
大胆なスタイリングを纏い、先代A6がデビューした時は世界に衝撃が走ったものだった。
当時を思えば、今回のフルモデルチェンジは刺激が少ないようにも思える。
だが、それはアウディの周到な戦略ゆえ。じっくり見て、ひとたびステアリングを握ればその大きなキャラクターの変貌ぶりに、驚くことは間違いない!

リポート|笹目二朗|J.Sasame フォト|郡大二郎|D.Kori
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新しいA6を見て、その印象は複雑だ。ビジュアルを変えることで新しさの表現を模索しているのだろうが、アウディはこれからどうなるのだろう? と多少不安になった。メルセデス・コンプレックスを強める姿勢は、これまでアウディが提唱してきた“技術による前進”とは方向が逆だからだ。
売れるクルマを造ることは自動車メーカーにとって至上命題かもしれないが、ブランド力を高める過程を終え「さぁこれから売っていこう」という時期になり、突如守勢に回ってしまったように感じるのだ。これまでのアウディは保守本流をちょっと外して、少数派ながら知性を感じさせ、カッコ良さに自己満足するような、そんな孤高の気高さがあった。だが、新しいA6の迫力あるマスクには、そんな奥ゆかしさをあまり感じない。
……と、冒頭からややネガティブになってしまったが、まずは大きく変化したボディの話題からお伝えしよう。スリーサイズは全長4915mm、全幅1855mm、全高1455mmと、先代比で110mm長く、45mm広く、5mm高くなった。ホイールベースも2845mmと80mm延ばされ、いまやA8にも迫るほどの大きさである。往時のアウトウニオン・レーシングカーをイメージさせる「シングルフレーム」のラジエターグリルは、新型に切り替わったことを強烈に意識させ、確かに先行車がバックミラーで捕らえる姿は迫力満点だ。威圧感に満ちているとさえいえるほどだが、日本ナンバーがついたA6は写真で見たドイツナンバーのA6より縦横比が改善されて、少しは大人しくなった気がする。
フロントの強さに対してリアがやや弱く感じられるのは、Cピラーが細めでリアウインドーの傾斜が強く、セダンらしい落ち着きがないからだろうか。このあたりのディテールの処理に関しては、先代A6発表時にデザイナーから聞いた言葉を思い出す。彼は「長い間(4年?)そのクルマを手元に置いて眺め、そして微修正を加えていく」という、日本の匠の技にも似た技法によって完成度を高めていくと話していたが、最近のデザインは短期促成が流行りだから、そこまでこだわる人は少ないのだろうか。それとも閃いたアイディアをパッとすぐに具現化できる、現代デザイン技術の盲点なのか。
アルミ好きのアウディにして、A6はボンネットとフェンダーにしかアルミを使っておらず、外板で目立った軽量化はされていない。しかし、重量増加は思いのほか少なく、3.2クワトロで1790kg、4.2クワトロで1850kgと発表されている。とはいえ、実際に走らせてみると、拡大されたサイズだけではないのだろうが、全体の動きはやや緩慢になってしまった。ややラグジャリー方向にシフトしたともいえるだろう。
搭載されるエンジンは3種。2.4リッターFFはアウディ伝統の8mmボアを使うこれまでのV6をアップデートしたもので、177ps/23.4kg-m。3.2リッターV6と4.2リッターV8は、84.5mmのボアと92.8mmのストロークを共用する90度バンクのモジュラーエンジンだ。パワー/トルクはそれぞれ255ps/33.6kg-mと335ps/42.8kg-m。興味深いのはA8のV8とは排気量が違うことで、A8用はストロークが93mmと、10ccほど排気量が大きい。しかし、いずれはA6のユニットに統一されるのだろう。そしてV6は「3.2」という名前は同じでも、A3やTTなど、横置き用の狭角V6とはまったく異なる新開発のFSI(直噴)エンジンだ。
組み合わされる6ATギアボックスはA8同様にZF流のワイドレシオで、DSGの採用は今回も見送られた。4WDのクワトロシステムは先代と同じものを踏襲。最近の4WDはプロペラシャフトやドライブシャフト、リアデフなど基本の設備投資は同じながら、電子制御の名の下に部分的にしか使えない半端なものが増えたが、アウディ伝統のフルタイム4WDは、現状でもっとも洗練された性能をキッチリと常時発揮する。なかでも駆動系のスムーズさは比類なく、2輪駆動では決して得られない滑らかな走行性は、比較はもとより絶対値として優位にある。

