そんなメルセデスAMGと対照的な位置に棲むのがBMWであり、それを磨きこんだのがアルピナといえる。今回こんなパワーの渦に、数あるアルピナ陣営からあえてわずか3.4リッターの直列6気筒を搭載した新作B3Sを抜擢した理由もそこにある。このところ衝突安全性などの見地から短いエンジンが歓迎され、各メーカーが軒並みVに走った中でBMWが頑固に直6の孤塁を守るのは、やはり総合的なバランスにおいて最も優れているから(さもなければ60度V12だ)にほかならない。逆にいえば、それならではの深い味わいを演出できなかったら、ここまでこだわる意味がない。
 そんな秀作6気筒を土台として、さらに超軽量ピストンなどで仕上げ直したのがB3Sだ。従来のB3-3.3から約50cc増しで315psと、30ps引き上げられている。これを総括するなら「さすが」に尽きる。BMWに乗るたびに感銘を受けるのは「トルクの美しさ」だ。最高出力そのものは6000rpm以上の特定領域での話だが、実際にはそこだけで走るわけではない。そこに至る過程での息吹にこそ本当の姿が見える。
 その繊細さだけを、ことさら強調したのがアルピナだ。ただパンチだけなら、基本のBMWと大きく変わるものではない。それよりチューナーが「BMWほど燃焼を知り尽くしたメーカーはない」と口をそろえる通り、いかにも無駄なく空気とガソリンを燃やしきっている実感に心を奪われずにはいられない。特に中速域での反応は絶妙で、どうしても必要以上に踏んだり放したりしたくなる。
 現代のエンジンといえはトルク特性がフラットなので、あえて6速MTとの組み合わせがナンセンスに思えることが多いが、アルピナの場合、それでもなおゲトラグ226ギアボックスの各ギアを駆使しつつ、ボンネットの奥の歌姫に、ついつい耳をかたむけてしまう。それは、単なるパワーに頼るのが本当のドライビングではないという、強烈なメッセージであると同時に、やがて確実に訪れる内燃機関の終焉に向けての「白鳥の歌」にも聞こえてならない。


Type:6 Cylinders in Line DOHC 24valves
Engine management:SIEMENS DME MS43
Capacity:3346cc
Bore×Stroke:87.0×93.8mm
Compression ratio:10.2:1
Max output:315ps(232kW)/6300rpm
Max torque:36.9kg-m(362Nm)/4800rpm
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
 
通常はエアバルブが露出しない、繊細なデザインの18インチホイールやお馴染みのフロントスポイラー、サイドストライプが上品なテイストを醸し出すB3S。セダン(リムジン)の他、クーペやワゴン(ツーリング)、カブリオレボディも用意され、ミッションはAT(スウィッチトロニック)もチョイスできる。さらに、右ハンドルもオーダー可能だ。価格は7,880,000円。
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