スポーツカーを作り慣れたアルファ・ロメオに対し、純粋なスポーツカーという意味では、
このTTが初めてとなるアウディ。
だからこそ、この2台はもっとも対照的なのではないか。
しかし、そう決めつけるのは早急すぎる。
スポーツカーにとって大切なのは、メカニズムだけではない。

リポート|笹目二朗|J.Sasame  フォト|郡大二郎|D.Kori


 アルファ・スパイダーとアウディTTロードスターの間には、大きな年齢差がありそうで実は4歳しか離れていない。アルファは往年の強烈さムンムンで6MTの硬派、アウディTTは現代IT調のソフトムードに6ATの気軽さで乗れる。そんな走行感覚が年齢差を感じさせるのだろうか。
 共通項はFFスポーツ。TTは確かにお手軽にして速い。Dレンジのまま、ただスロットルを開けて突っ走ればいい。コーナーも半ば強引に抜けられる。ソフトトップを上げてエアコンで空調を整えれば、オープンカーであることも一時忘れる。しかし、せっかく6段のマニュアルシフトも可能なことだし、シフトレバーを右に寄せて+−に前後すれば、そこにも間違いなくスポーツカー・ドライビングの楽しさが待っている。
 ずーっと昔は、ステアリングにパワーアシストが付くことも、ブレーキにバキュームサーボが付くこともスポーツカーらしくない、邪道だと忌み嫌われた時代があった。でも、操作が楽になったからといって面白味が半減するわけではない。ステアリングは重い軽いを味わうのが目的ではなく正確にラインに導くことが大事で、ブレーキは速度を落とせればいい。そしてクラッチがなくても変速はできる。パワーを欲するならば、工夫すればいいのだ。
 クルマにあれこれ要求する前に、与えられた範囲でテクニックを駆使してこそスポーツだ。そこまでまともに駆使すると速すぎるから、適当に手足を動かして雰囲気に浸るもよし。スポーツカーは自分なりの主体性を尊ぶクルマだから、どんな使い方をしてもサマになる。
 アルファ・スパイダーは、コーナリングマシンではないが、その気にさせる雰囲気を持っている。フルロック2回転プラスのラック&ピニオンは数字に期待するほどのレスポンスはないが、いまや細身に感じられる205/50タイヤを見れば納得がいく。しかしコレがまたイイ。前輪荷重はTTより40kgほど重いものの、面圧のしっかり掛かったタイヤの変形が手に取るようにわかる。スロットルを踏んだり放したり、横Gで変形した捩れが戻ったり、そうしたタイヤの仕事ぶりが分かってくると、攻めるにしても加減することができる。また、荒れた路面での乗り心地もいい。サスペンションアーム類のブッシュへの攻撃も柔らかい。そんなことを考えると、決してタイヤをこれ以上太くする気にはならないだろう。
 エンジンはアルファ純血のV6で、前にエンジンがあるにもかかわらず、ミッドシップかのようにイイ音が聞こえてくる。だが、実はドライバーシートではなく、外で聞いた方がはるかに心地よい。このままでも十分だが、これは早晩156GTA同様の3.2リッター(240ps)に換装されるようだ。
 ギアシフトは、剛性感の点でリモコンのレベルを越えていないし、レバーの移動量も大きめだが、少なくとも操作は確実に決まるし、容量の大きそうなクラッチと相まって、マニュアル・ギアボックス本来の楽しさを味わえる。
 最近のオープンモデルはウィンドスクリーンを寝かせたものが主流で、乗り降りには邪魔だし、オープンゆえの解放感を削ぐケースも多い。アルファ・スパイダーはもとより、アウディTTロードスターもそのあたりのドライバー心理をよく理解していて、スクリーンは立ち気味、顔の前がよく開けて解放感は抜群だ。
 その反面、オープンで走ると風が巻き込む率も高いが、それこそ望むところだ。もちろんサイドウィンドーを立てたり、リアからの巻き込みを防ぐ道具もある。軟弱な者を見捨てたりはしないのは、アウディとアルファに共通する、どこかフレンドリーな感覚である。
 

スパイダーは長らく2リッターツインスパークが導入されてきたが、'01年にGTV同様のV6・3リッターにスイッチ。218ps/27.0kg-mを発揮するエンジンにより、クルーザー的キャラクターを強めている。オープンならではの“見せる”インテリアも特徴だ。レザーシートは標準装備。東京標準現金価格は4,580,000円。

つい先日までクワトロとFFがラインナップされていたが、マイナーチェンジを期にFF+6ATにラインナップが一本化されたTTロードスター。試乗車はボディカラーやホイールをフルオーダーした“エクスクルーシブ”仕様。エンジンは直4・1.8リッターターボで180psを発生。東京標準現金価格は4,090,000円。

  カーデザイン史上、エポックメイキングなクルマとして後生にも語られるであろう両車。こうして並べてみると、無機的なTTロードスターに対して有機的なスパイダーという、対極のテイストでまとめられていることがわかる。ただし、その完成度は文句なしに高い。

 
TT ROADSTER 1.8T
ALFA SPIDER 3.0 V6
■全長/全幅/全高(mm)
4060×1765×1340
4290×1780×1315
■ホイールベース(mm)
2425
2540
■車両重量(kg)
1440
1450
■エンジン種類
直4DOHC20V
V6DOHC24V
■排気量(cc)
1780
2958
■最高出力(ps(kW)/rpm)
180(132)/5500
218(160)/6300
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
24.0(235)/
1950〜5000
27.0(265)/5000
■トランスミッション
6AT
6MT
■サスペンション(F:R)
ストラット:
トレーリングアーム
ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
Vディスク:ディスク
■タイヤ
205/55R16
205/50R16
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。



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