一部クルマ好きから根強い支持を受けている、1.6リッタークラスのインポート・ホットハッチ市場。近年はラテン系の独壇場だったが、ここに来て魅力的なドイツ勢が相次いで上陸。選択の幅も広がった。
そこで、同クラスのヒット作にして間もなく勇退予定というプジョー106S16を交え、各車のキャラクターを再確認してみた。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|松本高好|T.Matsumoto

 今回の3台で、ミニ・クーパーがルポGTIのライバルになり得るかは疑問だ。サイズ、性能、それに価格も非常に近い両車だが、そもそも雰囲気が違いすぎる。極論すれば、ミニの顧客は最初からミニが欲しいのであって、考える選択肢はノーマルかクーパーかSかであるにすぎない。
 それを承知で比較すると、際立つのはミニ・クーパーの高級感だ。ルポも機械として充実感が濃いが、見るからに高そうな演出ではミニの勝ち。コンパクト3ドアゆえ、ほとんど使わない後席(実際のスペースもぎりぎり)まで深いカーブで造形したインテリアにもそれが漂う。ただしダッシュボードの意匠など、オリジナル・ミニの記憶に高級感も重ねようという気持ちが強すぎたあまりか、いささか過剰なのが否めない。特徴的なセンター・スピードメーターも、ダッシュ中央部の下に同じ形のスイッチをたくさん並べたのも、明らかに機能よりファッション優先の設計態度だ。もっとも、オリジナルを肥えさせた外観ともども、ミニのファンにとってはそれも選択のポイントなのだろうが……。
 同じようにスポーティといっても、走る味付けもルポGTIとミニ・クーパーでは正反対だ。ミニの第一印象は重厚そのもので、基本的に硬いセッティングとはいえ不快ではなく、むしろ頼り甲斐のある感触で貫かれている。まるではるかに重く大きいセダンのようで、徹底したフラット感も好ましい。偶然とはいえ、ここにもオリジナル・ミニの風合いがどことなく受け継がれているのは興味深い。路面の凹凸に応じての上下動が、いつも前後いっしょなのだ。
 攻めて乗っても、ルポとはずいぶん感触が違う。タンタン、カシカシと正直に路面を拾いながらも必死で掴み続けるのがルポなら、ミニはドスドス踏み越えて行くタイプだ。どちらもボディのがっちり感ではクラストップ級だが、いわゆる重厚感ではミニに軍配が上がる。反面、切り込む動きに俊敏に反応する身軽さではルポだ。
 ミニもけっして鈍くはないが、勢いよくコーナーに突っ込んだ途端、外側の前輪にドドッと車重がのしかかるのが手に取るようにわかる。重心が低いのと、タイヤサイズに余裕があるために救われているが、そのまま強引に攻めると突然スパッとノーズから飛び出しそうな不安もなくはない。この瞬間、内側後輪からはほとんど接地荷重が抜け、見た目は路面から浮いてなくても実質的には三輪車状態に近い。その証拠に、少しステアリングを戻すと軽くドスンという衝撃とともにリアが着陸する。ただし、ここでも主にタイヤの余裕のせいだろう、コーナリング中のアクセルオフに対するタックインは強くは出ない。
 エンジンの性格付けも対照的で、低・中速重視のルポに対し、ミニは伝統的なスポーツ風味と呼ぶべきか、4000rpmあたりから響きもパンチも元気が増す。もちろん低回転でのトルクも十分なので、ルポより一つ少ない5速MTでも不利などない。ただしシフトの手応えも正反対で、コリコリ軽いルポに対し、こちらは良くいえばしっくり、そうでなければ少し重い。特に4速から5速へのシフトアップに際しては、強めのスプリング反力に対して意識的にレバーを押しつける必要がある。各ポジションへも念入りに押し込む感じで、どことなく往年のポルシェ・シンクロを思い出させる。
 これらを総括すると、ルポGTIもミニ・クーパーも最新技術を駆使しながら、スポーツ風味の解釈においてはやや前時代的といいたい。がっちり固めるのがスポーツというセンスがルポには見えるし、ミニのハンドリングの根本は少し前のFF界の常識だ。もっとも、どちらかというと保守的なスポーツセダン愛好家たちに、その方が喜ばれるという判断があっての方針決定なのだろうが。
 





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