
アグレッシブな変革を続けるBMWにあって、E60型となった現行5シリーズにも、その流れの中で様々な新機構が投入されている。
ならば、その根底に流れるドライビングダイナミクスに変化はあるのか。
先々代、E34型5シリーズとの比較において、その答えを探ってみる。
リポート|島下泰久|Y.Shimashita フォト|郡 大二郎|D.Kori
取材協力=土井英幸氏
 |

登場当初は、あまりの変貌ぶりに驚かされた現行5シリーズも、いまやすっかり目に馴染んだ。その一方でどうだろう、2世代前となるE34型は、もはやとても古臭く見えてしまうのが正直なところだ。ユーザーとしてはやり切れないところだろうが、それがモデルチェンジとしては大成功なのは明らか。ここに来て、街で見かける頻度が飛躍的に高まっていることは、それを如実に証明している。
そんな見た目以上に、現行5シリーズにおいてはドライビングダイナミクスの大幅な跳躍が、登場当初から常に話題とされてきた。では、果たしてそれは、E34の頃とはまったく異質なものへと変わってしまったのかといえば、僕の答えはこうなる。すなわち、それはイエスでありノーでもある、と。
E34の走りは、すべてにとてもナチュラルな感触が満ちている。試乗した535iが積む、いわゆるビッグブロックの直列6気筒ユニットは、シルキーというよりもむしろ野性的、悪くいえばラフな感触だが、その息吹きはとてもリニアで、回そうが流そうが実に心地よい。ステアリングは特にクイックではないが、切れば切った分だけ素直に、そして活き活きと回頭していく。
そこからもたらされる歓びは、イタリア車のようにドライバーを鼓舞するものとは違う。こちらの意思を正確に反映して、クルマがまるで手足の延長線上にあるかのように思いのままに操れ、そしてクルマの側からも常にリアルな反応が返ってくる。これこそが、その走りの真骨頂といっていいのではないかと思う。
一方、現行5シリーズはアクティブ・ステアリングやダイナミック・ドライブはもちろん、エンジンに関しても、さらには操作系に関しても、あらゆるところが電子制御の塊だ。では、それは自然な手応えを大切にした先代までの5シリーズとは、まったく違う世界を目指しているのか。確かに、最初はそんな印象を受けもする。だが、実は走り込むうちに、そうではないと気付かされ、そして目から鱗が落ちるハメになるのである。
アクティブ・ステアリングは鋭敏さを強調するものではなく、むしろ慣れれば思い通りの回頭感をもたらす。ダイナミック・ドライブは快適性を確保しながらロールの少ないタイトなフットワークを可能にするといった具合で、つまりこれらは奇をてらったものではなく、大きく重くなったボディに太いタイヤを履き、ブッシュの容量も格段に大きくなったE60を、かつてのE34のように思うままに動かすために作用しているのだ。
付け加えるなら、ドライバー・オリエンテッドをやめ、iDriveを採用したコクピットも、ドライバーを運転に集中させるという方向は一緒。その解釈が違うだけと取ることもできるはずである。
現代のクルマに求められる要素は、さらなる快適性、安全や環境への対策をはじめ、かつてとは比較にならないほど多い。それはドライバーズサルーンである5シリーズにとっても避けられないのだが、BMWには、そこで走りを犠牲にしてしまっては自らの存在意義が曖昧になるという危機感があるのだろう。そうした思いが、技術として結実したのが現行5シリーズ。採用されたすべての技術は、現代のサルーンとしての要件を満たしながら、これまで同様、走りの歓びを思う存分満喫できるようにと指向したものばかりと取れる。
つまり、解釈の方法は時代の変化や技術の進化によって変わっても、走ることの楽しさ、歓びこそを第一義とするという点では、新旧5シリーズには何の相違もないのである。だから、仮に一瞬、戸惑っても、走るにつれてきっと気付くのだ。そのDNAはしっかり継承されているのだということに。
|
|
|

 |
| <先進テクノロジーを注入して
走りのBMWを余すことなく表現> |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
| 彫刻刀でざっくりと刻んだようなダイナミックな造形で、一転してアグレッシブなイメージへと生まれ変わった現行E60型。もちろんその走りも、車速や走行状況に応じてギアレシオを変化させるアクティブ・ステアリングや、アルミとスチールを組み合わせたハイブリッド・ボディ構造、ロールを抑えるダイナミック・ドライブといった数々の先進テクノロジーにより、まさに革新と呼べるパフォーマンスを手に入れている。 |
 |
| <走りだけでなく
すべての項目で当時の最良を目指した> |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
| '88年に日本導入が開始されたE34型5シリーズ。丸目4灯ヘッドランプや、極端に短いフロントオーバーハングなど、当時のBMWデザイン・メソッドに忠実に則った、優雅なスポーティセダンとして人気を集めた。デビュー時は2.5リッター直6SOHCユニット(後にDOHC化)を搭載した525iと、3.5リッター直6SOHCユニットを搭載した535iがラインナップし、その後520i、V8搭載の530i/540iが追加された。撮影車は'91年式の535i。 |
 |
 |
 |
| |
BMW |
 |
| |
530i |
535i ('91) |
 |
| ■全長/全幅/全高(mm) |
4855/1845/1470 |
4720/1750/1415 |
 |
| ■ホイールベース(mm) |
2890 |
2765 |
 |
| ■車両重量(kg) |
1590 |
1630 |
 |
| ■エンジン種類 |
直6DOHC 24V |
直6SOHC 12V |
 |
| ■排気量(cc) |
2979 |
3430 |
 |
| ■最高出力(ps(kW)/rpm) |
231(170)/5900 |
211(159)/5700 |
 |
| ■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm) |
30.6(300)/3500 |
31.1(305)/4000 |
 |
| ■トランスミッション |
6AT |
4AT |
 |
| ■サスペンション(F:R) |
ストラット:
インテグラルアーム |
ストラット:
セミトレーリングアーム |
 |
| ■ブレーキ(F:R) |
Vディスク:Vディスク |
Vディスク:ディスク |
 |
| ■タイヤ(ホイール) |
225/50R17 |
225/60ZR15 |
 |
| ■東京標準現金価格 |
¥7,087,500 |
¥7,980,000
(税別・当時) |
 |
| |
問い合わせ先 |
― |
 |
| ※上記スペックは本誌発売当時の値です。 |
|