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メルセデスの真価を味わうには、中途半端では意味がない。一番のベーシックモデルか、最高バージョンのどちらかに限る。そして、CL65AMGが駆け抜けた跡にはペンペン草も生えない。やはり「世界に冠たるメルセデス」は本当だったのだ。
とにかくアクセルを踏み込んだ瞬間、周囲のすべてが凍りつく。いくらフェラーリ・マラネロがパワフルでも、ある意味あちらは予想通りであって、感銘は受けるが驚きはしない。ところがCL65AMGはスポーツカーでもなく、自重2tを超える優雅で巨大なパーソナルクーペでありながら、一瞬にしてすべての抵抗を徹底的に踏みにじるのだ。こんなに冷静かつスマートに、こんなに暴力をふるえるクルマなど、ほかには見たことも聞いたこともない。
ここで注目すべきは612psの最高出力より、2000rpm〜4000rpmの広い範囲にわたって湧き出る102kg-m(!)ものトルクだろう。最高出力そのものは4800rpmで出るが、その回転数でCL65を走らせ続けられる状況などあるわけがないので、話題以上の意味もない。
しかしトルクは、現実の速さに最も効く。レース界のルールを当てはめて過給係数1.7を乗ずれば、NA換算で1万166ccに相当するから当然とはいえ、三ケタにも達するトルクには腰を抜かさずにはいられない。推定ではアイドリングの少し上あたりですでに通常の6リッター級を凌ぐ筋力を発揮しているはずなので、とにかく何もかもが呆気ない。ブーともグーとも言わず、一瞬フン! と鼻息を荒らげただけで、血液がすべて後頭部に集中するほど加速するのだ。この日テストに使った地方空港の短い滑走路で、制動開始ポイントまでに200km/hを突破できたのは、いかにもそれらしく見えるマラネロとコンチネンタルGTを除けばCL65AMGだけだった。しかもメルセデスは、圧倒的に涼しい顔と声でやってのけた。
このV12エンジンはS600ツインターボの5513ccがベースだが、あちらが過給による燃焼室圧力を警戒し、NA時代のS600(5786cc)よりボアを2mm縮めたのとは反対に、5980ccまで堂々と排気量を上げてある。これまでの経験で耐久性に自信を持った結果だろう。
これほどの超絶パワーをトルコンATで平然と使いこなしたところにも、メルセデス技術陣の「どうだ、ここまでできるか」の声が聞こえそうだ。ただしATは最新の7速ではなく、使い慣れた5速のまま。これほどトルクに余裕があれば7速など不要だし、なるべく機構を単純にしておかなければ持ちこたえられないだろう。もっとも、この5速でも、わざわざティップシフトでマニュアル操作する必要など微塵もない。
さらに特筆すべきは、これほどのパワーを車体側が完全に消化していること。初めてS600ツインターボに乗った時には、その速さに感心こそすれ、もはやブレーキなど能力いっぱいだと思ったものだが、今度は違う。AMGはなんとフロントに390mm径のコンポジットディスクを投入したのだ。これの威力は絶大で、もう駄目かと目をつむる滑走路の末端で、これほどのボディを余裕たっぷりに停めたばかりか、その反復にもまったく不平を言わなかった。これより効くブレーキは、フェラーリ・エンツォかポルシェのPCCBか、55台限定生産のCL55AMG・F1だけだ。
こんなに限界知らずのCL65AMG、さすがに最高速だけは250km/hのリミッターで抑えられているが、それより前に、ドライバーの心にリミッターを付けておく必要があるだろう。

Specification
■全長×全高×全幅=4993×1857×1398mm
■ホイールベース=2885mm
■車両重量=2155kg
■エンジン種類/排気量=V12SOHC36V+ツインターボ/5980cc
■最高出力=612ps(450kW)/4800-5100rpm
■最大トルク=102kg-m(1000Nm)/2000-4000rpm
■トランスミッション=5AT
■サスペンション(F:R)=4リンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/40R19:275/35R19
■東京標準現金価格=26,355,000円(ダイムラー・クライスラー日本)
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Sクラス・クーペと呼べるのがCLだが、その頂点に君臨するのがCL65AMGだ。ハウスチューナーのAMGが手がけたV12ツインターボは612ps/102kg-mを発生するが、驚くべきはこのパワーがきちんと調教されていること。「シャシーはエンジンより速く」のメルセデス流儀がここでもしっかり貫かれている。試乗車のインテリアに輝くストーンパネルは本物の石をスライスしたもので、787,500円のオプションとなる。
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