世の中行き詰まってくると、「昔は良かった」なんて言葉が聞こえてくる。
「ディスコ・クラシックス」なんてコンピアルバムを聞きまくったり、CSで'70年代のドラマにハマったり。
だが世の中まだ捨てたもんじゃない。
ベクトラはこんなに前向きに、逞しく進化しているのだ。

リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara  フォト|佐藤正勝|M.Sato
取材協力=ヤナセ TEL:0120-35-5587



 初めて欧州を旅したのは、'81年のことである。貧乏旅行だったので、バックパックを背負いながら1カ月近くかけて周遊した。なかでもドイツは憧れの地だった。とにかく、アウトバーンを走ってみたかった。だが、いまにして思うと、ドイツを旅して印象に残っているのはドアノブだった。しかも、安ホテルのドアノブだった。
 真鍮製のドアノブは渋く輝き、それをひねったときに一切のガタがなかった。日本では、高級ホテルのドアノブでもいまだに多少のガタはある。ところが、ドイツでは安ホテルのドアノブでも、そうしたいわば基本性能において妥協がない。まさにドイツと、しきりに感心したことを覚えている。
 そんな印象を、オペルに乗ったときにも感じた。オペルは、いかにもドイツらしい大衆車メーカーである。勤勉実直な人々が造り上げた、質実剛健なクルマという表現がふさわしかった。大衆車であっても、合理的なパッケージングといい、高いボディ剛性といい、基本性能には妥協がなかったのだ。その事実を、'93年モデルのベクトラGLSに乗って、いま改めて実感することができた。
 10数年ぶりに再会すると、ボディは驚くほどコンパクトである。全長は4430mm、全幅は1695mm、全高は1400mmとなり、これはあたかも日本の5ナンバーサイズに合わせて開発したようなものだ。それでいて、室内スペースが広いのである。男性としては大柄なリポーターでも運転席で狭さを感じず、そのまま後席に乗り込んでも頭上や足元スペースに余裕がある。さらに、荷物スペースは530リッターと現在のレベルで評価しても広大なものだ。そして空気抵抗係数0.29も、現代レベルで通用する空力性能だ。
 もちろん、ボディ剛性も高い。試乗車の走行距離は13万kmにも達していたが、荒れた路面でもキシミ音ひとつ発しない。サスペンションをしっかりと支えているので、ダンピング特性にはさすがに経年変化を感じたものの、ロールが安定してからの4輪の接地性の高さに不満はなかった。
 実は安全面でも妥協はなく、ABSを標準装備。ボディは前後だけではなく側面衝突にも対応し、シートベルトテンショナーを装備する。さらに、エアバッグシステムが加われば、安全面においても現在の平均レベルには達する。
 一方、最新モデルのベクトラGTSはどうか。基本性能に妥協がないことは、昔もいまもまったく変わらない。ボディはサイズこそかなり大柄になっているが、無駄なスペースはどこにもない。テールゲートを開けたときに現れる荷物スペースも広大だ。
 GTSはリアに大きな開口部を持つが、ボディ剛性は損なわれていない。荒れた路面でフロアからの振動を感じるといった、ありがちな問題とも無縁でいられる。それだけに、路面からの入力のほとんどを最終的にはボディが抑え込んでしまうので、最新モデルのベクトラは乗り味がスッキリしている。この点が、10年の歳月を経て獲得した価値である。
 実は、このスッキリ感がハンドリングからも確かめられる。そのため、ステアリング操作に対する応答性が正確なのは伝統的に受け継がれた価値だが、そこに結果として高精度感が加わっている。サスペンションのフリクションが徹底して抑えられている効果もあって、走りの質感は10年前よりも数段高くなっていた。
 また、エンジン特性から適度な刺激が得られるようになっている。それは、3.2が積むV6エンジンだけではなく、2.2が積む直4エンジンでも同様だ。こうして、ベクトラは妥協のない基本性能とともに様々な付加価値を備えた、現在のドイツ車らしい大衆車へと進化したのである。
 

<DTMを駆け抜ける シリーズきってのスプリンター>

<ドイツ車の基本性能の高さを 教えられた方も多いはず>
 
OPEL
 
VECTRA GTS
VECTRA GLS ('93)
■全長/全幅/全高(mm)
4610/1800/1465
4430/1695/1400
■ホイールベース(mm)
2700
2600
■車両重量(kg)
1510
1230
■エンジン種類
V6DOHC24V
直4SOHC 8V
■排気量(cc)
3174
1998
■最高出力(ps(kW)/rpm)
211(155)/6200
115(85)/5200
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
30.6(300)/4000
17.3(170)/2600
■トランスミッション
5AT
4AT
■サスペンション(F:R)
ストラット: 4リンク
ストラット:
トレーリングアーム
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
215/50R17
195/60VR14
■東京標準現金価格
¥4,305,000
¥3,460,000
(税別・当時)
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※上記スペックは本誌発売当時の値です。



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