アウディと技術や部品を融通し合いながら、共食いも覚悟の商品企画さえ連発するVW。でも、今度ばかりはちょっとお茶目に走りすぎた感もある。いや、似たようなプラットフォームからホットハッチを仕立てるにも、こんなに違うアプローチがあるといいたかったのかもしれない。これがアウディに対する若々しさの表現という解釈もある。
 メカだけ見れば、いかにもドイツ式エンジニアの夢そのもので、超高級車フェートンにも積む狭角V6をさらに絞り上げてぶち込み、6速MTに4WDに大径ホイールときた。おかげでゴルフのくせに395万円にもなってしまったが、これではCクラスも3シリーズも最低限しか買えないから、それなりの価値は大きい。
 で、どこがお茶目かというと、乗った途端すぐわかる。なんだ、この乗り心地は。街中ではもちろんだが、アウトバーン的にペースを上げても、常に継ぎ目や不整を拾ってゴツンゴツンという上下動が絶えない。まるで社外の野獣系チューナーのような仕事だ。
 でも不思議なのは、そのまま峠を全力で攻めても、妙にコーナーで跳ねたりしないことだ。ガシッと硬くロールを押さえ込み、ちゃんと四輪を接地させたまま、ほとんどフールプルーフに駆け抜けてしまう。取り扱いの容易さではアウディと同等だ。ただし、これもハルデックス・カプリングによる4WDなので、基本的には前輪が空転してからでないと後輪に動力がはっきり配分されないため、路面のμが低いと一瞬オヤッと思うこともある。
 そして、ここでもう一つのお茶目ぶりを再認識することになる。6速MTだ。どうも昨今「6」がスポーツタイプの定番になってしまったようだが、ここまで来ると無意味に近い。超低回転からあり余るトルクなので、むしろワイドレシオの5速の方が、その美点を強調できたはずだし、頻繁なシフトのロスタイムぶん速かったかもしれない。
 しかし、本来ホットハッチの醍醐味とは、安価な大衆車が大変身するところにある。だとすればゴルフR32は、GTIがおとなしくなってしまった今、VWなりに鬱憤を晴らす一作なのに違いない。
 
  かつてホットハッチの代名詞として君臨したGTIの精神を現代風に解釈、今後の展開が楽しみなRラインの先鋒として登場したゴルフR32。エンジンは旗艦フェートンにも搭載される3.2リッターの狭角15度V6がベースで、241psと32.6kg-mを発生。トランスミッションは現時点で6速MTのみだが、本国ではシーケンシャル式セミATのDSG(ダイレクト・シフト・ギアボックス)も追加設定。S3同様にハルデックス式4WDが搭載される。

 
Volkswagen GOLF R32
■全長/全幅/全高(mm)
4165×1735×1435
■ホイールベース(mm)
2520
■車両重量(kg)
1460
■エンジン種類
V6DOHC24V
■排気量(cc)
3188
■最高出力(ps(kW)/rpm)
241ps(177kW)/6250rpm
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
32.6kg-m(320Nm)/2800-3200rpm
■トランスミッション
6速MT
■サスペンション(F/R)
ストラット/トレーリングアーム
■ブレーキ(F/R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ
225/40R18
■東京標準現金価格
¥3,950,000
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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