走り出した最初の驚きは乗り心地のフラット感であり、A4系とはまったく異なり、ヒョコヒョコした突き上げ感はまるでない。ダンパー減衰力の設定が巧くいっている証拠だ。4.2はタイヤが245/40R18とやや太過ぎて多少ドタバタ重い印象があり、ここでのお勧めは3.2となる。
FSIエンジンは低回転域のトルクがやや期待値を下回る。6ATはシフトレバーを左に倒してマニュアルシフトも可能で、これはステアリングポストに付いたパドル(右が+左が−)でもシフトできるが、マニュアルモードで2速なり3速から発進することはできず、必ず1速から発進する。クワトロは本物の4WDゆえに、砂利が浮き出ていてもホイールスピンするような下品な挙動は起こさないから、1速から滑らかで強烈な加速が得られるのだ。この点はいい。しかし、A8の時にも感じたが、6ATは下3段がワイドレシオなため、2速の加速感がやや物足りない。
各ギア間のステップアップ比を見ていくと、1.78/1.54/1.33/1.32/1.25となるが、この数字を見るまでもなく6段をもっと巧く配分すべきだ。このZF製ギアボックスはBMWやジャガーにも採用されるが、彼らはFRゆえ2速発進に対応させなくてはならない都合があるのだろうが、4WDのアウディは独自の設定を要求すべきだろう。この見地からすると、3.2と4.2の間には価格差に見合うほどのフィーリングの向上代は感じられない。やはり、アウディは早期に専用の縦置きDSGを開発すべきだ。
アウディといえば、これでもかといわんばかりに技術的に積極策を採ってきた。時にそれが押しつけがましく感じることもあり、エッセンスのみ簡略化した普及型であるVW車に、より清潔感を感じたこともあった。しかし、いま思えば、そうして攻める部分こそがアウディの魅力であったのだ。
今度のA6は外観もより大きく立派になり、廉価版の2.4リッターの装備も上級車と変わらないほど充実させてきた。ただし、これははっきりいって販売強化策であり、メルセデス・コンプレックスを裏返すものでもある。A6は技術的にはまだまだアドバンテージもあるし、より洗練されてきた熟成感もある。しかし、このグリル以外の部分にアウディらしい新味が感じられないのも事実。果たして、アウディは顧客ターゲットを変えようとしているのだろうか……。
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V6は2.4リッターと3.2リッターが用意されるが、後者は新開発となる直噴FSIユニット。吸排気バルブの開閉タイミングを無段可変式とし、255ps/33.6kg-mを発揮する。 |
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3.2FSIクワトロ。アグレッシブなフロントに対し、リアは端正な佇まい。ホイールは9スポークで、タイヤは225/50R17のコンチ・スポーツコンタクト2。 |
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乗り心地はフラットで、クワトロの精緻な走行感覚もあり快適そのもの。ハンドリングはラグジャリー寄りになったが、これはスポーツグレードの追加を見越してのことだろう。 |
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4.2クワトロ。ボディサイズは大きくなったが、全体のシルエットは先代A6を踏襲している。ホイールは重厚感のある7スポークデザインで、タイヤサイズは245/40R18。 |
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アウディとしては久しぶりにドライバー重視のインパネデザインを採用。ウッドパネルはインテリアカラーにより、ウォールナットとバーチウッド(写真)が用意される。 |
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| BMWのiドライブに対し、アウディの車両コミュニケーション・インターフェイスはMMIと呼ばれる。AV、ナビ、車両設定システムを統合したもので、全車に標準装備。 |
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| 546リッターの容量を持つトランクルームは、シングルフォールディング式のトランクスルー機構付き。これはEクラスの505リッター、5シリーズの520リッターを大きく上回る。 |
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| ホイールベースが80mm延長されたことによる、室内スペースの拡大は顕著だ。レザーシートは4.2クワトロのみ標準、そのほかはオプション。スポーツシートも選択できる。 |


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| AUDI A6 |
3.2 FSI QUATTRO
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4.2 QUATTRO
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| ■全長/全幅/全高(mm) |
4915/1855/1455
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| ■ホイールベース(mm) |
2845
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| ■トレッド(前/後)(mm) |
1590/1600
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1585/1590
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| ■車両重量(kg) |
1790
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1850
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| ■乗車定員(名) |
5
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| ■エンジン種類 |
AUK/V6DOHC24V
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BAT/V8DOHC40V
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| ■排気量'cc) |
3122
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4163
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| ■最高出力(ps(kW)/rpm) |
255(188)/6500
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335(246)/6600
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| ■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm) |
33.6(330)/3250
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42.8(420)3500
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| ■トランスミッション |
6AT
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| ■サスペンション(F:R) |
4リンク/コイル:Wウイッシュボーン/コイル
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| ■ブレーキ(F:R) |
Vディスク/ディスク
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Vディスク/Vディスク
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| ■タイヤ(ホイール) |
225/50R17(7.5J)
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245/40R18(8J)
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| ■東京標準現金価格 |
\7,000,000
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\8,850,000
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| 問い合わせ先 |
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| ※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。 |
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