爆発的にヒットするカテゴリーではないものの、いつの時代もクルマ好きの心を惹きつけてやまないスポーツクーペ。
スタイリッシュながらも芯の通った内容を持ち、なおかつ走りも楽める――
これまではTTクーペの独壇場だったカテゴリーだが、昨年末、そこに米独合作のクロスファイアという強敵が出現した。
4座と2座の違いこそあれ、実に悩ましい選択である。

リポート|島下泰久|Y.Shimashita  フォト|郡大二郎|D.Kori


 大人のためのクーペ、それもアンダーステイトメントであるより、主張とこだわりを押し出したデザインコンシャスなモデルを選びたい。そうなると、これまでは正直、アウディTTクーペの独壇場だったように思う。ところが昨年、ここに有力なコンテンダーが現れた。クライスラー・クロスファイアがそれである。似たようなサイズと価格、そしてどちらも飛び切りの洒落ものとなれば、火花散るのは必至のこの2台、さて実力のほどはどんなものだろうか。
 ルックスは、いずれも相当に個性的だが、方法論は正反対といっていい。クロスファイアは全体に、これでもかとデザインされている。アグレッシブなフロントマスク、車名の由来となったボディサイドのプレスライン、ボートテールと呼ばれるリアエンド等々、全身が見せ場のオンパレードである。一方、TTクーペは、逆にディテールは極力シンプルに徹して、フォルムと面で見せるスタイリングだ。
 まさにそれぞれのお国柄がストレートに出ている印象だが、少なくともTTクーペが登場からだいぶ経つにも関わらず、今も鮮度をキープしているのは確かである。クロスファイアはこってりしているだけに、その辺りがちょっと心配といえるかもしれない。
 室内はもっと大きく違う。特に質感については、クロスファイアにハッキリ言って物足りなさを覚えるが、それ以上に、ほぼ同じ全長でありながらクロスファイアは2人乗り、TTクーペは4人乗りという決定的な差がそこにはある。3名以上で乗る機会はそうないだろうが、不意の機会を考えても、あるいは荷物置き場としても、やはり後席はあるに越したことはない。また、この後席おかげで、TTクーペは小さな子供がいる夫婦の選択肢にも入ってくることになるだろう。僕と同じ30歳代の人にとっては特に、これは無視できない要素のはずだ。
 走りのキャラクターもまったく異なる。クロスファイアは、ステアリングフィールもハンドリングもエンジンの鼓動も、リアルスポーツと呼べるほど刺激的ではないが、それでも飛ばせばそれなりに速い。こんな味付けは、メルセデスのコンポーネンツを多用していると聞けば納得か。乗り味はリアの突き上げが気にはなるが、19インチを履くにしてはうまく抑えているともいえる。アナタがそのルックスに惚れ込んでいるなら、きっと許容できるに違いない。
 対するTTクーペの走りは、成り立ち云々という議論を置いておけば、まさにスポーツカーのそれである。エンジンはレスポンスが鋭くパワフルで、自慢のDSGを駆使すれば、それを効果的に唄わせることができる。そして何よりコーナリングが抜群に速いのだ。
 その代わり、乗り心地は大人のクーペとしての許容範囲を超えているといわざるを得ない。しかもガンガン突き上げるわりにピッチングの収まりは良くなく、速度を上げようが、どうにも落ち着かないのだ。硬ければスポーティと考えているのなら、底が浅過ぎる。
 こうして見ると、ポジショニングや価格は近くとも、方向性は結構異なっているこの2台。TTクーペは街中で見かける頻度も多いから、希少性で選ぶならクロスファイアだが、ルックス以外に情感に訴える部分が少ないことが引っ掛かる。その点、TTクーペは、走りもスペックもこだわり満載だし沢山の最新技術も目を引く。
 そんなわけで、軍配はTTクーペに上げたいと思う。逆にそこまでの走りは求めず、後席も要らないというならクロスファイアという選択も大いにアリだ。ただし、それでも、内装のクオリティはもう少し高めて欲しいところか。
 
 
AUDI TT COUPE
3.2 QUATTRO S-Line
CHRYSLER
CROSSFIRE
■全長/全幅/全高(mm)
4060/1765/1340
4060/1765/1305
■ホイールベース(mm)
2430
2400
■車両重量(kg)
1550
1400
■エンジン種類
V6DOHC24V
V6SOHC18V
■排気量(cc)
3188
3199
■最高出力(ps(kW)/rpm)
250(184)/6300
218(160)/5700
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
32.6(320)/2800-3200
31.6(310)/3000-4600
■トランスミッション
6DSG
5AT
■サスペンション(F:R)
ストラット:ダブルウイッシュボーン
ダブルウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ
225/40R18(7.5J)
F:225/40ZR18(7.5J)
R:255/35ZR19(9J)
■東京標準現金価格
¥5,617,500
¥5,145,000
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税込み価格です。



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