
ゴルフを追いかけるようにアストラもニューモデルへとシフトした。
ヨーロッパにおいては期待されたほどの売れ行きを示していないゴルフだが、その一方でアストラのスタートは非常に好調だという。
その秘密を、現地試乗会で明らかにする。
リポート|河口まなぶ|M.Kawaguchi フォト|日本ゼネラルモーターズ
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即座に上質で軽やかな乗り味を伝えてきたことをして、私はひとつの確信を得るに至った。Cセグメント全体が大幅にシフトし始めているのだ、と。いい換えるなら、ひとつ上のDセグメントに片足を踏み入れた状態にある。
コートが不可欠だったジュネーブを離れ、TシャツでもOKな南仏はトゥーロンに降り立った。空港でキーを受け取り、早速スタートする。そしてものの数分で、私は冒頭の印象を得たのだった。
いきなり好印象を与えてくれたのは、3代目となるオペル・アストラ。オペルの主力として、非常に重要な使命を持つ1台である。
空港から街中を抜け、生活道路であるワインディングを駆けていく。印象的なのは、抜群のしなやかさで、まさにクラスを超えるような落ち着きを感じさせる。決して良いとはいえない路面を確実にとらえ、見事な張りといなしで軽やかに疾っていくのだ。
最大のライバルであるVWゴルフは、昨年5代目へと進化を果たした。ボディを大型化し、リア・サスペンションにマルチリンクを採用するなど、見ためにおいても走りにおいても、自身が属するCセグメントから離脱しようとする意志が感じられた。
これに対してアストラもまた、ほぼ同じ方向性で進化を果たした。ボディサイズはひと回り大きくなり、全長やホイールベースはゴルフ以上の数値を実現、内外装も先代比で大幅なクオリティアップが図られるなど、ターンアラウンドの最中であるオペルの意志があらゆる部分で強く感じられたのだ。
しかし、たとえ同じ方向に進化してもオペルらしさは健在だ。内外装のクオリティアップの大きな要因といえるデザインでは、相変わらずのエバーグリーンを感じさせるゴルフとは違い、自らが前へ前へ行こうとする、アグレッシブなものをきちんと感じさせる。それ以上に「らしい」のは、特に走りにおいて、明らかにゴルフとは違う考え方があることを明確に伝えてくるところだろう。

冒頭の印象では、その走りがニュー・ゴルフと大差ないように思うかもしれない。しかし、実際は大きく異なる。ゴルフは全方向対応型のバランスに優れた走りを実現していたが、アストラの場合はゴルフと同等のバランス感を提供しつつも、そこにスポーツマインドを刺激する要素がしっかりと埋め込まれているのである。
室内に設けられた「スポーツ」というスイッチを押す。するとアストラは、それまでとは走りの印象が一変する。ステアリングはよりクイックなものとなり、サスペンションは減衰力を高めてロールやピッチを減らし、スロットル・レスポンスが高まり、2ペダルMTのイージートロニックやATではシフトポイントが変更される。
結果、上質で軽やかだった走りは、ダイレクト感に溢れシャープな印象を生み出すのだ。全体に締まった感じが増すことで、ドライバーはより積極的なドライビングを楽しむことができるのである。
これはすでにベクトラで採用された、CDC(可変ダンパーコントロール)機構付きのIDS-Plus(インタラクティブ・ドライビング・システム)サスペンションを、このクラスで初採用したことによるもの。最大で3輪まで同時にブレーキ制御を行なえる先進のESPであるESP-Plusや、その他各種センサーからの情報を制御ユニットに集め、常時相互通信している。だからこそ、スポーツ・スイッチひとつで走りの特性が変化する。
しかもIDS-Plusは何もスポーツ・ドライビングのためだけにあるのではない。たとえスポーツ・スイッチを押さずとも路面状況やドライビング・スタイルに応じて常に最適な制御を行なっているのだ。したがって常に高次元な乗り心地を実現しつつ、路面状況に左右されないロードホールディング性を生み出す。そしてこれが、冒頭での上質で軽やかな乗り味、につながっているのだ。
もともとのバランスに優れた走りに加え、常に制御をリニアに変化させていく。そして望めばスポーツ・ドライビングを、高い安心感を与えながら存分に楽しませてくれるのである。
ひと言でいってしまうならば、ゴルフよりもスポーツ・マインドを刺激する走り――、となるのだろうが、実はその特性は先進制御から生まれているもの。つまりゴルフと同等のバランスの良さを感じさせる領域から、ゴルフにはないスポーツ性を感じさせる領域までを幅広くカバーする独自の走りの世界が構築されているのだ。
ゴルフではリアサスにマルチリンクを奢ったことがトピックとなったが、アストラは従来同様トーション・ビームを使う。しかしこれは新開発のアイディアもので、ビームの構造やトーションバーの溶接角度などを数種類用意し組み合わせを変えることで実に様々なメリットを生み出している。その視点から見ても、上級サスをそのまま採用したゴルフに対し、アストラは従来通りだがポテンシャルを大幅に高めたサスを採用しつつ、さらに電子制御でプラスαの世界を広げたといえる。
今回試乗したモデルは、新開発となる1.6リッター直4(イージートロニック)、従来の進化版である1.8リッター直4(5MT)、新開発の2リッターターボ(6MT)の3台。実際に9月頃日本に導入される1.8リッター直4のATには、残念ながら試乗がかなわなかった。
この3タイプのエンジン、本音をいえばもう少し色気が欲しい気もしたが、2リッターターボは好印象だ。トルクの太さによる扱いやすさと、どこからでも鋭く加速できる特性は、まさに先進のシャシーを備えたアストラのパフォーマンスに相応しいものだった。嬉しいことに、この2リッターターボは日本への導入が検討されているという。
上級車種であるベクトラを思わせる上質で軽やかな走りと、スイッチひとつで豹変するスポーツ・マインドを刺激する走りを実現したアストラは、つまり走りをエンターテイメントとして提供している。これがゴルフと明確に違う、Cセグメントから離脱しようとするオペルの意志に思えた。
