そして最後に登場するのは、やはり真打ち的な貫祿をまき散らすメルセデスC32AMGだ。それにしても往年の駄々っ子ぶりを思い出すにつけ、いまのAMGは絶妙のポジションを見つけたと感心せざるを得ない。あくまで量産車ベースの特別高性能仕様でありながら、よく見るとことさら尖った部分がほとんどない。たしかにパワーとトルクは桁違いでも、まるで本来そうであったかのように全体のバランスが取れている。その点ではAMGとアウディSがドイツ・ツーリングカーの双璧だろう。
 C32はAMGのエントリーモデルだが、そのくせして大排気量V8のお姉さんたちを慌てさせてしまったところ、相当なお転婆でもある。なにしろノーマルC320のV6にスーパーチャージャーを付けて353psといえば、それまでAMGの主流だった5.5リッターと差がない。そのままでは沽券にかかわるとあって、あちらもスーパーチャージャーを買い込んで、一気に500psレベルまで駆け登ってしまった。
 それはそれとして、どのAMGでも感心するのは、度外れたパワーを与えられながら、見事に通常のFRで消化しきっていることだ。C32も例外ではなく、その結果、かえってパンチを感じにくくしている面さえある。Dレンジに入れて普通にフッと出て、踏めばもちろん速いものの、生物としての人間の生理を裏返すほどでもない。ハンドリングのゆとり感も、きちんと動力性能の全域をカバーする。
 そんな優等生が秘める野獣性を垣間見るには、完備した安全ネットワークを切るしかない。試しにESPをオフにして1速から全開発進してみたまえ。500ps級のV8ならもちろんだが、このV6搭載のC32でも濛々とタイヤの白煙をあげたまま、路面に黒々と空転の跡を残し続ける。
 それを知ってしまうと、ドイツ系を筆頭に開発が進められてきた電子制御安全装置がいかに有効か、痛いほど思い知らされる。逆にいうなら、それらすべてを総合したのはメルセデスやAMGの真価でもある。あっちの方がエラいのだから、こっちはそれに任せていればいいだけだ。
 
  いまやメルセデスのラグジャリー部門たるAMGが手がけた高性能Cクラス。そのチューニング手法は、かつての排気量アップに代わりスーパーチャージャー化が主体で、このC32AMGにも353psと45.9kg-mを発揮する3.2リッターV6スーパーチャージャーが搭載。トランスミッションは5速ATで、専用プログラムとステアリングスイッチにより、さらにスポーティなシフトチェンジを可能にするAMGスピードシフトも搭載。ワゴンボディもあり。

 
Mercedes-Benz C32 AMG
■全長/全幅/全高(mm)
4535×1730×1410
■ホイールベース(mm)
2715
■車両重量(kg)
1610
■エンジン種類
V6SOHC18V+スーパーチャージャー
■排気量(cc)
3199
■最高出力(ps(kW)/rpm)
353ps(260kW)/6100rpm
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
45.9kg-m(450Nm)/4400rpm
■トランスミッション
5速AT
■サスペンション(F/R)
ストラット/マルチリンク
■ブレーキ(F/R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F/R)
225/45R17/245/40R17
■東京標準現金価格
¥8,700,000
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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