これらに対して、ポルシェ911はまったく異質の成り立ちを持っている。一般的には水平対向エンジンによるRR方式が最大の特徴と思われているが、実はこの形式ありきで始まったクルマではない。そのルーツを辿ると戦前に生まれたVWビートルに行き当たるが、あのころとしては画期的ともいえたトータルパッケージ設計の結果だったのだ。だからこのフラット6もクルマの一部に融合した要素であり、エンジン単体で語るべきではない。
 その証拠に、どんなリアエンジン・ポルシェも、エンジンを鑑賞することができないという点では希有なスポーツカーといえる。しかも水平対向ならではの特性としてきわめて振動が少なく、ただリアの奥まったところに潜んだまま、必要な瞬間に必要な動力を供給するという黒子に徹している。だからこそ、せめてその存在を実感する縁として、かつてはヒステリックな空冷サウンドに魅きつけられたりもしたのだろう。
 もちろん高性能のスポーツカーだけに、ポルシェにもスペックを軸とした話題は無限にある。しかしそれより注目すべきは、リアオーバーハングに大きなエンジンを吊るという理不尽なレイアウトを墨守しつつ、その欠点をとことん矯めるべく営々と努力を注ぎ込んできたポルシェ技術陣の意地ではあるまいか? 前述のパッケージ論でいえば、ビートルがこうだったのは、可能な限り車室を広く取るために、エンジンをホイールベースの外に追い出したかったからであって、RRというレイアウト自体、スポーツカーには不向きな手法だったはずだ。それをここまで玉成した裏には、効率や補給をないがしろにしてまで精緻な兵器にこだわった、いかにもドイツらしい技術の身風がみなぎっているようにも思う。

Type:6 Cylinders horizontally opposed DOHC 24valves
Engine management:Bosch DME7.8
Capacity:3596cc
Bore×Stroke:96.0×82.8mm
Compression ratio:11.3:1
Max output:320ps(235kW)/6800rpm
Max torque:37.7kg-m(370Nm)/4250rpm
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
 
いわゆる「996ボディ」では第2世代となる現行モデルは、3.6リッターへの排気量拡大をはじめスポーツカーとしての資質にさらなる磨きが掛かっている。ターボと同デザインのヘッドライトやディテールの改良で、外観もボクスターとの差別化が進んだ。デビュー当初は大きいといわれたボディ(全長×全幅×全高=4430×1770×1305mm)も、いまや相対的にコンパクトな印象。9,900,000円。●問い合わせ先

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