ここ数年、ヨーロッパではパワー競争が激化、その傾向はとどまる所を知らない。思えば昨年のフランクフルト・ショーも、右手ではエコロジーを謳いながら、臆面もなく左手でハイパワーを愛でているような内容だった。それは建前や正論ではない、「圧倒的性能こそが、人間の欲望を直截的に揺り動かせる」という本質をストレートに突いた現象に思えた。
 事実、高性能はブランドのプレミアム性を高める上で、重要な要素の一つになっている。となればメルセデス、BMWという老舗に対抗するドイツ第3の勢力としてプレミアムブランドを自認するアウディが、超高性能モデルをラインナップするのは当然の成り行きだ。実際、アウディが展開しているSシリーズもメルセデスのAMG、BMWならMに相当する役割が与えられている。もっとも、SシリーズはAMGやMと比較すれば独立したイメージはさほどでもなく、ベースとなるモデルのフラッグシップ的性格が色濃い(最近はAMGも同じ傾向だが)。
 今回、採り上げるS4アバントは、その典型ともいえる内容に仕上げられている。搭載するエンジンは4.2リッターV8で、344ps&41.8kg-mのパワー&トルクを発生する。だが、このユニットに関してはピーク時の数値よりも注目すべきポイントがある。
 このエンジン、びっくりするほど軽く吹け上がるのだ。とてもV8とは思えず、フリクションの少ない直4×2といったフィールを持っている。また、軽く吹け上がる一方でトルクは分厚く、かつ特性はフラットで力感もある。1800rpmあたりからでも、加速性能には力強さが実感できる。
 もちろん、フル加速したときの加速は強烈だ。パワー・ウェイトレシオが、5.2ps/kg(アバント)という本格スポーツカー並みの数値から想像される通りの迫力を披露する。しかも、アウディ得意のクワトロ・システムによって、4つのタイヤにバランスよく駆動トルクが配分されるから、ドライの舗装路であればESPのランプが点灯するようなこともない。
 足回りはハードというより引き締まったという印象だが、面白いのは素性を感じさせない回頭性を示すこと。S4の場合、いかにも質量のあるV8をフロントのオーバーハングにぶら下げるようにレイアウトしている。当然、クルマはノーズヘビー傾向になり、実際フロント軸重は1100kgにもなる(車検証記載値)。だが、現実には不思議とノーズの重さを感じさせず、しっとりスムーズに曲がっていく。さすがに50対50の前後重量配分を持つクルマのような軽快さやバランス感こそないが、ちょっとしたテクニックを使えば(システムと運転の両方に)、軽いテールアウトの姿勢を維持したコーナリングも可能なのだ。そして、その動きは基本的にベースとなったA4の延長線上にあり、この点にも前述したフラッグシップ的性格が色濃く現れている。
 さて、元々スポーティなクルマ作りで定評のあったアルファだが、近年は絶対的なパフォーマンスより乗り手の感性に訴えるようなチューニングで存在感をアピールしてきた。しかし、最近では由緒あるGTAのネーミングを復活させ、より高性能なモデルの導入に積極的な姿勢を見せている。その第一弾である156GTAは、250psを発生する3.2リッターのV6を搭載。このエンジンがもたらす絶対的な速さによって、付加価値(プレミアム性)を高めている。そうした意味では、GTAもシリーズのフラッグシップ、あるいはイメージリーダー的性格が色濃い。
 もちろん、いまや250psというスペックに目新しさはない。だが、156に速さの刺激を加味するという意味では十分だ。これまでアルファは、エンジンが吹け上がる感触やメリハリ感……といった体感上の「○○感」を武器にクルマを作ってきたが、GTAには速さが伴ったことで、演出だけでは得られない迫力やドライビングの面白さを手に入れている。
 足回りも、バネとダンパーを締め上げたことが、アルファらしいスポーティなキャラクターを際立たせる魅力のひとつになっている。セダンとして考えれば、ゴツゴツと硬質な硬さを伝えるようになった点はマイナスなのだが、それをデメリットと感じさせないあたりは、このブランドならではの「役得」なのかもしれない。
 こうして見ると、S4と156GTAは似通った成り立ちであることがわかる。速さをプレミアムブランドにおける付加価値のひとつとして捉え、ハイパフォーマンスモデルを設定することでブランド力をさらに高めようとしている点はまったく同じだ。
 ただし、実際の手法と得られる印象は違う。まず、クルマの構成からして理詰めなS4だが、アウディはさらに技術力を印象づけるような「ハイテクノロジー感」(?)を与え、高性能ながら知的なイメージを演出している。それと比較すれば、アルファは直球勝負だ。250psのFF、という乱暴な作りだが、持ち前の演出力に速さという刺激を加えて走りの面白さに奥行きを与えている。そして、それは積極的にクルマを操りたい人にとっては抗し難い魅力となって迫ってくるのである。
 


Specification

■全長×全幅×全高=4585×1780×1435mm
■ホイールベース=2645mm
■車両重量=1800kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC 40V/4163cc
■最高出力=344ps(253kW)/7000rpm
■最大トルク=41.8kg-m(410Nm)/3500rpm
■トランスミッション=6AT
■サスペンション(F:R)=4リンク:トラペゾイタル
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ=235/40R18
■東京標準現金価格=8,211,000円(アウディ・ジャパン)


Specification

■全長×全幅×全高=4430×1765×1400mm
■ホイールベース=2595mm
■車両重量=1420kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC 24V/3179cc
■最高出力=250ps(184kW)/6200rpm
■最大トルク=30.6kg-m(300Nm)/4800rpm
■トランスミッション=6MT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:ストラット
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=225/45R17
■東京標準現金価格=5,712,000円(フィアット・オート・ジャパン)
 
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