直噴ユニット+6ATなど、得意のハイテクで数々の新機軸を打ち出し、「さらなる熟成を極めた」、「冒険はないが走りの進化は素晴らしい」、などなど様々な賛辞が寄せられているA3。
一方、斬新なデザインとバランスの良い走りが評価されるメガーヌ。
異なる個性を比較することで、A3の価値をより明確にしてみる。

リポート|島下泰久|Y.Shimashita  フォト|宮門秀行|H.Miyakado


 新型A3といえば、つい3.2クワトロに採用されたDSGの話題となりがちだが、素の2.0の出来も、実は相当なものだ。スタイリングをはじめとするキャラクターは先代を踏襲していて新鮮ではないが、いざ走らせれば、その進化を強く実感することになる。
 それとは逆に、思いきった変身ぶりが注目を集めているのが、ルノー・メガーヌだ。その前衛的な姿は、最初はギョッとさせられるが、見慣れるほどに魅了されてしまう強烈な個性を放っている。
 しかし、その見た目とは裏腹に、実は中身はA3の方が、はるかに先進的である。技術の進んだブランドというイメージを保つため、それは欠かせない要素であるわけだが、それにしても採用された新機軸は、電動パワーステアリング、直噴エンジン+6速AT、リアマルチリンクサスペンション等々、挙げていくとキリがない。
 特筆すべきは、それらが確実に、A3の走りの世界を新たな地平へと引き上げる要素になっているということである。新しいリアサスペンションの、無類の安心感をひしひしと伝える超ハイレベルのスタビリティと、それに応じて高められたステアリングの効きがもたらす抜群の運動性能は、従来このクラスで体験したことのない領域に達している。また、トルク感こそ希薄だが、実際には全域フラットな特性で、回り方もとても滑らかなFSIエンジンと、機を見るに敏な6速ATのマッチングも絶妙である。
 そんなA3に較べれば、メガーヌのメカニズムはコンベンショナルなものだが、まとまりの良さでは、そうヒケは取っていない。
 こちらも印象的なのは、スタビリティの高さだ。といっても、その演出の仕方は180度異なっていて、メガーヌの場合、それはフランス車らしくたっぷりとしたサスペンションストロークの賜物である。A3のように、まっすぐ走っている時でさえ、リアの落ち着きの良さを実感するとまでは至らないが、こちらも枯れ葉舞う雨中の峠道を攻め込んだとしても、容易に路面を離すことはない。やはり電動のパワーステアリングも、反応はA3ほど鮮烈ではないが極めて正確。また、日本からのオーダーで制御に手が入れられたという4速ATが、例の積極的な変速ぶりはそのままに、シフトショックを格段に減じているのも嬉しい。
 さらにメガーヌには、乗り心地という明らかな優位点がある。A3は、特に低速域で上下に煽られる。速度を上げれば収まるとはいえ、これは現在のA3の走りの、唯一最大の不満といえるだろう。
 こうして比較して思うのは、その斬新なデザイン然り、新しさはないがこなれた心地よい走りっぷり然り、メガーヌはいわゆるプレミアム市場から距離を置いているからこそ出来ることを確信犯的に実行して、それが実にうまくいっているということだ。
 一方のA3のクルマ作りは、築き上げたブランドの価値を、より深化させるという局面に入ったと感じる。よってコンセプトに冒険はないが、それでいて、いや、だからこそ、走りの面で大きな進化が見られたことには感嘆させられた。メガーヌの良さは、想像できる中で最良のものだ。それに対してA3の良さは、事前に想像できたものを、大きく凌駕していた。つまりはそういうことである。
 この2台、コンセプトの明快さと、その達成ぶりについては、甲乙つけ難い。しかし、キープコンセプトであることが求められ、されどブランド価値をより高めるべく革新的でもあれという難しい命題に見事応えたA3には、逆説的だが、それができるからこそ彼らは、プレミアムという看板を背負うことができるのだなと、今回改めて感心させられたのだった。
 

  フロントがストラット、リアがマルチリンクとなるサスペンションがもたらすスタビリティの高さは、もはやこのクラスのスタンダードから一歩抜き出たレベルに達している。
  2リッター直噴ユニットはトルク感こそやや希薄ながら、実際にはフラットな特性と出来の良い6ATとの組み合わせで軽快な走りをもたらす。150ps/20.4kg-mを発揮。
  アウディらしい、先進的でスッキリしたデザインのインパネは、クオリティの高さも特筆モノ。まさにプレミアムコンパクトの名にふさわしい仕上がりを見せる。
  適度な硬さを持つシートは、ドイツ車らしい重厚な座り心地で、長距離走行も難なくこなす。また、後席の居住空間も十分に確保。レザーシートはオプションとなる。


大胆なエクステリアデザインが何かと注目されるメガーヌだが、オーソドックスなメカニズムながら、非常にバランスのとれた走りの良さも見逃せない。2リッター直4DOHCエンジンのパワー&トルクは133ps/19.5kg-m。インパネは、フランス車らしくプラスチックの使い方が巧みで、合理的なデザインながら遊び心も忘れていない。また、身体を包み込むような座り心地を提供するシートも絶品。2,530,000円(ルノー・ジャポン
SPECIFICATION
Audi A3
■全長/全幅/全高(mm)
4215×1765×1430
■ホイールベース(mm)
2575
■車両重量(kg)
1390
■エンジン種類/排気量
直4DOHC16V/1984cc
■最高出力(ps(kW)/rpm)
150(110)/6000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
20.4(200)/3500
■トランスミッション
6AT
■サスペンション(F:R)
ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ
205/55R16
■東京標準現金価格
2,995,000円
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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