「パフォーマンス」は単なる「性能」ではない。それはクルマとしての生きざまなので、数字で表すことなど本来できるわけがない。たとえば、最新のメルセデスAMG8気筒勢がスーパーチャージャーで武装して5.5リッターから500psを叩き出す本当の価値も、量産車史上最強クラスの出力であることにではなく、それを涼しい顔で使いこなしているところにある。
 なるほど、113M55と名乗るエンジンそのものは、たしかに暴力的ではある。ソフト路線を装いつつも「世界に冠たるスリーポインテッド・スター」を叫びたくてウズウズしている内心がありありと窺える。すべてを見下してこそのメルセデス、というわけだ。
 ベースとなったのは、量産SクラスにもEクラスにも使われている5リッターのV8ユニット。それを5・5リッターに拡大したうえ、Vの谷間にリショルム式コンプレッサーをぶち込んだのがこれだ。
 だから究極のジェントルメンズ・エクスプレスたるCLをもってしても、その本性を隠すなど不可能に近い。なにしろ軽く踏んだ瞬間から、マッチョ華やかなりし頃のアメリカン・ストックカーのごとくワラワラとした響きが立ちのぼる。そのうえ、わずか1500rpmで並みの6リッター級のトルクを生んでいるのだから始末が悪い。そのまま踏めば、同じエンジンを積むSL55AMGほどではないにせよ、ビシャーッと叩きつけるようなサウンド(というより大気の振動)を残し、自重2tオーバーのクルマを軽量級スポーツカーのように疾駆させる。
 さりとて、このエンジンだけでCL55AMGを語るのも適切ではない。これほどの魔性を秘めながらフールプルーフに扱いきれるところがメルセデスでもある。つまり500psを積んでも、なおまだ「エンジンよりシャシーが速い」の鉄則が生きているのだ。
 それを承知のうえで、エンジンを単なる縁の下の「装置」から陽の当たる場所に出そうとAMGが工夫しているのも微笑ましい。たとえばコンプレッサーをこれ見よがしに露出させたり、エンジンを組んだ職工の署名を入れたり、タダ者ではないことの主張がそこここに散見される。そのせいだろうか単に超絶トルクのなせる業だろうか、あれほど有効なESPを備えていてさえ、コーナーで荒く踏むと踏ん張りきれず、一瞬テールが明後日の方角に流れ出す。このあたりがメルセデス流暴れん坊の限界なのかもしれない。
 
  8ポッドキャリパーの強化ブレーキや専用チューンのアクティブ・ボディ・コントロール、ステアリングシフト等々、エンジン以外にも見どころが多いCL55AMG。外観は控えめなスポイラーやデュアルテールのマフラーなどで、さりげなく存在感を主張。圧倒的な動力性能は、大柄なボディ(全長×全幅×全高=5015×1855×1400mm)を意識させない。価格は17,600,000円。
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Type:8 Cylinders in Vee SOHC 24valves+Super Charger
Engine management:ME SYSTEM
Capacity:5438cc
Bore×Stroke:97.0×92.0mm
Compression ratio:9.0:1
Max output:500ps(368kW)/6100rpm
Max torque:71.4kg-m(700Nm)/2750-4000rpm
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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