Aston Martin
アストン・マーティンDB9
DB9

名門復活を約束する
リアル・ブリティッシュGT


打倒フェラーリを旗頭にしたV12ヴァンキッシュで、あらためてその存在を世に示したアストン・マーティン。そして、さらなる最新テクノロジーと、伝統のクラフツマンシップを余すことなく注入し、さらなる飛躍を賭けて送り出されたのが、DB7の後継にあたるDB9だ。今回、ひとしきり日本の路上で走らせてみたいまなら、即座にこう断言できる。その成功は約束されたものだ、と。


リポート|萩原秀輝|H.Hagihara  フォト|郡大二郎|D.Kohri
アストン・マーティンの技術と伝統が凝縮

 有り難いことに、人も羨むようなクルマに乗る機会が多いので、それを所有したいとまでは思わない。とくに、高価なクルマの場合は、端から別世界の存在として覚めた目で見てしまいがちになる。むしろ、その方が余計な感情移入がないので客観的な評価ができる。
 だが、今回は違った。DB9を見た瞬間から、魅了されてしまったのだ。そうなると、スタイリングの美しさを分析するといった客観的な評価ができない。ボクを支配しているのは、ただただ“カッコイイ”と思わせる、官能に訴えかけるような視覚への刺激だった。
 後になって資料で確かめると、ボディ外板にはアルミニウムと軽量複合素材が用いられていた。それらは、量産を前提にした行程を経ることなくハンドメイドで仕上げられるため、ひとつひとつのパネルが寸分の狂いもなく組み付けられている。たとえば、ヘッドライトアッセンブリーと、そのために一気にフリーハンドで描かなければ表現できないような形状でくり抜かれたフェンダーの見事な面一感は、DB9の見せ場となる。
 さらに、前後ホイールに対して、絶妙なバランスでウインドーグラフィックの頂点が位置し、それが完璧な前後重量配分を実現していることの証明となる。また、DB9は2+2の4シーターなのだが、それにしても機能だけを考えるとリアホイールの位置がかなり後ろ寄りだ。後席との間には何があるのか不思議になる。
 その理由はふたつだ。前後重量配分を最適化するために、トランスミッションとリアアクスルを一体化したトランスアクスル方式を採用すること。そして、VHプラットフォームと呼ぶ、水平と垂直を基本として構成されるアルミニウム製のボディ骨格が、美しいスタイリングを表現するためのデザインの余裕を生み出しているのだ。
 話を戻そう。DB9のスタイリングに魅了されつつドアを開けたとき、そのインテリアはボクの官能を直接つかんだ。光沢を帯びたフルグレインレザーの肌触り、バンブーと呼ぶ竹を埋め込んだトリムの手触り、アルミニウムの冷たさ、ガラスの量感、いずれも感動を呼ばずにはおかなかった。
 とくに、バンブーはいわゆるウッドパネルとは異なり、薄くスライスしたつき板を貼ったわけではない。まるで、日本の寄せ木細工のように、厚さのある部材を100分の1ミリの隙間もなく合わせて、その表面を平らに仕上げてある。その結果、竹の繊細な紋様に節がアクセントになり、他のどのクルマでも見たことがない美しさが表現されている。
 そして、センタークラスターの中央にあるエンジンスタートスイッチは、何とガラス製。それに触れるたびに、オーナーは特別な1台を所有する満足感が得られるに違いない。感動は続く。灰皿のリッドを開けると、そこにはガラス製の灰皿が収まっている。ボクには喫煙の習慣がないが、それをさり気なく使うためにシガーでも嗜んでみようとさえ思う。
 
工芸品のごときウッドトリムや、鈍く輝くアルミのアプリケーションをはじめ、インテリアはオーナーのリクエストに合わせたテーラーメイドが可能。コクピット回りにATセレクターは存在せず、シフトチェンジはステアリングコラムに固定装着されるパドルスイッチと、センターパネル上部に横一線で並ぶP/R/N/Dのボタンで行なう。
  シートは前後ともたっぷりとした肉厚で、職人技が感じられるしっかりとした作り。なお、2+2とはいえ後席足下のスペースはないに等しいため、荷物スペースと割り切って使いたい。
  10スポークの19インチアルミに組み合わせられるタイヤは、フロントが235/40ZR、リアが275/35ZRのBSポテンザRE050。強力な制動力を発揮するブレーキは、グルーブ付きのベンチレーテッドディスクが採用。
  トランクスペースは、2泊3日程度の、2人分の旅行バック程度なら十分に収まるサイズ。
  斬新な形状のリアコンビネーションランプ。スピーディかつ均等に強力な光を放つLEDシステムも、DB9を機に投入された革新的技術のひとつだ。なお、2005年には6速MTモデルやコンバーチブルも上陸予定。
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