スポーティかつアダルトなテイストを持つ、2リッタークラスの2BOXモデル(ハッチバック)が選べることも欧州車の魅力のひとつだが、そこにまた、魅力的な選択肢が加わった。
フォード・フォーカスST170である。
ここでは、直接のライバルとなるVWゴルフIV・GTI、そしてアルファ147との比較試乗により、フォーカスST170の実力、そしてキャラクターを検証する――。
リポート|斎藤 聡|S.Saito フォト|赤松 孝|T.Akamatsu
国産2BOXカーというと、20代の若いユーザーが乗るイメージが強く、30〜40代となるとなかなか手を出しにくい。ところが欧州車に目を向けてみると、1サイズ大きな2BOXカーがCセグメントとしてしっかり確立されており、その世代でも十分選択肢に成り得るクルマが数多くラインナップされている。そうした2BOXの中でも、とりわけスポーティグレードというのは個性が強く魅力的な存在だ。なおかつ乗りやすい、抑えの効いたスポーティさも兼ね備えることで、大人の審美眼にも十分耐えるモデルが揃っている。
そんなわけで、今回は大人が乗れるスポーティ2BOXとして、定番ゴルフIV・GTIとアルファ147、それにフォーカスST170を連れ出し比較試乗。それぞれのキャラクターを再確認するとともに、ニューカマー=フォーカスST170の位置づけについて考えてみることにする。
まずは、クラスの定番ゴルフIV・GTIから。結論からいえば、ゴルフは2BOXのカタチをしたセダンだった。それは、スポーティグレードであるGTIも例外ではない。むしろ、従来のゴルフらしいスポーティさは、ベーシックグレードであるゴルフEの方が色濃く受け継いでいるように思える。
というのも、GTIはロープレッシャーターボでパワー&トルクのアップを図った高速ツアラー的な味付けで、しかもサスペンションは比較的ソフト。乗り心地がよく、ノイズも意外なほど小さめで、当然のごとく室内は広い。ゆえに、すこぶる快適で、まるでトランクを省略したセダンに乗っているような印象があるのだ。
「これはスポーティとはいえないよなぁ……」と思いながらワインディングを走り出したのだが、コーナーに入るとゴルフはやはりゴルフだった。確かにサスペンションはソフトで、ロールは大きめなのだが、前後のロールバランスがよく、かなりのハイペースでコーナーを攻めても、フロントアウト側だけに荷重が集中しないのだ。適度にリアにも加重が乗って、驚くほどバランスよく曲がっていく。
とくに足回りのバランスのよさが光るのは高速の下りコーナーで、不思議なくらい安心感がある。しかも、それがアルファやフォーカスでは、ちょっと緊張しながら旋回するスピードだったりするのだ。その意味でゴルフGTIは、刺激は少ないが気持ちよくハイペースで走ることができるクルマだった。
刺激の少なさは、実はエンジン特性も関係している。ターボの過給効果で2000rpmあたりからトルクが出ており、ピークトルクは感覚的には4000rpmくらいにある印象。レブリミットの6400rpmまでスムーズに回るが、そこまでエンジンをぶん回す気にならないし、その必要もない。ターボを上手に使った穏やかなエンジン特性なのだ。
一方、アルファ147はゴルフとは正反対のキャラクターで、すこぶる刺激的な乗り味だ。ロールが大きめなのはゴルフと同じだが、乗り心地には適度な張りがあって、これがスポーティな印象を与えてくれる。また、このサスの味付けが初期応答を機敏にしているのだろう。ともすれば、落ち着きがないと思われるくらい初期の応答性を素速くして、クイックイッと曲がる感触を強調してもいる。
比較相対的にいえば、それほどコーナリング性能は高くない。基本的には若干アンダー傾向が強めで、ステアリングに頼らざるを得ないような上りの中高速コーナーだと、フロントアウト側のタイヤに負担が掛かっているのが感じ取れる。ただし、タックインが比較的強めに出るので、フラットなコーナーや下りのコーナーでは意識的にアクセルを戻してタックインを誘発するような走り方をしてやると、適度にリアが滑って面白いようにクルマが曲がる。ただし、気を付けないと適度の”度”を超えてしまうこともあるが……。
とはいえ、スタビリティコントロールを備えるので、解除しない限りは保険が効いているし、デメリットといえる半面、ドライバーがクルマを曲げる操作に深く関与するため、確実に”乗りこなす楽しさ”が味わえるのも確かだ。
エンジンについては、レスポンスがよく元気に回る(ような気分にさせる)。カッコ付きなのは、そのあたりの設定が実に巧みなのだ。低回転域のトルクは案外しっかりあって、低回転でもよく粘る。そして気持ちよく吹け上がっていくのだが、意外や6000〜7000rpmのレブリミット付近のトルクは薄く、気持ちよく回るエンジンがこれをカバーし、感覚的な気持ちよさや速さを演出している。高回転型に見せながら、実は中回転域のトルクを充実させて、実質的な加速のよさを確保しているのだ。このあたり、とてもしたたかでアルファらしいとボクは思う。
さて、最後に新顔のフォーカスST170だが、実はもっともスポーツ性が高いと感じられたのが、このモデルだった。
足回りは比較的硬め。ただし、サスの動き出しから硬く引き締まっているわけではなく、低速で走っているときはむしろ「ソフトなのか?」と思えるようなところがある。しかし、ペースを上げていくとビタッとコーナーでの姿勢が決まり、グイグイ曲がって行く。
