初代デビューから約7年、ついにA3が第二世代へと進化を遂げた。注目はやはり、ゴルフをはじめ今後VWグループで共用される新開発プラットフォームであり、そこにアウディならではのスパイスがいかに効かされているか、に尽きる。
もちろん、“技術による前進”を社是とするアウディだけに、新たに注入された先進技術の数々も見逃せないポイントといえるだろう。

リポート|吉田 匠|T.Yoshida フォト|フォトアウディ・ジャパン


 今年のジュネーブ・ショーには様々なカテゴリーの魅力的な新型車が登場したが、一般ユーザーの購買対象となり得るクルマのなかで最も重要なニューモデルのひとつが、'96年にプレミアム・コンパクトを標榜する初代が登場して7年が経った今、一段と強い存在感を放って2代目がデビューしたアウディA3ではなかったか。
 先代と同じく、新型アウディA3はまず3ドアが発表され、5ドアは後に登場する。その3ドアボディは、先代よりホイールベースが65mm、全幅が30mm拡大され、全高は10mm低くなるなど、クーペのようなプロポーションのハッチバックを目指したという。
 しかもよく見ると、フロントグリルとその下のエアインテークが細いラインで繋がっている。デトロイトでデビューしたSUVのパイクスピークやジュネーブのヌヴォラーリ等、最新のコンセプトアウディで実践されているグリルとインテークの一体化が、市販モデルとして初めてニューA3で具現化されているわけだ。しかもその左右にやや吊り目気味のヘッドライトを配したフロントは、動物的な表情に仕上がっている。
 そういったエモーショーナルな表現を駆使しながら、例えば室内は前後長が50mm伸ばされるなど、居住スペースも確実に拡大されているところがアウディらしい。
 A4から上のアウディと違って、フロントに横置きされるA3のエンジンは、1.6リッターと2リッターのガソリン、および1.9リッターと2リッターのターボディーゼルの4種類の4気筒に、3.2リッター狭角V6の合計5種類がラインナップされる。そのなかの4気筒はすべてFF、V6だけが4WDのクワトロになる。
 しかもこのA3V6クワトロには、ツインクラッチの2ペダル6段MT、DSG=ダイレクト・シフト・ギアボックスが選択可能になるから、TTクワトロと事実上同一のパワーパックになる。
 一方、ボディ/シャシーも先代とは別物といえる新世代プラットフォームに進化した。それは前記のようにサイズがやや拡大されているほか、サスペンションも一新された。フロントは先代と同形式のマクファーソン・ストラット改良型だが、リアはまったく新しい4アーム独立懸架に変わった。これは基本的に同一のリンク配置でFFにも4WDにも対応できるシステムで、FFではスチール製のアーム類のいくつかがクワトロでは軽量なアルミ製に替わる。
 その新型A3のプレス試乗会が、地中海に浮かぶイタリア領サルディニア島で、早くも開かれた。
 ただし、フル5シーターのTTクワトロというべき3.2V6クワトロは、残念ながらまだサルディニア島にやって来なかった。
 そこでまず、日本への導入が決定的な2.0FSIに乗ってみた。これは、オールアルミ製2リッター直噴ユニットに6段MTを組み合わせた、直4の最上級モデルだ。
 そのインテリアは、緻密な造りがプレミアムな印象を与えると同時に、スポーティでもある。TT譲りのデザインを持つダッシュボードが古典的なスポーツカーを彷彿とさせるし、ドライバーズシートが実用車としては低めにセットされているのもスポーツカーっぽくて、私なんか好きである。


