合理主義者といわれるフランス人。
クルマ作りにもそれは貫かれるが、では、アヴァンタイムのような存在はどう解釈すべきなのか?
合理的精神からはかけ離れた存在に見えるアヴァンタイムだが、実は、そこにこそフランス流のモノ作りの精神が見え隠れするという――。


リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara フォト|郡大二郎|D.Kori

 もう圧倒されっぱなしである。フランス人というのは、合理性を重んじるのだと思っていた。あえて悪口をいえばケチなのだが、アヴァンタイムを前にすると「間違いでした」と頭を下げたくなる。これだけ見るからに味わい深そうだと、いつものリポーターならメモなど取らずに第一印象を大切にしつつ原稿を埋めてしまう。
 だが、アヴァンタイムはそうはいかない。印象が二転三転するのだ。リポーターのメモの一行目には「無駄の多いクルマ」と書いてある。それでいて、メモの中段には「この室内スペースはスゴイ」となるのだから、かなり混乱している。”ヌーベルなんとか”といわれて供された料理を前に、その見かけに内容が知れず味も分からず、食べてみたらなるほどと納得する――といった体験と似ている。
 フランス人は、ケチどころかゼイタクなのだろう。それでいて、合理性も忘れていない。これだけ奇抜なデザインでありながら、ボディ全長4660mmという制約の中で大人4名がゆったりとくつろげる室内スペースを確保し、広大な荷物スペースさえも備えるのだ。シートの造りは、プレステージサルーンのヴェルサティスを思わせる豪華さであり、身体全体を包み込むようなフィット感を得ている。
 異様に大きなドアも、身体を窮屈に屈めずに後席に乗り降りするための機能を備える。しかも、ヒンジは斜め前に平行移動するのでドアを大きく開けずに済むという気配りまでしている。駐車スペースが狭い日本でも、これならば持て余すことがない。ボディ全幅も1835mmに達するが、タイヤがよく切れるのでサイズの割には小回りが効く。ボンネットはまったく見えないが、ボディ前端はウインドーの下端の1m先と判断すれば、コンパクトカーの車両感覚の掴みやすさと大差がなくなる。つまり、アヴァンタイムは想像を超えて実用的なクルマなのである。
 ただし、センターピラーがなく、またルーフは盛大に開くのでボディはかなり緩めだ。235/50R17のタイヤも、ドタドタとバネ下の重さを抑えきれないような動き方をする。それでいて、不快な振動や突き上げを感じることがなく、メモの最後には「意外と快適」とまで書いてあるのだ。
 アヴァンタイムの不思議体験と比べると、メルセデス・ベンツCLKは拍子抜けするほど平和なクルマだ。ドイツ車の中では味わいが深いというよりも濃いはずなのに、乗った瞬間には「何てサッパリしたクルマなのだろう」と思ってしまった。だが、何の気遣いもなしに馴染んでしまうあたりはメルセデスらしい。味はわかっていて、食べてみて「その通り」と納得しても、決して「もういいや」という気にはならないのだ。
 このスタイルだから、当然アヴァンタイムよりも室内スペースは狭い。だが、窮屈ではない。前席は適度なタイト感があり、それがスポーティさにも結びつく。そのスポーティさも、あくまでも表面的な刺激であり、走りに徹したクルマとは別の位置づけとなる。3.2リッターのV6エンジンは、シューッとスムーズに吹け上がり、トルクは全域でフラット。したがって、パワーは回転数の上昇に合わせてリニアに立ち上がっていく。
 むしろ、アヴァンタイムが積む3リッターV6エンジンの方が底力があるように思える。アクセルに足を乗せる程度では走りは重々しいが、床まで踏めばトルクがドッと沸き起こり、その勢いに任せて高回転域まで一気に吹け上がるのだ。
 いささか荒っぽさもあるが、そういえばフランス料理では野禽の類も盛んに供されるなぁ。
 

 
RENAULT AVANTIME
MERCEDES-BENZ CLK320
■全長/全幅/全高(mm)
4660/1835/1630
4640/1740/1415
■ホイールベース(mm)
2700
2715
■車両重量(kg)
1790
1590
■エンジン種類
V6DOHC24V
V6SOHC18V
■排気量(cc)
2946
3199
■最高出力(ps(kW)/rpm)
207(152)/6000
218(160)/5700
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
28.5(280)/3750
31.6(310)/3000〜4600
■トランスミッション
5AT
5速AT
■サスペンション(F:R)
ストラット:トレーリングアーム
ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
235/50R17
F:225/45R17 R:245/40R17
■東京標準現金価格
\5,000,000
\7,200,000
 
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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