先代5シリーズ・ツーリングも高いトータルバランスを誇っていたが、最大のライバルであるEクラスワゴンにユーティリティで一歩及ばずどうしても冷や水を浴びせられていた感があった。
だが、新型になった5シリーズ・ツーリングは違う。
キャラクターの差を補って余りある、走りの魅力に満ちているのだ。

リポート|竹平 誠|M.Takehira  フォト|高橋信宏|N.Takahashi


 第3世代となる5シリーズ・ツーリングが追加投入された。今回、日本仕様はこの525iのみのラインナップで、欧州で評判のディーゼルやV8エンジンは用意されない。とはいえ、この2.5リッターダブルVANOSは我が国の交通事情においてはまさにジャストな動力性能を見せることは周知の事実。
 上級ワゴンユーザーは一般的に、パワーやアジリティよりも機能的で洗練されたパッケージを好む傾向にある。525iツーリングのスマートさやハイテク機能は、ある意味この市場に向けたど真ん中のストライクだと言って良いかも知れない。BMWというと運動性能重視のクルマ造りというイメージが強いが、この525iツーリングの場合、確かにスポーティさをふんだんに与えられているものの、日々を快適に過ごせる機能性にこそ見るべきものがある。
 5シリーズサルーンと同様にフロントセクションをアルミ化したハイブリッド・モノコックは、BMWセオリーである均等な前後重量配分を実現しているばかりか、寸法的にゆとりを増した車体サイズでありながらも、先代より約50kgも軽量化されている。これは性能的なメリットを生むだけでなく、エコ・コンシャスな洗練という意味でもオーナーの自尊心を大いに満足させるものだ。
 新しい6速ATと定番の2.5リッターエンジンとの組み合わせもまた知的刺激に満ちている。伝説的エンジンのスムーズさは言うまでもないが、特に6速ATのシフトの巧みさには舌を巻く。ステップトロニックなので手動シフトも自在なのだが、渋滞から高速道路までそつない仕事ぶりを見せるDレンジのチューニングもツーリングの魅力にひと役買っている。
 乗り心地は、マイルドで長時間の高速移動に最適。スポーツワゴンにありがちな「フラットだが締まった乗り味」などと半ば言い訳めいた表現とは無縁の快適さは上級クラスならでは。リアにはセルフレベリング機能のついたエアサスが採用されている。これは積載時の荷重変化を吸収する役目のほか、サスレイアウトのフラット化に貢献していて、カーゴスペースも広々としてまったく使いやすい。
 動力性能は、0→100km/h加速8.2秒と猛々しくはないが必要十分。今回はフル積載を試していないが、箱根の急勾配をストレスを感じることなく駆け回れたのだから心配無用。むしろ、このくらいの動力性能こそ分別をわきまえた上品さと言って良いだろう。走行中のキャビンが静粛であることは、5シリーズサルーンと同様。遮音がよく、市街地や渋滞中もゆったりオーディオを楽しめる。