 新開発の2リッター直噴4気筒エンジンは、150ps/6000rpmと20.4kg-m/3500rpmを発生、6500rpmからのレッドゾーン入口までスムーズに回るが、正直なところ6000rpmから上の吹けには、ちょっと目詰まり感がある。しかしその代わり、中速域のトルク感とレスポンスは実にいい感じで、適切なギアに入っていれば、軽く踏むだけで車重1275kgのボディを気持ちよくスピードに乗せていく。
 ちなみに、2.0FSIのメーカー公表動力性能は0〜100km/h加速9.1秒、最高速211km/hと、十分なものだ。
 また、試乗車の6段MTはシフトタッチもなかなか歯切れがよく、その意味でもスポーティだった。ただし、日本導入モデルの主流は6段ティプトロニックATになるはずだが、FSIユニットはティプトロニックとの相性を念頭において開発されているというから、その走りには期待が持てる。
 さらに、少なくとも5段MTとの組み合わせでは102psの1.6リッターも十分爽快な走りを見せてくれたから、ベーシックモデルとして日本への導入もアリではないかと思う。一方、こちらは日本に導入される可能性は皆無に近いが、140psを発生する新開発2リッター直噴ターボディーゼルは速さ、加速感とも文句なしだった。
 というわけで、パワーユニットにも好印象を受けたA3だったが、それにも増して感激的だったのがボディ/シャシーである。
 まず、剛性感たっぷりのボディが乗り手に安心感を与え、同時にどちらかというと硬めのサスペンションから、上質な乗り心地を見事に引き出しているといえる。
 とはいえニューA3の本当の驚きは、新型サスペンションや新規開発になるエレクトロ・メカニカル・パワーステアリングなどによってもたらされる、素晴らしいハンドリングにあった。
 驚きのポイントその1は、パワーをかけたときのアンダーステアの軽さで、結果としてコーナリングスピードも速く、タイトベンドからの脱出で踏み込んでも、事実上ニュートラルといいたい微弱アンダーステアを保って、素晴らしいスピードでコーナーを抜けていく。ポイントその2は、そういう限界的コーナリングの最中にスロットルを閉じても、普通のクルマと違ってタックインやテールスライドが皆無に近いことで、A3はほとんど軌跡を変えずにそのままコーナーを駆け抜けていく。
 いわば「常時オン・ザ・レール」のコーナリングなのである。
 ノーマルサスペンション+16インチタイヤでもコーナリングは猛烈に安定していて速いが、スポーツサスペンション+17インチタイヤの仕様ではよりスポーティでより速く、それでいて乗り心地はほとんど悪化していない。
 それに加えて、ステアリングの感触がこれまでのアウディよりナチュラルなのもポイントが高いし、ブレーキにも不満はない。
 というわけで、好ハンドリングのハッチバックがひしめくこのクラスのクルマのなかで現時点でのベストハンドリングカーに認定したいと思ったほど、新型A3の走りは質感が高いのだった。
 となると、アルミを多用して軽量化した4アーム・リアアクスルを備える3.2V6クワトロがどんな走りを見せるのか、ますます愉しみになったといえる。
 と同時に、A3と基本的に同じプラットフォームで登場するはずの次期ゴルフの実力の高さが、容易に推測できるわけである。
 
  サスペンションはフロントが改良型のストラット式、リアが新開発となる4リンク式。ステアリングにはアウディ・サーボトロニックと呼ばれる速度感応式の電制パワーステアリングが新採用される。
  従来モデルと比べホイールベースと全幅はそれぞれ65mm、30mm拡大された一方、全高は10mm低められた結果、クーペのごときスポーティなフォルムを実現。Cd値は0.33をマーク。
従来モデルに比べ室内長は55mm拡大。特に後席のニールームは+29mmのゆとりが確保されている。前席にはイージーエントリー機能が付き、後席へのアクセスを容易に。
  ラゲッジルームは通常で350リッター、最大で1100リッターまで展開可能。後席シートバックのアームレストを下ろせばトランクスルーになり、取り外し式のトランスポートバッグも付く。
  エンジンはガソリンが1.6リッター、2リッターFSI(写真)、3.2リッターV6で、ディーゼルが1.9リッターと2リッターのTDIという計5基。なお、3.2リッターV6は現地で今年半ばよりデリバリー開始となる。
  真円を反復したディテールや、センターコンソール左右に配したバーなどは、明らかにTTからの流れを汲むもの。アルミ製トリムやメタルエッジなどが随所に取り込まれ、アウディらしい高質感とスポーティなテイストを絶妙に融合。


AUDI A3
2.0FSI
3.2V6 quattro
■全長/全幅/全高(mm)
4203/1765/1421
■ホイールベース(mm)
2578
■トレッド(前/後)(mm)
1536/1517
■車両重量(kg)
1275
1450
■乗車定員(名)
5
■エンジン種類
直4DOHC16V
V6DOHC24V
■排気量(cc)
1984
3189
■最高出力(ps(kW)/rpm)
150(110)/6000
241(177)/6200
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
20.4(200)/3500
32.6(320)/2500
■トランスミッション
6速MT
6速セミAT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:4リンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
205/55R16(6.5J)
225/45R17
■東京標準現金価格
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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