全体を貫くテイストは、アウディそのもの。
しかし、繊細で女性的テイストだった先代と比較すれば、新しいA3はダイナミックで骨太なキャラクターへと変貌を遂げた。
よりスペシャルティにしてスポーティ――。
端的にいえばこんな表現になる。では、走りの方はどうなのか?
早速、上陸したばかりの2.0FSIスポーツを路上に連れ出してみよう。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|松本高好|T.Matsumoto

 豹変は君子の特技。だからアウディA3も豹変した。その結果、おそろしく強くなった。出力や速さではなく、無遠慮なまでに自己主張するようになって存在感が濃くなったのだ。これは目立つ。
 これまでアウディ、特にA3は、どこか繊細で遠慮がちに見えた。それが家風であり、VWとの違いでもあり、そのぶん上質と思われたのも事実だった。ところが、今度は違いの方向性が根本的に変わった。あくまで普遍性を旨とするVWに対し、スペシャルでありスポーティであるという性格を、くっきり明確に主張するようになったのだ。それは特にデザインにおいて顕著だ。
 もちろんグループ全体の戦略に沿って、中身はVWのメガヒット作ゴルフと姉妹の関係にある。これまでのA3がゴルフIVとほぼ共通なら、新型は近日発売の第5世代ゴルフと同じ骨格から作られる。もちろんゴルフはゴルフで、これまで以上に全方位満点に近い優等生に違いない。それと同じプラットフォームを持つからには、A3は優等生であるだけでなく大きなプラスアルファが欲しい。
 そこで、どうだ、従来のA3からは想像もできないほどアグレッシブなこの顔つきは。バンパーを越えて上下ズドンと構えたグリルなど、あの超絶性能を誇るS6を思わせるものがある。もちろん、どこかボディの奥に引力の中心があり、表面すべてを強烈に引きつけているかのような凝縮感、巨大な塊から鋭いメスで切り出したようなフォルムでありながらヌンメリ続く大きな曲面、樹脂加工の極致ともいいたいほど緻密なインテリア、効果的に配置されたアルミ調アクセントなど、アウディそのものでない部分はどこにもない。細部をクローズアップすれば特徴に乏しいのに、全体まとめて眺めると、象徴的なフォーシルバーリングスのエンブレムがなくても紛うことなきアウディそのものとして仕上がっている。この佇まいこそ真のアイデンティティだ。
 とりあえず現状では3ドア仕様しかないのも、ゴルフなどとのポジションの違いを意味している。端的にいえばクーペであり、したがってパーソナルであり、それだけスポーティな演出でもある。こんなに悠々と座れる後席を持ちながらクーペとは意外に思われるかもしれないが、わざわざ前席をヨッコラショと倒して乗り降りする不便さは、優雅をもって良しとするアウディに相応しくない。あくまで前席を中心とした非常用のシート配置、すなわち2+3と考えるべきだ。そういえば、運転席から振り向いての後方視界の狭さ、特にすぐ近くを見にくい不自由さもクーペと思えば納得しやすい。そのくせハッチバック内側のパーセルシェルフからは、メッシュ状の日除けスクリーンを引き起こせるなど、いかにも金がかかっていそうな演出は怠りないが。
 
  ティプトロニック6速ATと組み合わせられるエンジンは、2リッターの直噴。A4などに搭載されるユニットをベースに新設計のヘッドを組み合わせたもので、経済性の高さがウリ。


非対称の分割可倒式リアシートを畳むと、ラゲッジスペースは1100リッターにまで拡大。通常は350リッター。パーセルボードには、リア用のサンブラインドまで備わる。
  足回りの設定は硬めだが、フラット感はまずまず。試乗車のグレードが「スポーツ」だったこともあり、グリップ力の限界は非常に高い。公道では、事実上オンザレール感覚だ。

 
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