
他のクラスに比べ、サイズやコスト面での制約が厳しいことにより、逆に個性的なモデルが数多く生まれているスモールカー・ワールド。
ここでは、先頃上陸を果たした個性派の代表格、スマート・フォーフォーを中心に新旧7台のスモールカーを比較。そのベンチマークを判定する――。
リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara フォト|宮門秀行|H.Miyakado
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スモールカーには、独立した世界が存在する。もともと、様々な価値を一度に備えることが物理的にできないという制約が、逆にスモールカーの個性を際立たせているからだ。同時に、選ぶ側にとってもスモールカーは気楽な存在だ。ある人は日常の足として、またある人は趣味の1台として選ぶことに、躊躇いが生じないからだ。
とはいうものの、そんなスモールカーにもメーカーごとの主張が反映されているから面白い。まずは、スマートのフォーフォー1.5だ。スマートは、当初スウォッチカーとも呼ばれ、使い捨て感覚(まさかそうする人はいないが)を逆手にとって、それを個性に結びつけたクルマだった。フォーフォーになると、ダイムラー・クライスラーの意向が強く反映されたためか、クルマとしてかなりマジメな造りになるが、根底にある精神は当初のままだ。
三菱のコルト1.5エレガンスXもまた、例のTVCFの通り“マジメマジメ”の代表格だ。ただ、今回揃えたクルマのなかにあっては「さすがはニッポン車」と思わず誇りたくなる上質感が、クルマ全体から溢れ出している。
もっとマジメなのがVWだ。VWは、クラスによってクルマの考え方を変えていない。ドイツ系メーカーには、もともとそうした傾向があるが、それは中身の話であって発散すべき個性は別と考えそうなものだが、ポロ4ドアレザーパッケージを見るとVWだけは例外となっていることがわかる。
欧州フォードは、道具そのものの空気のように存在感のないクルマを造り続けてきたが、Ka以降のモデルはデザインで、さらにフォーカス以降のモデルからは走りで個性を主張。このフィエスタ1600ギアには、その両方の価値が感じ取れる存在感がある。
プジョー206スタイルは、日本では女性の足として人気があるクルマだ。ヒールが低くて歩きやすそうなのに、お洒落な感じが十分に伝わってくるような靴と同じ役割を果たしてきた。もっとも、それを女性に独占させておくのは惜しいと考える男性も数多い。
シトロエンのC2 1.4VTRは、思いっきり個性的なクルマだ。あまり年齢が変わらない兄のC3が、スモールカーとしての基本的な価値を備えるので、弟は奔放に遊んでいる感じがする。そのため、C2は乗る人にとって「ちょっと飛んでみました」的なお洒落が演出できるし、身近な遊び相手にもなってくれるはずだ。
トリは、フィアットのパンダが締め括る。最近のフィアットはコンサバ傾向にある。パンダの顔つきにも、それが現れているので心配になったが、乗ってみるとまさにイタリアンなスモールカーだったのでひと安心。そう、乗る人は余計な先入観を持たない方がいい。パンダはアクセルを踏むだけで、気持ちを変えてしまうくらいの主張を持っている。

