現状、日本ではVWのフラッグシップというポジションも受け持つトゥアレグだが、その絶対性能はプレミアムSUVの中でトップクラス、との評価が与えられている。
では、比較対象をさらに拡大するとどうなのか?
ここでは、ワゴン&クロカン4WDの代表格とトゥアレグが真っ向勝負。そんな「異種格闘技戦」の行方は果たして……。

リポート|竹平 誠|M.Takehira  フォト|宮門秀行|H.Miyakado


 プレミアムSUVセグメントでは後発のVWだが、トゥアレグは発売以来好調なセールスを記録しているという。その理由だが、このクルマが上質な高級車でありつつ、これ見よがしでない洗練されたルック&フィールを実現しているというVWの伝統に根ざした美点が挙げられる。「お高いクルマに乗っていますね」と見られるのでなく「良いクルマですね」といわしめるような印象で評価される風情は、どこかVWといえば「医者が選ぶクルマ」といわれた古き良き時代を思い起こさせる。
 プレミアムSUVは、オールマイティな日常の足を求める活動的なビジネスパーソンに支持されて今日の隆盛を見たわけだが、トゥアレグはまさにこのオールマイティであることにおいて群を抜く存在だ。とかく高級サルーンとSUVの折衷の産物と見られがちなプレミアムSUVだが、トゥアレグのように良くできたモデルでは、むしろ高級サルーンとSUVの機能を足し合わせた存在というべきだろう。快適な移動を保証する居住性と何不足ない優れた運動性能はいうまでもなく、雪が降ろうが嵐が来ようがどこ吹く風の機動力さえ併せ持つのだから。
 さて今回の比較車は、オールラウンドなビジネス・エクスプレスとしてお馴染みのE320ステーションワゴン(しかも4MATIC)と、SUVのタフネスの象徴ともいえる不朽の定番ディフェンダーを持ち出した。もっとも我が国ではディフェンダーがその実力を発揮する場面など限られるが、最近はお洒落なレトロカーとして人気だったりもするらしい。荒唐無稽な比較と思う向きもあるだろうが、トゥアレグは実際にこの2台が得意とするフィールドで争える実力を持っているのだ。
 まずは、高速を含むオンロードでの比較だ。絶対的な車高の差があるので、乗り心地の滑らかさや運動性能面でのE320ステーションワゴンの優位は動かない。しかしトゥアレグの視点の高さやボディサイズ、エンジンキャパシティの余裕からくる快適さから、評価はかなり接近したものだといえる。渋滞との遭遇を避けられぬ日本の道路事情を考慮するなら、移動の快適さという意味では互角。ここだとディフェンダーは比較にはならないのだが、わずか2.5リッターのターボディーゼルでありながら、「待てば」ちゃんと不満ない速度まで到達するのは見事な仕事ぶりといって良いだろう。
 ワインディングでも、E320とトゥアレグの評価は拮抗する。E320が低い姿勢でサルーンそのもののメリットを見せるのに対し、トゥアレグはワイドトレッドと見切りの良いドラポジで対抗。優等生E320はもちろん、トゥアレグも過去のリポート通りすこぶる扱いやすいのだ。
 W211型E320 4MATICはまだ新しいモデルなので、ここで少し紹介を加えたい。初代4MATICは'86年のW124でデビューし、40対60駆動力配分のメカニカルセンターデフとパーシャル2WDも可能にする油圧式クラッチバックというユニークなトランスアクスルを備えていた。現在のW211型E320 4MATICは、4WDシステムの機構的な部分こそ「より普通のフルタイム方式」となった。しかし、それはESPや4ETSなど電子デバイスによって、より高度な機能を実現できたことによるものだ。
 むしろ、W211型Eクラスの目玉は、センソトロニックを採用すること。4輪のブレーキに自在な「力加減」を加えるこの技術は「力を抜いたり入れたりする」ABSより、さらに高度なブレーキ・コントロールを実現している。ブレーキに関するEクラスの最新技術というとレーダー式自動車間調整とクルーズコントロールを統合したディストロニックもあるが、残念ながらW211の日本仕様には導入されていない。
 標準車と4MATICとの違いだが、4WD化のために細部が異なる。たとえばフロントサスは2WDの4リンクに対して、4MATICはダブルウイッシュボーン。ステアリングリンケージも、アクスル後方に位置する(2WDはアクスル前方)。この点、4WDのための最適化が徹底されている点は好ましいが、非常に優秀な2WDの操舵感とは幾分異なる印象もある。実際、見ためでは判りにくいが車体はホイール中心とボディ位置を比較した場合、2WDより10mmアップしていたりもする。


