
いま、スポーツカーメーカーの中で、最も勢いを感じさせるのがアストン・マーティンだ。
昨年、ゲイドンに本拠を移し、心機一転した彼らの'04年販売目標は2500台。
その内の300台がV12ヴァンキッシュで、残りの2200台をこのDB9が受け持つのだという。
そんな彼らの思惑にも、試乗を終えたいまなら素直に頷くことができる。それほど……!
リポート|吉田 聡|S.Yoshida(本誌) フォト|柏田芳敬|Y.Kashiwada
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ホテルのエントランスに滑り込んできたのは、こうして陽の光に晒されているとブラックかと錯覚してしまうほどの深いブルー、いわゆるミッドナイトブルーに身を包んだDB9だった。それにしてもどうだ、この思わず息を飲んでしまうほど美しいプロポーションは。昨秋、フランクフルト・ショーのアストン・マーティン・スタンドでその姿を目にした時は、どちらかといえばヴァンキッシュに近似したデザインに疑問さえ抱いたものだったが、実際に陽光の下であらためて見ると、両車から受ける印象は明確に異なる。
いわば、ダイナミックとエレガンス。イアン・カラムが、ヴァンキッシュにボリューム感溢れる造形で男性的な力強さを与えているのに対し、彼の後任として新たにアストンのデザイン・ディレクターに就いたヘンリック・フィスカーは、先代のDB7同様に繊細かつ優美なラインを基調に、現代のスポーツカーとしてはむしろアンダーステイトメント志向の2+2ボディを創出。もちろん、スポーティかつスタイリッシュではあるのだが、どこかロマンチックな香りを伝えてくるあたりは、全身で高性能を剥き出しにするヴァンキッシュとは一線を画する。
まずは、ざっとその成り立ちを紹介しておこう。ボディサイズは全長が4710mm、全幅が1875mm、全高が1318mmで、ホイールベースは2740mm。ちなみに、このスリーサイズは、ヴァンキッシュに対し全高は同寸ながら、45mm長く、48mm狭い設定となる。また、ボディパネルは、ドアとフロントフェンダーがコンポジットになる以外、ほぼ洩れなくアルミが用いられ、さらにインナードアパネルやステアリングコラムはマグネシウム合金とするなど、徹底した軽量化が図られている。
技術的なハイライトは、アルミスペースフレームを、ロータス・エリーゼ同様に接着材で結合した、新開発のVH(Vertical-Horizontal=水平垂直)プラットフォームで、軽量高剛性に加えて大幅な耐久性を実現。しかも、この工法は大がかりな生産設備が不要なため、アストンのような少量生産メーカーにとってはコスト低減という嬉しい副産物まで付いてくる。いうまでもないが、このVHプラットフォームは'05年に登場する“ベイビー・アストン”、AMV8にも若干の変更の後に流用される。
サスペンションは、こちらも新開発となるオールアルミ製の4輪ダブルウイッシュボーンで、タイヤはフロントが235/40ZR19、リアが275/35ZR19のBSポテンザRE050A。ブレーキは、フロントが355mm、リアが330mm径のドリルドではなくグルーブ付き4輪ベンチレーテッド・ディスクに、ブレンボ製対向4ピストン・モノブロックキャリパーが組み合わされる。なお、シャシーコントロールとしては、現代のスポーツカーらしくABSやDSCに加え、電子制御制動力配分システムのEBDやブレーキアシストのEBAまでが完備する。
そして、エンジン。基本的にはDB7からのキャリーオーバーとなる、フォード製“デュラテック”V6を2基組み合わせたV12ユニットがベースで、ヴァンキッシュでアップデートされたテクノロジーの応用や、コスワース社による専用チューンが施された結果、5935ccの排気量から最高出力450ps/6000rpm、最大トルク58.1kg-m/5000rpmを発生させる。ちなみに、この数値は、ヴァンキッシュのそれに対してパワーで10ps劣るものの、逆にトルクは2.8kg-m嵩上げされており、さらに最大トルクの80%がわずか1500rpmで発生することからもお分かりのように、まさに全域で力が漲る。
これに組み合わされるトランスミッションは、“タッチトロニック2”とネーミングされるZF製の6速ATで、シフト操作はステアリングコラムに固定配置される左右のパドルとセンターパネル上部に並ぶスイッチで行なう。つまり、センターコンソールにセレクターレバーの類は存在しない。なお、年内中には6速MT仕様も追加設定される見込みだ。ヴァンキッシュに採用されるシーケンシャル式6速セミATのSSM(セレクト・シフト・マニュアル)の搭載が見送られたのを聞いた時は、やや裏切られたような気にはなったものの、走り始めた途端、そんな思いは瞬く間に消え去ったことは後述することにしよう。
ところで、これらパワートレインは前後重量バランスにも徹底的に配慮されており、V12ユニットはほとんどバルクヘッドにメリ込まんばかりのフロントミッドシップに搭載。さらにギアボックスをリアアクスルに配するトランスアクスル・レイアウトが採られたことで、1800kgの車両重量を前後50対50に振り分ける理想的な重量バランスを実現している。ちなみに、エンジンとギアボックスを繋ぐ鍛造アルミ製トルクチューブ内のドライブシャフトはカーボンファイバー製で、レスポンスの向上やノイズ・振動の大幅低減に寄与するという。 |
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| アルミスペースフレームを接着材で結合したVHプラットフォーム上に、大部分をアルミで占める2+2ボディを構築。チーフデザイナーはジャガーへと移籍したイアン・カラムの後任、ヘンリック・フィスカー。安全性も考慮され、衝突実験は同グループのボルボ・セーフティ・センターで行なわれたという。 |
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フォード製“デュラテック”V6を2基つなぎ合わせ、排気量を5935ccとしたオールアルミ製のV12ユニット。450psと58.1kg-mを発生し、0→100km/h加速を5.1秒、最高速300km/hというパフォーマンスをもたらす。 |
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| シートは前後ともたっぷりとした肉厚で、かなり張りを持たせた仕立て。ただし、2+2とはいえ、後席足元のスペースはないに等しいから、荷物スペースと割り切りたいところ。 |
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トランクスペースは、スポーツカーとして考えれば十分納得できるサイズ。二泊三日程度の、二人ぶんの旅行バッグなら難なく収めることができるはず。 |
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10スポークの19インチアルミに組み合わされるタイヤは、フロントが235/40ZR、リアが275/35ZRのBSポテンザRE050A。ブレーキシステムはブレンボ製が標準装着。 |
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