 どのクラスにおいても、機敏なハンドリングはBMWのセールスポイントであり525iツーリングもその例に漏れないが、このクルマではコーナリングを楽しむ手応えよりも、むしろ素直で扱いやすいキャラクターがより重視されている。この印象の背景には、アクティブ・ステアリングとソフトなサス設定がある。おもに車速に応じて擬似的にステアリングギア比を変えるアクティブ・ステアリングは、小さな舵角でワインディングを走れたり狭い市街地での取り回しを飛躍的に改善。反面その構造上、スポーツ派の期待するダイレクトな路面感覚を伝えるという機能では少々物足りない。また、ツーリングのリアサスは攻め込むと少し内後輪の足を伸ばし気味にも感じる。もちろん機敏に走れるのだが、BMWとしてはキレが甘いともいえる印象がある。
 そうはいっても、このアクティブ・ステアリングの楽ちんさは一度経験すると抗しがたい魅力。さらにこれはDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)とも連携していて、オーバーステアに対して自動的に修正舵を当てるなど、高度な安全性(同時にDSCの過大な介入を防ぐスポーツ性も)を実現するものでもある。
 ファーストカーとして、はたまたウィークエンドツアラーとして活躍するはずのクルマだから、アメニティにも目を向けてみたい。このクルマには、パノラマガラスサンルーフと呼ばれる後席あたりまで開く大きなガラスサンルーフが装着されていた。ワンタッチ操作で連動するシェード付きで気の利いた快適装備だ。快適といえば、オプションのベンチレーションシートはお勧めできる。フルパーフォレーションのレザーが使われているが、特筆すべきは座面や背面は言うに及ばず、ボルスターやサイドサポートからもエアが噴出する構造で、これは秀逸。日本の暑い夏には絶大な効果を発揮する。シートはサイドサポート幅の電動調整や4ウェイランバーサポート、さらには中折れリクライニングつきというスペック。歳とともに、乗り心地が気になるようになった筆者にも優しい良品だった。
 カーゴスペースは、荷室の床面積の広さが使いやすい。深さはないのでスーツケースを縦にとはいかないが、多くの場合床面積が使い勝手の要だからポイントは高い。リアゲートのガラスハッチと連動してフリップするトノカバー、EU安全規定のカーゴバリアネットも当然備える。リアシートは6対4分割。シートバックが倒れるのみだが、かなりフラットになる。
 BMWらしいスポーティ感はそのままに、快適な乗り心地とスマートな使い勝手、そしてなにより最先端のアクティブセーフティを備えたこの525iツーリング。ある意味5シリーズのベストバイともいって良い仕上がりで、日本市場での新境地を開拓する可能性もありそうだ。
 
  構造上ボディ剛性の面で不利となるステーションワゴンだが、5シリーズ・ツーリングにそれは当てはまらない。きわめてシュアなハンドリングは、セダンとまったく変わることがない。
  風紋をイメージしたというインパネはセダン同様。試乗車のトリムパネルはオプションのポプラウッドで、ノーマルはダークチタン。DVDナビ、iドライブは標準装備だ。
シートはファブリックが標準で、レザーはオプション。写真はナスカ・レザーと呼ばれるタイプ。ベンチレーション機構とセットで、252,000円。
  後席乗員の頭上空間までをカバーする、パノラマガラスサンルーフはオプション。車速感応式のウインドディフレクターを装備し、自動的に風の巻き込みを低減する。
  スタイリングの伸びやかさと躍動感はセダン譲り。先代はリアオーバーハングを30mm延長していたが、今回ボディサイズはセダンと同じ。全高のみ20mmのプラスとなる。
  サスはソフトなチューニングで、ゆったり流す限り快適そのもの。だが、その気になればアクティブ・ステアリングの刺激にもしっかり対応。ハンドリングにはそんな奥深さがある。
  おなじみのM54型ストレート6を搭載。2.5リッターの排気量から192ps/6000rpm、25.0kg-m/3500rpmを発生する。1730kgの車重にも音を上げることのない、パワフルなユニットだ。
  試乗車はオプションとなる245/45R17サイズのタイヤ&ホイールを装着。通常は225/50R17、ホイールはダブルスポークデザインとなる。リアサスは、セルフレベライザー付きのエアサスとなる。
通常500リッター、最大で1615リッターまで拡大するラゲッジルームを持つ。これは先代に比べて約100リッターの拡大となり(最大時)、購入予備軍にはうれしいニュースといえるだろう。トノカバーが連動して開くガラスハッチや、フロア下に設けられた収納スペースも便利。
 
BMW 525i TOURING
■全長/全幅/全高(mm)
4855/1845/1490
■ホイールベース(mm)
2890
■トレッド(前/後)(mm)
1560/1580
■車両重量(kg)
1730
■エンジン種類
25 6S/直6DOHC24V
■排気量(cc)
2493
■最高出力(ps(kW)/rpm)
192(141)/6000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
25.0(245)/3500
■トランスミッション
6AT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:
インテグラルアーム/エアSP
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤ(ホイール)
225/50R17(7.5J)
■東京標準現金価格
¥6,350,000
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※上記スペックは本誌発売当時の値です。
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