標準現金価格=2,844,450円
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