工業大国ドイツの技術に裏打ちされたアウディとイタリアの官能をそのまま絵に描いたかのようなアルファ・ロメオ。
エンジンをオーバーハングに積むFFを基本に、競合する同一カテゴリーに多くのモデルをリリースする両メーカーだが、そのテイストは似ているのか、それとも否か。
まずは売れ筋のA4と156から検討してみる。

リポート|笹目二朗|J.Sasame  フォト|郡大二郎|D.Kori


 A4と156の共通項は、どちらもドアが4枚あるスリーボックスの正統派セダンながら、実用一点張りではなく、スポーティな雰囲気を漂わせた、マニア好みの仕立てが施されているところだ。また、スタイリッシュな外観だけでなく、両車とも走りの実力を兼ね備えているところが、普通の地味なセダン連中から尊敬されている所以でもある。雨が降ったら速度を落とす、雪が降ったら乗らないというのではなく、どんな状況でもトップランナーでなければ気が済まないオーナーも多いはずだ。
 スタビリティコントロールやトラクションコントロールのランプがやたらと点滅するようなクルマを彼らは好まない。アレは防御策であり、守りの消極策は時として束縛感も大きいからだ。根本的な安定性はノーマルの状態で、クルマ自身のキャラクターとして躾けられていなければならない。A4と156は、そんなことを思わせる高いスタビリティを持っている。
 アウディA4は、初代A4のインパクトには及ばないものの、正常進化としての高い洗練を感じる。最近はメカより電子デバイスを優先するようなクルマもあるが、アウディの場合は単にメカを電気装置に置き換えたのではなく、まずはメカありき、という骨太な発想が貫かれている。メカとしての面白さを基本に、電気はそれをスムーズに連続作動させるための制御として用いるという、そんな技術屋魂に満ちた彼らの仕事ぶりに共感する人も多いだろう。
 造っただけではなく、量産して初めて技術が進化することもアウディは知っている。CVTのマルチトロニックは、いまや騒音もかなり改善されているし、加速時のキックダウン、つまり低ギアへの移行レスポンスもよくなった。
 ティプトロと同じくマニュアルシフトするにしても、やはりトルコンはスリップ感を無視できない。その点、CVTのダイレクトさは伝達精度の高さを感じさせる。微妙な差であっても、その差を詰めていくのが技術なのだ。いずれはこれも最新のDSGに移行してゆくのかも知れないが、それが分かっていても、やはり経験として一度はCVTに挑戦しておくべきだ、と考えるのは当然だろう。
 サスペンションにアルミを多用したのもアウディは早かった。また、クワトロで4WDを極めたアウディは、FF仕様でも路面へトラクションを伝えることの重要性をよく認識している。ゆえに安定性の高さだけでなく、操縦する楽しさまでを同時に実現しているのだ。その結果、FRを卒業後にFFへ転向したアルファ同様、駆動輪と操舵輪が同一という難しい構造を克服し、いまではA4にしても156にしても操舵の遅れがない剛性感に満ちた応答性を実現している。これだけグイッと切れるステアリング入力を許容するクルマは少ない。安定性の高い証拠だ。
 アンダーステアを克服したのもA4は早かった。スロットルオフによるタックインでオーバーステア化する。これはアンダーステアが強いからで、ニュートラルに近づけるほど、スロットルのオン/オフによる姿勢の乱れは少ない。ここに着目した結果がスタビリティコントロールの考え方の出発点だから、最初からニュートラルなステア特性を指向しているA4は、そうした電子デバイスの出番がもともと少ない。もしあるとしたら、路肩に脱輪したような場合のスプリットミューによるドリフトアウトからの救済だろう。実際、それ以外はほとんど顔を出さない。
 一方のアルファ156は、クルマはMTで乗ってこそ潔いと思う人にとって恰好の選択肢といえる。これは輸入元の心意気によるところも大きい。下取りを気にするようなクルマ選びはまっぴらゴメン、大排気量エンジンを積み、太いタイヤをひけらかすようなオーナーは、最初から視野に入れていないかのようだ。
 ATは確かにラクだ。しかし、何かの機会にMT車を試したなら、それまで自分がいかにズボラな運転をしていたかに気づくはずだ。MT車は、終始意識して繊細な操作をしなければスムーズに走らせられない。スロットルコントロールの楽しさは、MT車でなくては味わえない。カップラーメンでも生きてはいけるが、米を釜で炊いて食べる美味さは分からないだろう。つまり、そういうことだ。
 JTSエンジンになって、いままでのツインスパークの方が良かったという話も聞く。確かにあのツインスパークはひとつの完成型だった。しかしアレとて、デビュー当時はフィアット製だとか、プラグはひとつでもふたつでもパワーは変わらないよとか、ネガティブな反応もあったではないか。新しいものに対して何でも迎合してしまうのは問題だが、良いものは素直に認める判断も大事だろう。
 というわけで、この新しい直噴エンジンは、評価されてしかるべき実力を持っている。実用速度で多用する低回転域のトルクは、なにより直噴エンジンの魅力だ。アルファの直噴化の目的は、希薄燃焼による低燃費を狙ったものではない。明らかに高出力化が目的だ。
 雰囲気に酔うことを止めはしないが、アルファは男らしさが似合うクルマだ。ガシッとしたステアリングを操り、ギアシフトを繰り返して、思いのままにエンジンやタイヤと会話を楽しむ、そこに本当の156の素顔が見えてくる。
 2台を乗り比べて感じたことは、156の男性的な強靱さに対し、A4は意外や繊細な印象が残ったこと。つまり、イタリアとドイツという、それぞれの生産国のイメージとはまさに反対である。このあたりが、両者がいつも新鮮に見える理由なのだろうか。
 



  先日マイナーチェンジが敢行された156。トピックスは3.2リッターV6を積むGTAの追加と、2リッターがツインスパークからJTSにスイッチしたこと。外観も若干リフレッシュされた。2.0 JTS(RHD)の東京標準現金価格は3,660,000円。
  アルミ調パネルやメッキリングの採用により、質感はグッと高まっている。トランスミッションはこの5速MTのほか、シーケンシャルシフトの5速セレスピードが選べる。

  インテリアのフィット・アンド・フィニッシュは相変わらず世界最高レベルにある。上級仕様のSEは、レザーシートやシートヒーター、ウッドパネルを装備する。



 
A4 2.0SE
ALFA156 2.0 JTS
■全長/全幅/全高(mm)
4555×1765×1430
4430×1755×1415
■ホイールベース(mm)
2645
2595
■車両重量(kg)
1470
1300
■エンジン種類
直4DOHC20V
直4DOHC16V
■排気量(cc)
1984
1969
■最高出力(ps(kW)/rpm)
130(96)/5700
165(121)/6400
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
19.9(195)/3300
21.0(206)/3250
■トランスミッション
CVT
5MT
■サスペンション(F:R)
4リンク:トラペゾイダル
Wウイッシュボーン:
ストラット
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
Vディスク:ディスク
■タイヤ
205/55R16
205/55R16
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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