メルセデス vs BMW vs アウディ。その対決を締めくくるのは、2シーター・ロードスターたちだ。
しかも、あえてベーシックなモデルを選んだことには理由がある。
もはやクルマの“味”などコンピュータでどうにでもなる現在において、もっともピュアなエンジニアの走りへの情熱が、そこに込められているだろうと考えたからだ。
リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|郡大二郎|D.KORI
ドイツと聞けば、誰もが連想するのがメカニズム。技術への傾倒ぶりときたら圧倒的に世界一だ。とりあえず代表的な3ブランドを並べてみても、たとえばアウディならクワトロにDSG、メルセデスなら地味を承知のシングルカム3バルブによる排気対策や複雑なマルチリンク・サスペンション(それも凝ったエアサスだ)、あるいは最新の7速ATも加えようか。そしてBMWでは、根っからのエンジン屋らしくバルブトロニックに、大胆なアクティブステアリングが光る。
では、そんな特色をすべて除外してみたら、社風も希薄になってしまうのだろうか。そこで、あえてそれらをすべて装備しない平凡(?)な内容の代表選手、それも傍流に属する遊びグルマを集めて、あらためて比較検証してみた。
結論。やはり、それぞれ違う。具体的にどこがというわけではなくても、眺めてみて乗ってみて、肌身に迫る風合いに明確な差がある。そのくせ目指す境地が共通というのも興味深いところだ。
まずメルセデスSLK230。'96年のデビューから7年が経過し、次期モデルの噂も流れ始めただけに新鮮味は乏しい。逆にいえば、それだけ煮詰まって完成度が高いのは事実で、同じSLKでも初期型とこの後期型と、比べてみれば互いに別のクルマかと思えるほど違う。最後の最後まで執拗に改善を続けるあたり、やはりメルセデスの頑固さは本物だ。
具体的に指摘すると、まず全体の剛性感が増した。初期には自慢のバリオルーフを閉じてハードに攻めると、かすかにギシギシ鳴ることもあった。それが今では本当に本当のクーペとして通用する水準に達している。そもそも、幌よりかなり重くなるのを覚悟でこんなルーフを開発したこと自体、メルセデスがオープン2シーターといえども全方位の耐候性や居住性に関して妥協しなかった証拠だ。スポーツカーでもワゴンでも、それぞれである前にまずメルセデスでなければならないという原則が、ここでも貫かれている。何から何までガッシリした操作感といい、ここでは「実直」をメルセデスのキーワードと決めよう。
それとあまりに対照的なのがアウディだ。特にこのTTロードスターには、ともすれば堅苦しくなりがちなドイツ風味より、むしろラテン系の艶と饒舌が込められている。それもそのはず、BMWだけでなくアウディもバイエルン文化の薫陶を受けているのだから、間違ってもシュツットガルトと同じわけがない。
そんなアウディは、とにもかくにも技術面の先進性でメルセデスやBMWをリードするのだけが生き甲斐みたいに見えるが、その一方では非常にクラシックな一面も併せ持つのがおもしろい。それは特にデザインにおいて鮮やかだ。というと、プレーンな面に鋭いラインを組み合わせたアウディのどこが古典的なのか訝しく思うだろうが、見たまえ、このTTの造形を。まず細部より全体の基本形に注意が向くところに造形力の強さがあるが、このフォルム、戦前のドイツ流線型そのものではないか。空気の流れを見抜く眼力が、ベルント・ローゼマイヤー全盛期のアウトウニオン以来、少しも変わっていないのかもしれない。特に走り去るTTクーペの後ろ姿など、懐しいモノクロ映画を見るような気さえする。
そしてこのロードスターも、幌を閉じるとよくわかる。斜め後ろがほとんど見えないのだ。このようにほっこり暖かくくるまれた感触は、現代最先端のものではない。
それでいながら、技術の成果もきわめて高度なのがアウディ。今回ここに登場したのはただのFF仕様なのに、実は自慢のクワトロよりコーナリングの姿勢が良かったりする。その肝は軽さで、たとえオーバースピード気味にコーナーに突っ込んでも、外側前輪に荷重の大半がのしかかる感じが少ない。それに加え敏感に自動シフトをくり返す6速AT、ことごとく軽い操作類など、いかにも緻密に作り込まれた印象が迫る。スペックにこだわり理屈に埋没したいマニアに、これほど適したブランドはない。おそらく設計者も夢見る小僧ばかりなのだろう。だから七色にたなびく技術の雲海を遊泳するアウディには、「夢」のキーワードを贈ろう。
'96年に登場、'00年にマイナーチェンジしたSLK。現在、エンジンは2.3リッタースーパーチャージャーと3.2リッターV6、そして3.2リッタースーパーチャージャーがある。SLK最大の売りはなんといってもバリオルーフ。メタルトップは約25秒で開閉、完全にオープンとクーペを両立する。この6年で同種のクルマも発表されたが、まだ剛性感やキシミ音の点でSLKと比肩するクルマはない。乗り心地の良さも美点。
デビューは2002年と、3台の中では最も設計年次の新しいZ4。その新世代BMWデザインは、カースタイリング論に一石を投じるなど、話題性も高い。エンジンはいずれも直6で、2.2リッター、2.5リッター、3リッターをラインナップ。動力性能は、2.2リッターでもまったく不満のないレベルを確保する。ソフトトップは手動式。剛性感あふれる3シリーズの走りとはまったく異なり、ハンドリングにも乗り心地にも、どこか繊細な感覚がともなうのは演出の妙といえるだろう。
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