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2003年、極寒のデトロイト・ショー。そのBMWブースでメインステージを飾っていたのは、X3のプロトタイプとされるXアクティビティだった。その隣に、さり気なくも秘めた熱さを感じさせつつ展示されていた1台のZ8。うっかりすると見過ごしかねないが、目ざといファンであればすぐに気づいたはずだ。 まず、ホイールが違う。Z8のホイールは、シンプルだが力強いデザインとなる。それに対して、このZ8のホイールはシャープであり大胆なデザインを採用している。しかも、ホイール径が格段に大きい。近寄って見ると、その径は20インチに達していることが分かる。そして、中央には見慣れないエンブレム……。
リポーターの目には、そのZ8がBMWアルピナロードスターV8であることが分かったが、会場を訪れたアメリカの人たちにはどうだったのだろうか。
これまで、意外なことにアルピナがアメリカに正式輸出されることはなかった。本誌でもお馴染みの木村好宏氏の取材によると、アメリカは市場が広大すぎるために小規模生産を前提とするアルピナでは対応しきれないという判断があったのだという。
ところが、このロードスターV8が2001年のフランクフルト・ショーで発表されると間もなく、アメリカから市販を待望する声が上がったのである。それに応えるべく、日本の正規ディーラーでアルピナが扱われるように、アメリカでもロードスターV8発売の道が開けていったのだ。
その結果が、今回のデトロイト・ショーにおけるロードスターV8のデビューとなったのである。したがって、よほどのマニアでない限り、アメリカ人にとってアルピナは未知の存在なのだ。
だが、ロードスターV8をひと目見れば、そのクオリティがいわゆるチューニングカーのレベルを超越していることが、誰にでもわかったに違いない。だからこそ、BMWとのジョイントが実現した。だが、それにしても今回の扱いは異例である。アルピナのブースではなく、BMWのブースに展示されていたからだ。
そもそも、デトロイトショーに先立ち、2002年12月の段階でBMWノースアメリカは正式プレスリリースを発信。ロードスターV8を、デトロイト・ショー(ロサンゼルスショーでも)で発表することが事前に公表されていた。その内容には、冒頭からZ8のセカンドエディションと記載され、プレスリリースの内容も並列に扱われていたのだ。
こうした背景には、Z8が積むMの手になる5リッターのV型8気筒エンジンが、400psという強烈なパワーを発揮する魅力はあるものの、6速MTの組み合わせしか存在しなかったことが挙げられる。Z8自体にATを組み合わせるプログラムはそもそも存在せず、認めもしなかったのはMのこだわりである。だが、市場からはZ8のATを望む声が当初からあり、アメリカではとくに強かった。
つまり、需要と供給の利害得失の関係を取り持ったのがアルピナということになる。BMWとアルピナは、きわめて近い関係にある。Z8のAT化という、ある意味においてBMWのコンセプトに反する取り組みを、市場の期待に応える動きとしてむしろ歓迎しているのだ。実際、今回のようにBMWはブースをアルピナに与えただけではなく、高度な電子制御についてもブラックボックスを開けるための「鍵」を委ねている。
さもなければ、ロードスターV8は存在さえしていない。既存のエンジンを単純にスワップするだけであれば、それこそチューニングカーと同じになってしまう。成り立ちとしては、アルピナB10V8S用のV型8気筒4・8リッターエンジンを搭載しているが、制御ユニットは同じではない。最高出力は、B10V8Sが384psを発揮するのに対し、ロードスターV8のエンジンは389psに達する。
アルピナは、BMWから委ねられた鍵によりブラックボックスを開け制御ユニットを解析するとともに、ロードスターV8のために最適化を図り、さらに組み合わせるZF製の5速ATとの協調制御も専用に設定しているのだ。
こうして、アメリカの人が待望していたZ8のセカンドエディション、ATを採用するアルピナ・ロードスターV8が誕生した。もちろん、それを望んでいたのは日本の人も同じだった。すでに日本にも上陸し、幸せなオーナーが納車を待っている状態だ。
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パワーユニットはB10
V8Sと同じ4.8リッターだが、ロードスターV8専用のチューニングが施される。これに組み合わせるミッションは、ZF製の5速AT。もちろん、アルピナ自慢のスウィッチトロニック機構付きだ。 |
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インテリアは、仕立ての良さもさることながら絶妙なカラーコーディネートが目を引く。専用デザインのステアリングは、ノーマルよりエレガントな風情。その奥にはATのシフトインジケーターが備わる。シートはナッパレザーとアルカンタラのコンビで、シートヒーター、電動アジャスト機構を装備。 |
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