いくら個性的であっても、スモールカーとして外せない価値がある。それはパッケージングの合理性だ。フォーフォーは、この点で超合理的だ。ボディ全長は3790mmとコンパクトだが、フォーフォーの名の通り大人4名が乗れる室内スペースを確保。男性としても大柄なリポーターでも、理想的なドライビングポジションが得られる。シートは座面の奥行きがあり、腰のあたりをビタッと支えてくれる。適度なタイト感もあり、状態もグラつかない。
その真後ろの席に座っても、足元スペースの余裕は十分。頭上スペースは少なめだが、窮屈に感じるほどではない。残念なのは、前席と比べてシートのサイズが小さいこと。座面の奥行きが少なく背もたれも立ちぎみ。この辺りには、スモールカーの制約を感じる。
実は、フォーフォーのベースになっているのがコルトだ。ボディ全高が高い分だけ、室内スペースはフォーフォーよりもさらに広々としている。インテリアは、サルーンカーのような高級感のある仕上げになっているので、見た目にはいかにも快適そうだ。実際に、平均的な体格の人ならそう感じるに違いない。ただ、シートのサイズが前後ともに小さめなことが気になる。座面の奥行きが少ないために、尻だけを乗せているような座り方になってしまうのだ。
ポロは、まさに合理的なパッケージングを実現している。大人4名が乗るための丁度いいスペースを確保しながら、スモールカーとしては広めの荷物スペースも得ている。そして、何よりもシートの造りがいい。長時間の走行でも疲れが少なそうな形状となる。スモールカーだからといって、基本的な要素に手抜きをしないのはVWならではの魅力といえる。
フィエスタも、スモールカーにしてはボディが大柄な分だけ室内スペースは広い。ギアになると、インテリアの質感が高く装備も充実しているので、スモールカーにありがちな道具っぽさを少しだけ排除できる。この、少しだけというのが巧みなところで、決して背伸びをしている感じはない。残念なのはシートのサイズが小さめなことだが、リポーターにとってはそう感じるだけで、コルトと同様に、大多数のニッポン人にとっては十分に快適なはずだ。
206は、今回集まったクルマのなかではボディサイズが小さめだ。というよりも、もともとは206あたりが標準サイズ。他のモデルが大柄になり、とくに車高を高くして室内スペースを稼いでいる。そのため、206は室内スペースの広さでは主張がない。とはいうものの、スモールカーなのだから小さいほど価値があると考える人も多い。パーソナルカーとして使うのであれば、206のボディサイズはいかにも街中をキビキビと走ってくれそうな期待がある。
C2は、パッケージングでも遊んでいる。基本的には4シーターではなく2+2シーターだ。前席も、見た目のサポート感を強調したシートのデザインから想像ができる通りに、タイトに身体を支えてくれる。後席は、平均的体格のニッポン人ならどうにか座れるといったスペースしか確保していない。ただ、そのスペースを多彩に使えるシートアレンジが可能だ。
スモールカーを得意とするフィアットらしく、パンダはスペースの使い方が巧い。イタリアの田舎町で、太ったオジサンが陽気な顔でパンダをビュンビュン走らせている姿が目に浮かぶようだ。大きめのシートに腰をかけると、身構えるところが何もない。気軽にアクセルを踏み込んでみたくなる。後席も、シートが真っ平らに見えるわりには腰を深くかけることができる。足元のスペースは広くないが、窮屈なほどではない。後席から太ったオバサンが陽気な顔で降りてきても不思議ではない。
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specification
■全長×全幅×全高=3790×1685×1460mm
■ホイールベース=2500mm
■車両重量=1070kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1498cc
■最高出力=109ps(80kW)/6000rpm
■最大トルク=14.8kg-m(145Nm)/4000rpm
■トランスミッション=6AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=195/50R15
■東京標準現金価格=2,289,000円
(ダイムラー・クライスラー日本) |
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今回はフォーフォーの兄弟車として登場願った三菱コルト。実際、ホイールベースは共通の2500mm。サイズも似通った数値となるなど、プラットフォーム共有による共通性はいろいろな面で見てとれる。取り立てて個性的な面が見えにくいコルトだが、十分な室内空間や上質感のあるインテリア、CVTによる滑らかで力強い走行感覚など、スモールカーに求められる性能をバランスよく装備していることがひとつの特徴といえるだろう。試乗車は上級仕様の1.5エレガンスXで、1.5リッターから8ps/6000rpm&13.5kg-m/4250rpmを発揮する直4DOHC16Vユニットを搭載する。

specification
■全長×全幅×全高=3870×1680×1550mm
■ホイールベース=2500mm
■車両重量=1040kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1468cc
■最高出力=98ps(72kW)/6000rpm
■最大トルク=13.5kg-m(132Nm)/4250rpm
■トランスミッション=CVT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム
■タイヤサイズ=175/65R14
■東京標準現金価格=1,480,500円
(三菱自動車工業) |
個性を主張しないことが個性となる正統派モデル
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クラスの中心的存在として、常にライバルに追われる立場にあるポロ。必要にして最小限のエンジンパワー、4人がしっかり乗れるけれど取りたてて広くはない室内、そこそこの容量のラゲッジスペースなどなど、個別のファクターを見ていくとあまりパッとしないのだが、その集合体としてのポロはクラスの基準たるに相応しい完成度を見せるから不思議だ。試乗車は4ドアのレザーパッケージ仕様で、レザーシートが標準装備となる。エンジンは、1.4リッターから75ps/5000rpm&12.8kg-m/3800rpmを発揮する直4DOHC16Vユニットで、これに4速ATを組み合わせる。

specification
■全長×全幅×全高=3890×1665×1480mm
■ホイールベース=2470mm
■車両重量=1160kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1389cc
■最高出力=75ps(55kW)/5000rpm
■最大トルク=12.8kg-m(126Nm)/3800rpm
■トランスミッション=4AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=185/60R14
■東京標準現金価格=2,142,000円
(フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン) |
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欧州では高い人気を誇るフィエスタ。ポロとは対極的に、走りの楽しさを得られることが大きな魅力となる。全長3915×全幅1685×全高1445mmと、このクラスとしてはボディも大柄なため室内スペースにも余裕がある。日本ではGHIAとGLXの2グレードをラインナップ。エンジンは共通の1.6リッター直4DOHC16Vで100ps/6000rpm&14.9kg-m/4000rpmを発揮。これに4速ATを組み合わせている。試乗車は上級仕様となるGHIAで、フルカラードされた前後バンパーやインダッシュ6連奏CDチェンジャーが標準装備されるなど、GLXに対して少しだけ豪華な装備が与えられる。

specification
■全長×全幅×全高=3915×1685×1445mm
■ホイールベース=2485mm
■車両重量=1130kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1595cc
■最高出力=100ps(74kW)/6000rpm
■最大トルク=14.9kg-m(146Nm)/4000rpm
■トランスミッション=4AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:ツイストビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム
■タイヤサイズ=175/65R14
■東京標準現金価格=1,958,250円
(フォード・ジャパン) |
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