カレラRSの流れを受け継ぐGT3は、レーシングユースを前提にしたロードバージョンであり、NA系ポルシェでは最速となるモデルだ。
初代がデビューしたのは'99年。それから約4年の歳月を経て、GT3の第2世代が姿を現した。最強のNA系フラット6とともに。

リポート|吉田 匠|T.Yoshida フォト|ポルシェ・ジャパン


 1998年のデビューから5年目に入って、今もユニークなスタイリングの魅力は衰えていないアウディTTに、またひとつチャーミングなモデルが加わった。
 その名は3.2クワトロ。
 これまで1.8リッター直4ターボが収まっていたフードの下に、VWゴルフR32と基本的に同じ3.2リッター狭角15度DOHC24バルブV6NAエンジンを搭載したモデルで、3189ccの排気量から生み出されるトルクは32.6kg-mとR32と変わらないが、パワーは250psと9ps上回るスペックを持つ。
 駆動系は電子制御ハルデックスカップリングを使ったフルタイム4WD、すなわちクワトロなのだが、このTTの駆動系にはもうひとつの隠し球があった。DSG=ダイレクト・シフト・ギアボックスである。これは、アルファのセレスピードやBMWのSMGと基本的に同様のクラッチペダルレスMTで、ギアは前進6段だが、そこから先が同類とは違う。DSGは、2基の電子制御多板クラッチを駆使して2つのギアが同時にエンゲージしている瞬間を作り出し、加速時のパワーフローの途切れを排除しているというのである。
 そうか、ならば乗ってみようじゃないかと2月半ばに訪れたプレス試乗会の舞台はコートダジュールで、早速コクピットに収まってニース空港のパーキングを出発する。で、モンテカルロ方面に向かうオートルート目指して一般道を走り出した段階で、早くもこのクルマの魅力が明確に伝わってきた。
 まずエンジンがかなりよろしい。3.2リッター狭角V6はドライバーの右足の操作に応えて軽々と反応し、”パフォーン”という胸の透く咆哮を奏でつつ、トップエンドに上り詰めていく。トルク感と回転感を絶妙にミックスしたような、適度に重量感があって適度に軽快感のあるその回り方は、すこぶる心地好いスポーツカーエンジンに仕上がっているといえる。車重は1520kgとゴルフR32より60kg重いが、パワーは絶対的に十分で、痛快な加速を振る舞ってくれる。
 しかもそこでは、DSGが見事にその役割を果たしている。まずノーマルのATモードを選んでスロットルを踏むと、この手のギアボックスにありがちなギクシャクしたパワーフローの途切れ感なしに、トルコン式ATのようにスムーズにシフトアップしていく。
 Sモードを選ぶと、そこも基本的にはATの範疇だが、高回転域を惜しみなく使った活気に満ちた走りが、機械任せで手に入る。したがって加速感は一段と活発になり、0〜100km/h加速6.4秒、リミッター制御の最高速250km/hという動力性能値は、条件の整った舞台があれば確実にマークできそうに思える。
 速く走るだけならSモードで十分だが、私のように自分でギアを操作しないと気が済まないアマノジャクは、マニュアルモードを選んでレバーを前後に叩くか、ステアリングホイール裏のパドルを操作したくなる。そうした場合のレスポンスもすこぶる素早い部類で、シフトアップもシフトダウンもスパスパと気持ちよく決まる。
 ただし、そうやってマニュアルモードを選んだときも、エンジン回転がレヴリミットの5600rpmに近づくと自動的なシフトアップが起こってしまうセッティングは、生粋のスポーツカーとして使うにはちょっと物足りない。ワインディングを攻めたとき、コーナーの手前で望むより1段上のギアに入ってしまう可能性が高いからで、ここはひとつシフトアップなしのホールドでいってもらいたいものだと、個人的には思う。
 しかもTTのDSG開発者たちは、シフトパドルがステアリングホイールと一緒に回る一般的な方式を選んだが、ワインディングを本気で駆け巡るようなクルマを意図しているのなら、フェラーリF1システムのような固定式パドルの方が操作しやすいのに。
 といったディテールに関する要望はいくつかあるが、DSGが現時点で最も優れた2ペダルMTなのは、たぶん間違いない。
 もうひとつ感心したのは、電子制御で実に自然なクリープが創出されていることだった。モンテカルロの裏山の急な上りで渋滞に引っ掛かったときブレーキを緩めたら、TTは普通のAT車と同じ感じにクリープしてみせたのだ。
 シャシーの分野では、同じエンジンを積むゴルフR32ほど乗り心地が硬くないのが好ましかった。オプションの18インチホイールにコンチネンタル・スポーツコンタクト2を履いた試乗車は、バネ下の重さは多少感じさせるものの、乗り心地はこれで十分いける。
 その一方、ハンドリングはなかなか痛快だった。タイトベンドを攻めるとフロントが逃げそうになるし、限界近くのコーナリング中に急にスロットルを閉じると、大型スポイラーも低速では効果がないらしく、テールがズルリと流れたりする。けれど、250psを4輪に振り分けて走るコンパクトなクーペボディを自在に振り回す楽しさは、得がたいものがある。
 TTクーペ3.2クワトロはドイツで4万1200ユーロ、およそ500万円で発売されるらしい。日本導入は今年中頃とのことだが、どんなプライスが付くのか。
 いずれにせよこれが、これまでで最も官能的なTTクワトロなのは間違いなく、もともとこのツルンとしたクーペボディが嫌いじゃない私などは、遥か眼下に地中海を望むグラン・コルニッシュのワインディングロードを軽く攻めながら、けっこう本気でTTを欲しくなったりしたのだった。
 
  VWゴルフR32やフェートンにも積まれる3.2リッターV6ユニットを横置きにして搭載。ただし、吸排気系のリファインにより、ピークパワーはR32に対して9psアップの250psを発揮する。
  このサイズのスポーツカーとしてはややヘビーウエイトながら、それを微塵も感じさせぬスムーズな加速と軽快なフットワーク。足回りがガチガチに固められてないのも好印象だ。
  パワーアップに合わせてシャシー系も強化。ブレーキは前後ベンチレーテッド化、フロントにはRS4のブレーキシステムが流用されている。当然、サスペンションも専用設定。
  アルミ製のシフトパネル、280km/hまで刻まれたスピードメーター、そしてステアリング背後のシフトパドルが特別なTTであることを物語る。前席にはヘッド/ソラックス(胸部)エアバッグが標準装備。
2枚の湿式多板クラッチに電子制御油圧システムを組み合わせ、走行中のギアがエンゲージしている状態で常にもう一方のギアもスタンバイ。これにより、シフトポイントの瞬間にタイムラグなくクラッチを繋ぐという仕組み。なお、シフトチェンジはフロアとパドルの両方で行なえる。


  前後バンパーは冷却と空力を考慮して形状変更、リアエンドのスポイラーもさらに大型化されている。また、ヘッドライトは自動光軸調整付きのキセノンタイプが標準装備、その周囲にはチタンカラーのトリムが施される。



Audi TT Coupe 3.2 quattro
■全長/全幅/全高(mm)
4041/1764/1346
■ホイールベース(mm)
2422
■トレッド(前/後)(mm)
1528/1513
■車両重量(kg)
1520
■乗車定員(名)
4
■エンジン種類
V6DOHC24V
■排気量(cc)
3189
■最高出力(ps(kW)/rpm)
250(184)/6300
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
32.6(320)/2800-3200
■10・15モード燃費
■トランスミッション
6速セミAT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤ(ホイール)
225/45R17(7.5J)
■東京標準現金価格
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。



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