KEYWORD POWER|パワーと理性と。

絶対的なエンジンパワーだけでなく、
それをどう路面に伝えるかが
カギとなる。


安全に速さを実感させるサウンドチューンも絶妙

 さて、最新モデルという意味も含め今回の主役となったC55は、デリバティブとしての価値を高めるためにC32とは異なる手段を用いている。C32はスーパーチャージャーによってエンジン性能の大幅な向上を図っていたが、C55は排気量の拡大が直接的な手段となる。何と、Cクラスのボンネット下に5.5リッターのV型8気筒エンジンを搭載しているのだ。
  したがって、AMGによるエンジン本体のメカニカルチューニングは高度ではない。367psに達する最高出力の発生回転数も、5750rpmとE500が積む5リッターエンジンと変わらない。ただし、得られる絶対性能の高さは超現実的であり、パワーウエイトレシオも4.50kg/psとなる。
  それを象徴するかのように、試乗を終えてドアを開けるとフロア下からの熱気によって陽炎が立っていた。サウンド的な演出も十分に施され、アクセルを踏み込むと吸気音が加速の迫力を際立たせ、その後に排気音がついてくる。それは、加速の伸びのよさを実感させる役割を果たす。実際に、最高出力を発生する回転数は低めであっても、高回転域での頭打ち感はなくレブリミットの6500rpmを振り切る勢いで吹け上がる。
  気になるのは、フロントに大排気量のV型8気筒エンジンを押し込んだことによる前後重量配分の悪化だ。実は、この点にこそAMGの真価が発揮されたのだろう。前後重量配分は、車検証の記載に基づくと55対45となる。FRとしては評価できる数値ではない。ところが、それをまったく感じさせないのだ。まず、ステアリングの手応えがCクラスよりもスッキリと軽めだ。そのため、ステアリング操作に対してノーズが気持ちよく向きを変える実感が得られる。そして、常に弱アンダーステア傾向を維持するだけに、強烈な加速を示すわりには身構えることなくアクセルが踏めるのだ。
  このあたりに、デリバティブとしての価値の置き方の違いが認められる。M3は、状況によってはドライバーを否応なしに身構えさせる。そもそも、そうした領域にドライバーを誘い込もうとする。大排気量化に頼ることなく、高度なメカニカルチューニングによって獲得した最高出力343ps/7900rpmという数値が、3.2リッター直列6気筒エンジンの特性を象徴しているようなものだ。
  とにかく、エンジンをブン回してこそ本領が発揮される。中回転域では排気パルスが弾けるような金属質の音を響かせ、クルマ自らが「アクセルをもっと踏め」とドライバーの感性を刺激する。そうした走り方をすると、コーナリング中は後輪のグリップ状態が腰のあたりにムズムズと伝わってくる。リアの荷重は今回の3車では最も大きいので、その分だけリアリティが高いのだ。アクセルを踏みすぎれば、ムズムズがピリピリに変わるので、緊張感も増すわけだ。
  とはいうものの、その先ではDSCが介入するのでいきなり危険な状況に陥ることはない。さらにいえば、その介入は大げさではないため、盛り上がった緊張感をシラけさせることもない。あくまでもドライバーが主役となってM3の実力を引き出すために、運転に集中するといった状況には何も変わりはないのだ。そこから非日常的な場面に飛び込む覚悟でDSC解除スイッチに手を伸ばすのも、日常的な場面に復帰してM3の意外な実用性を確かめるのも、ドライバーの判断に委ねられる。
  さて、昨年の主役であったS4は、エンジンを大排気量化しつつメカニカルチューニングも施すことで、デリバティブとしての価値を高めている。4.2リッターのV型8気筒エンジンは、最高出力344ps/7000rpmを発揮する。AMGに対する1000rpm以上の高回転化や、M3に対する1psの出力強化は決して偶然ではないだろう。実際にS4のアクセルを踏み込むと、C55の精神的余裕とM3の緊張感の間にS4の刺激がもたらされている気がする。
  たとえば、アクセル操作に対するエンジンの応答性はM3に迫るほど鋭い。ラフなアクセル操作をすると、ギクシャクした走りになりかねない。C55にそういう心配はなく、M3は常にそうなる可能性がある。とはいうものの、コーナリング中にアクセルを大ざっぱに操作しても、M3のように腰のあたりがピリピリすることはない。驚くのは、ESPを解除してもドライコンディションの舗装路であれば結果に大差がない。この点は、C55やM3とは異なるクワトロ・システムを備えるS4ならではの威力といえる。
  ただし、フロントの荷重が車検証の記載で1100kgにも達するだけに、タイトなコーナーに飛び込むとアンダーステアを意識することがある。ところが、そこからステアリングを切り込むことでアンダーステアを抑えられるだけの余力も残されている。とくに、コーナーの立ち上がりではフロントがノーズをイン側に向けようとするような動きも示す。それは、慣れないと違和感にもなるが、その一方ではS4の個性にもなる。
  このように、絶対性能では3モデルともに究極のレベルに達している。だが、官能評価は別。さて、皆さんにとっての主役は!?
 
AUDI S4

初代S4は2.7リッターV6ツインターボを搭載していたが、2代目となる最新モデルは4.2リッターV8NAを積む。駆動方式は、フルタイム4WDのクワトロ。フロントヘビーを逆に利用し、圧倒的なトラクションを利して豪快に曲がっていく様はS4ならではの持ち味だ。DVDナビ、アルカンタラとレザーのコンビとなる、レカロスポーツシートは標準装備。エクステリアは極めてノーマルに近く、その控えめな佇まいが魅力的に映る向きもあるはずだ。
  適度な緊張感を堪能できる
×理性を失うような誘いはない

Specification
■全長×全高×全幅=4585×1780×1410mm
■ホイールベース=2645mm ■車両重量=1750kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC40V/4163cc
■最高出力=344ps(253kW)/7000rpm
■最大トルク=41.8kg-m(410Nm)/3500rpm
■トランスミッション=6速AT
■サスペンション(F:R)=4リンク:トラペゾイダル
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ=235/40R18 ■東京標準現金価格=8,032,500円
MERCEDES-BENZ C55 AMG

3.2リッターV6スーパーチャージャー仕様から一転、新たに5.5リッターV8NAを搭載するC55 AMG。V6より縦に長いV8エンジンを収めるため、フロント部分はCLKのパーツを流用。全長はノーマルに比べ85mm延長されている。エンジンだけでなく、ステアリングシフト機能や強化ブレーキ、専用エキゾーストシステムなども装備。DVDナビ、レザースポーツシートは標準装備される。フロントヘビーを意識させないハンドリングは、見事と言うしかない。
  身構えずにパワーが楽しめる
×官能といえるような
  刺激ではない

Specification
■全長×全高×全幅=4620×1745×1410mm
■ホイールベース=2715mm ■車両重量=1650kg
■エンジン種類/排気量=V8SOHC24V/5438cc
■最高出力=367ps(270kW)/5750rpm
■最大トルク=52.0kg-m(510Nm)/4000rpm
■トランスミッション=5速AT
■サスペンション(F:R)=3リンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/40R18:245/35R18
■東京標準現金価格=9,660,000円
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