 話を戻して、今度はオフロードでのトゥアレグとディフェンダーの比較だ。にわかには信じがたいかもしれないが、トゥアレグは純然たるクロスカントリーカーであるディフェンダーに事実上遜色ない走破性を見せた。トゥアレグの車高調整機能や本格的ローレンジ、そして4Xモーションとトラクションコントロールという最新装備の組み合わせは、試乗したオフロードコース(ドライ・コンディション)のどのステージでもディフェンダーに後れをとることがなかった。むしろ圧倒的なパワーの余裕で、トゥアレグの方が楽に走れた印象すら残ったのだ。
 紛れもない高級車であるトゥアレグが急坂をよじ登り、モーグルを踏みしめて進む様にはちょっとした感動すら覚える。それも、クロカン4WDの伝統と歴史そのものといってよいディフェンダーと同じ場所を走破しているのだ。
 その意味で、トゥアレグがプレミアムSUVとしては例外的に高い走破性を持つことは間違いない。しかし、走破性の評価が僅差となった理由は、標準的なディフェンダーのサスペンションが、スタビライザーなどで本来のホイールストロークを発揮しきれていない影響による部分が大だ。
 もちろん、一般的なドライバーにとって難所をクリアするための最大の武器は路面と干渉しない車体形状であるのも事実で、その意味でディフェンダーの実用一点張りボディは圧倒的に優勢だ。また、ディフェンダーには多くのオフロード用のチューンニングパーツが市販されており、こうした装備を架装していけば飛躍的にオフロード性能は向上するので、今回の評価はあくまで「標準状態」での話だ。本当にオフロードを楽しむことが目的でクルマを選ぶなら、ディフェンダーのポテンシャルの高さは疑うべくもない。ただ標準状態のディフェンダー・オーナーは、うっかりトゥアレグを挑発すべきではないだろう。
 
<キング・オブ・インポートワゴン>
他を圧倒するステイタスと、優れた機能を誇るインポートワゴンの代名詞。日本仕様のバリエーションは豊富で、2.6リッターのV6を搭載するE240から5.5リッター+スーパーチャージャーを載せたE55AMGまで、5モデルがラインナップされる。現行のW211型では、ただラゲッジスペースが広いだけでなく日本車も真っ青のユーティリティも獲得した。唯一、気になる点を挙げるとすれば、構造上の問題で4MATICに右ハンドルが設定されないこと位か?
<クロカン4WDの「生ける歴史」>
メルセデスのGワーゲン、ジープ・ラングラーと並ぶクロカン4WDの雄。まさに「質実剛健」を絵に描いたような作りで、オフロード適性は依然トップレベル。アフターマーケットのデバイスを駆使すれば、それにさらなる磨きをかけることも可能だ。日本仕様の装備品は相応に充実しているが、作りは基本的に簡素。SUV的快適性は望めないが、ツールとしての機能性は極めて高い。
 
VOLKSWAGEN
TOUAREG V8
MERCEDES-BENZ E320 4MATIC
STATIONWAGON AVANTGARDE
LAND ROVER
DEFENDER 110
■全長/全幅/全高(mm)
4755/1930/1730
4850/1820/1505
4565/1785/2070
■ホイールベース(mm)
2855
2855
2795
■車両重量(kg)
2360
1890
2020
■エンジン種類
V8DOHC 40V
V6SOHC 18V
直5SOHC 10V
■排気量(cc)
4172
3199
2495
■最高出力(ps(kW)/rpm)
310(228)/6200
224(165)/5600
122(90)/4200
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
41.8(410)/3000〜4000
32.1(315)/3000〜4800
30.6(300)/1950
■トランスミッション
6AT
5AT
5MT
■サスペンション(F/R)
Wウイッシュボーン/Wウイッシュボーン
Wウイッシュボーン/マルチリンク
リジッド/リジッド
■ブレーキ(F/R)
Vディスク/Vディスク
Vディスク/Vディスク
Vディスク/ディスク
■タイヤ(ホイール)
255/55R18
225/55R16
7.50R16C
■東京標準現金価格
¥6,772,500
¥8,242,500
¥4,704,000
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