その効果は、実際の販売にも現れているようで、苦戦が伝えられるゴルフに対し、アストラは発表直後から5万台を受注したという。日本でも、同じような成果が得られることを期待したい。
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スタイリングは、先代よりも大幅にアグレッシブさを増した。特にシャープなラインを描くフロントマスクが印象的で、全体に塊感に溢れマッシブな造形。Cd値は0.32と空力にも優れる。 |
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試乗車のエンジンは新開発の1.6リッター直4と、日本導入予定の1.8リッター直4(125ps/17.4kg-m)。そして、2リッター直4ターボ(170ps/25.5kg-m)。トルクフルな2リッターターボは、嬉しいことに日本導入を検討中という。 |
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タイヤサイズは195/65R15、205/55R16、215/45R17(写真)がラインナップする。日本導入仕様は16、17インチ装着が有力か。 |
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ボディ剛性は先代比で52%向上、走りの絶対性能は大幅に進化している。 |
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フロント=ストラット、リア=トーションビームのサスペンションレイアウトは先代を踏襲するが、先進のシャシー制御システムであるIDS-Plusと電子制御式ダンピングコントロールによって、走りの性格を自在に変えることが可能。 |
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インテリアデザインにも力は注がれた。ボンネット上からセンターコンソールへ繋がるラインに関連性を持たせるなど、新たな造形にも挑戦している。 |
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| シートは、ドイツ車らしく重厚な座り心地を提供。オプション設定される座面占有認識システムは、未使用状態等、一定のケースでエアバック機能を停止する。 |
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| ボディのサイズアップにともない、ラゲッジスペースも大幅に拡大している。コンパクトなリアサスの恩恵もあり、トランク容量はクラス最大級の380リッター(VDA法)。 |
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先代よりもひと回り大きくなったボディは、ニューゴルフとほぼ同じサイズとなる。これにより、室内のヘッドクリアランスやレッグスペースも拡大した。 |
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OPEL ASTRA 1.8 |
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| ■全長/全幅/全高(mm) |
4249/1794/1460 |
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| ■ホイールベース(mm) |
2614 |
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| ■トレッド(前/後)(mm) |
1488/1488 |
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| ■車両重量(kg) |
1278 |
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| ■エンジン種類 |
直4DOHC 16V |
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| ■排気量(cc) |
1796 |
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| ■最高出力(ps(kW)/rpm) |
125(92)/5600 |
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| ■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm) |
17.4(170)/3800 |
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| ■トランスミッション |
5MT |
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| ■サスペンション(F:R) |
ストラット/コイル:
トーションビーム/コイル |
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| ■ブレーキ(F:R) |
Vディスク:ディスク |
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| ■タイヤ(ホイール) |
205/55R16 |
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| ■東京標準現金価格 |
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| ※上記スペックは本誌発売当時の値です。 |
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