コーナー半ばからアクセルを開けていくと、フロントタイヤがググッと引っ張るような、まるでビスカスLSDが効いているような感触が伝わってくる。高速コーナーで撮影していたAカメラマンが、「ほかの2台よりも明らかに速かった」というほど、コーナリングでの限界性能も高い。タイヤサイズが1サイズ太いということも、厳密にいえばコーナリングスピードには影響しているのだろうが、それ以上にしっかりした手応えとコーナーでの安定感が光る。
エンジンは典型的な高回転型で、実用性まで犠牲にはしていないが、回せば回すほどパワーが充実してくるタイプだ。惜しむらくはエンジンが回る感触がややザラついていて、爽快さを感じるようなフィーリングではないところ。ただ、慣れてくると、このちょっとばかりラフな感触がスポーツ気分を掻き立ててくれたりもする。
というわけで、3台を乗り比べてみたわけだが、前述のように、3台のクルマはそれぞれに個性的で、それぞれに独自のキャラクターを持っている。ゴルフGTIは、さりげない速さを持ったツアラーで、スポーティドライブも無難にこなす、ややマイルドな乗り味のクルマ。操作系にはカチッとした適度な硬質感があって、ドイツ車らしい品質感も持っている。コーナーを攻めるというよりも、距離を走ったり、さりげなくハイペースで走ることに楽しさを見出せる人に薦めたいクルマだ。
アルファは典型的なラテン系。いかに気持ちよく、そしていかに楽しく感じさせるかという部分に徹底的にこだわったクルマ作りがなされている。つまり他車との比較ではなく、クルマと自分との関係の中で絶対的な満足感を見出したい人向き。クルマを操る面白さではこの147が随一だろう。
そしてフォーカスST170は、一見おとなしい、そのデザインとのギャップが面白い。高い旋回スピードとハイスピードドライブでの驚くほど安定したクルマの動きは、高性能を味わう面白さがある。日本的なスポーティ2BOXを、ドイツ8割+アメリカ2割のテイストでアレンジするとこうなるといったクルマだ。もちろん、気分だけでなく実質的な速さも備えているので、スポーツドライブには汗がつきものだと考える人にはピッタリではないだろうか。
そして、ゴルフ、アルファを含むこのクラスで「一番ホットなモデルは?」と問われれば、いまなら迷うことなく、このフォーカスST170の名を挙げるだろう。
フォーカスをベースに、欧州フォードの特殊車両開発部門SVEが手を入れた高性能モデルがフォーカスST170。エンジンやシャシーが強化されるほか、日本仕様としては初めてとなる3ドアボディや専用の内外装&装備などが与えられる。
インテリアではシルバーフェースのメーターパネルやレカロ製ハーフレザースポーツバケットシート、本革シフトノブ、油温計&油圧計などの装備が与えられる。
インテリアではスポーツシートや本革巻きの3本スポークステアリングなどが奢られるものの、スポーティというよりは実用然とした趣でまとめられる。
タイヤサイズは205/55ZR16。ホイールはラフメッシュデザインを採用したBBS製アルミホイールを標準装備する。サスペンションは強化されているとはいえ非常にソフトな設定で、乗り心地なども犠牲になっていない。ESPを標準で装備している。
室内はややタイトだが、スポーツシートやメッキのリングを施したメーター回りが与えられるなど、スポーティ色の濃いインテリア。エクステリア同様のグラマラスな造形もアルファならではの魅力だ。
タイヤサイズは205/55R16。ホイールデザインはツインスパークモデルに共通したものとなる。VDC、ASRを標準装備するなどセーフティデバイス系も充実している。
Ford Focus ST170
Volkswagen Golf IV GTI 5MT
Alfa Romeo Alfa 147 2.0 Twin Spark
Selespeed 3Door
■全長/全幅/全高(mm)
4170/1710/1480
4155/1735/1455
4170/1730/1450
■ホイールベース(mm)
2615
2515
2545
■車両重量(kg)
1240
1280
1300〜1310
■エンジン種類
直4DOHC16V
直4DOHC20V+ターボ
直4DOHC16V
■排気量(cc)
1988
1780
1969
■最高出力(ps(kW)/rpm)
173(127)/7000
150(110)/5700
150(110)/6300
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
19.9k(195)/5500
21.4(210)/1750〜4600
18.4(181)/3800
■トランスミッション
6MT
5MT
5速シーケンシャル
■サスペンション(F:R)
ストラット:マルチリンク
ストラット:トレーリングアーム
Wウイッシュボーン:ストラット
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
Vディスク:ディスク
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
215/45R17
205/55R16
205/55R16
■東京標準現金価格
\3,000,000
\2,890,000
\2,880,000
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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