BMWはZ4のM仕様を市販しない、と発表した。
ファンは落胆したが、しかしアルピナはやってくれた。
つまりスペシャルなZ4を望むなら、このロードスターSが唯一にして絶対の選択肢となる。そしてそこにはアルピナらしい洗練と獰猛さが同居していた。

リポート|萩原秀輝|H.Hagihara  フォト|郡大二郎|D.Kori


 ロードスターという言葉には、車重の軽さを最大限に生かすライトウェイトスポーツ的な響きを感じる。その意味でZ4は、単なるロードスターではない。そもそも車重は1300kg台と軽くはなく、ルーフも軽量化のために取り払われているわけではない。Z4は、オープンボディであってもクローズドボディと変わらない剛性を確保しているのだ。
 それは何のために……。安全性や快適性など、現代のクルマとして不可欠な要素を満たすためもあるが、リポーターは走りこそZ4が追究した最終目標であると判断していた。Z4がステアリングを握るドライバーに与えてくれるのは、リアルスポーツの走りである。
 エンジンについては、3.0iともなると感動的にパワフルであるが、肉体的にも精神的にも覚醒の度合いを一気に高めてくれるような刺激までは得られなかった。リポーターは、このシャシーがあればMのエンジンでも使いこなせると考えていただけに、その誕生を期待していた。だが、BMWにMプロジェクトはないようだ。
 前置きが長くなったが、Z4においてMの役割を担ったのがアルピナであった。そのプロジェクトは、例によってBMWとの合意の基に進められた。そして誕生したのがロードスターSである。アルピナにとって、ロードスターの後にある“S”の称号も特別な意味を持つ。直列6気筒エンジンは、排気量を3346ccまで拡大し、ピストンはもちろんコンロッドやクランクシャフトまで専用のパーツを用いる。さらに、一基ずつ熟練のマイスターが組み上げた結果、最高出力310psを発揮する。ただし、最近のアルピナでは主流となっているATを選ぶことはできない。トランスミッションは、6速MTのみとなる。この点も、Sの称号の価値を高める。
 このエンジンは、低回転域のトルクも充実させている。それだけに扱いやすいなどと、ありきたりな評価はできない。超高性能エンジン搭載モデルにふさわしいアクセルやクラッチ操作を身に付けていれば何の問題もないが、スイッチを切り替えるような操作は受け入れてくれない。したがって、ロードスターSをスムーズに走らせることができれば、そのことだけでも人並み以上の操作ができるスキルを持つ証明となるだろう。
 あるいは、スキルが発展途上にある人なら、乗りこなす楽しみを得ることになる。スムーズに走らせることができたなら、後は積極的にアクセルを踏み込んでみる。高回転域でトルクをパワーに変換させながら、タコメーターの針は7000rpmオーバーに飛び込んでいく。その感覚は、爆発エネルギーの強さによって高回転域へと導くMのエンジンとも異なる。アルピナのエンジンは、超高精度なバランスが生み出す至高の吹け上がりを示すのだ。
 ちなみに、Z4はおそらくこのエンジンを積んでもバランスを損なわないだけの実力を備えているのだろう。実際、ロードスターSはサスペンションには大幅に手を加えていない。アルピナ専用となるのはフロントのコイルスプリングだけだ。あとは、標準仕様(スポーツサスペンション)の流用となる。それで19インチものタイヤ/ホイールを履きこなしているのだから、改めてZ4のリアルスポーツぶりに驚かされる。
 もちろん、タイヤだけでもハンドリングは進化する。ロードスターSは極めて正確なハンドリングを実現しながら、サスペンションが常に路面に対して追従し続けることによる優れたスタビリティも獲得している。乗り心地の面では、バネ下の重さによってタイヤがバタつくような感覚とも無縁だ。それだけに、アルピナらしい洗練された走りも十分に堪能できる。
 
  トランクリッドのエンブレムが、特別なZ4であることを物語る。リアルスポーツだが、足回りの動きはアルピナらしく洗練されており、大人のオープンとしての性格も。
  B3でも使用される直列6気筒3.4リッターユニットを搭載。6300rpmで310psの最高出力、4800rpmで36.9kg-mの最大トルクを発生させる。なお、組み合わされるトランスミッションは6MTのみとなる。
グリーンとブルーのステッチが施されたインテリアは、アルピナらしい仕上がり。ソフトな革巻きステアリング、レザー仕様のインスツルメントパネル、ホールド性に優れる電動スポーツレザーシートなどが、ノーマルとは違うエレガントなたたずまいを見せる。
ロードスターSにのみ装着されるフロントリップスポイラーが、安定したボトムラインを実現。リアにはインテグラル・スポイラーが装着され、精悍なエクステリアを演出する。
  ホイールは19インチ。あえてランフラットタイヤを採用せず、専用のミシュラン・パイロットスポーツを履く。サイズはフロント235/35R19、リア265/30R19。
 
ALPINA ROADSTER S
■全長/全幅/全高(mm)
4091/1781/1295
■ホイールベース(mm)
2495
■トレッド(前/後)(mm)
1473/1521
■車両重量(kg)
1320
■エンジン種類
直6DOHC 24V
■排気量(cc)
3346
■最高出力(ps(kW)/rpm)
310(228)/6300
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
36.9(362)/4800
■トランスミッション
6MT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:
セントラルアーム/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤ(ホイール)
F:235/35R19(8.5J) R:265/30R19(9.5J)
■東京標準現金価格
¥8,988,000
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