
コンプリートカー・ビジネスに乗り出したのが2001年、というからメルセデス・スペシャリストとしては、新興勢力といえるMKB。
しかし、そのバックグラウンドは名うてのブランドと比較しても遜色がない。
またチューニングやモディファイに対する姿勢は、いまどき珍しいほど本格派を指向。
それもそのハズ、ターゲットはAMG以上のスポーツ性をメルセデスに求めるエクスクルーシブな人々なのだ。
リポート|小野泰治|T.Ono(本誌) フォト|日本エムカーベー |
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恥を承知で白状すれば、今回取材するまでMKBというチューナーは完全なノーマークだった。そして、チューニングを取り巻く環境が厳しくなりつつある中、コンプリートカー・ビジネスに乗り出したのが'01年と聞いて「何をいまさら」と思った。特に日本におけるメルセデス・チューンは、AMGやブラバス、ロリンザーなど伝統的ブランドが圧倒的強みを発揮しているだけに、失礼ながら最初のうちはある種の`胡散臭さaすら感じていた。
しかし、それは勝手な思い込みと不勉強が作り上げたイメージに過ぎなかった。MKBは、いわゆる`ポっと出aの新興チューナーではない。むしろ、エンジンに関しては豊富なノウハウを持つ、文字通りのスペシャリストだったのだ。また、現在に至るまでのバックグラウンドも非常に興味深い。
同社の歴史は'89年に始まる。エルハルト・メルヒャーとヨー・コンラッドがドイツ、ブルグシュタールに興したエンジン製造所がそのルーツ。社名はメルヒャーのM、コンラッドのK、そしてブルグシュタールのBを取ってMKBとされた。ここで、メルヒャーの名前に反応したアナタは、たぶん自他共に認めるメルセデス好きだろう。メルヒャーのMは、AMGのMをも意味するからだ。つまり、MKBはAMGの創立メンバーが興した会社なのである。ちなみに、ブルグシュタールは黎明期のAMGがファクトリーを構えていた場所であり、MKBも全く同じ場所で産声を上げている。
当初は、ウルトラライトプレーン用エンジンの開発・生産を行なっていたMKBだが、メルヒャーはエンジニアとしての研究活動に打ち込むため'91年、経営権を現MKB社長のパナジオティス・アブラミディスに譲渡。メルヒャーはテクニカル・アドバイザーというポジションに退く。一方、アブラミディスは、AMGのレース部門で長年チーフエンジニアを務めた経歴を活かし、より高性能なメルセデス・エンジンの開発を開始。以降、MKBが手掛けたユニットは数多くのメルセデス・チューナーに供給され、同時にスポーツ指向の強いメルセデス・ユーザーの支持を集めた。
そして2000年、MKBは航空機エンジニアという経歴を持つパナジオティスの弟、パブロス・アブラミディスが経営に参画。エンジンチューナーからコンプリートカー・コンストラクターへと大きく舵を切ることになる。
とまぁ、ここまでおつき合いいただければ、MKBという会社がb由緒正しきaメルセデス・スペシャリストであることは誰の目にも明らかなハズ。で、本来なら彼らの最新作を現地試乗、となるところなのだが、取材がエッセン・ショーの直前ということもあって残念ながら今回は事実上の「おあずけ」になってしまった。
だが、そのスペックを眺めるだけでもMKBが誇る技術の一端は理解できる。まず、マイナーチェンジ版SクラスをベースとしたS62/8Rだが、このクルマは5リッターのV8をベースに排気量を実に6.2リッターにまで拡大したパワーユニットがウリ。3バルブヘッドを採用するメルセデスのV8としては、ブラバスを凌ぎ最大級の排気量となるのだ。それを実現するのは、アルミ製スリーブをシリンダーに埋め込むMKB・Gライナーテックという彼らの特許技術。ボア×ストロークは、100×97.1mmで、ノーマル比でそれぞれ3mmと13.1mmの拡大となる。
そして、この排気量拡大に合わせてカムシャフトやバブルスプリング、吸排気系やECUはMKBオリジナルの専用スペックにアップグレード。結果、パワー&トルクは、445ps(327kW)/5800rpm&64.8kg-m(635Nm)/4290rpmをマークする(ノーマルは306ps&46.9kg-m)。また、5速ATもアウトプットの増大に合わせて強化。エクスクルーシブなコンプリートカーに相応しい耐久性、マナーを確保しているという。
この他、エンジン以外の部分では車高を30mm下げるロワリングキットや前後19インチのタイヤでフットワークを強化。内外装もオリジナルのエアロやカーボンパネル、専用メーターなどでコーディネートし、コンプリートカーとしての独自性を主張。数あるチューンドSクラスの中でも、車格に見合った適度なスポーツ性を演出することに成功している。
一方、もう1台の取材車、SL55/8KはSL55AMGがベース。こちらは、排気量こそノーマルと同じだが、オリジナルのハイカムやコンロッド、ECU、エキゾーストシステムなどで武装する点は6.2リッターと同じ。スーパーチャージャーもビッグプーリーの採用などで過給圧アップが図られる。その結果、アウトプットは580ps(426kW)/6100rpm&81.6kg-m(800Nm)/3200rpmを実現。ATや駆動系も彼らの流儀に倣って当然のごとく強化されている。
このように、エンジンだけクローズアップしても非常に魅力的な内容を持つMKBのコンプリートカー。冒頭では、ずいぶんと失礼なことを書いてしまったが、機会があれば是非とも実際のパフォーマンスを体験してみたいと思う。
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| ボア×ストロークを、100×97.1mmへと拡大。6101ccの排気量を得ているV8ユニット。これは、ブラバスの6.1に対して67ccのプラスとなる。エンジンルームの眺めは、ヘッドカバーがカーボン仕様になっていること程度。パフォーマンスデータだが、0〜100km/h加速が5.2秒。最高速度は300km/hに達する。 |
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| インテリアは、ノーマルのウッドに代えてシルバーのカーボンパネルに。スポーティなイメージを強調する。ロゴ入りのメーターは、スピードが320km/hスケールになる。 |
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| 適度にスポーツ性を強調するエアロは、前後バンパースポイラーとサイドスカート、トランクリップで構成。リアバンパースポイラーは、ディフューザー風デザインが特徴だ。「MKB
Alpha III」と名付けられたホイールは、フロント8.5J、リア10Jの19インチ。 |
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| SK55AMGをベースに、本格的なエンジンチューンを施したSL55/8K。ノーマルでも絶対性能はあり余る程だが、パフォーマンスは強烈のひと言。0〜100km/h加速は4.2秒、最高速度は325km/h以上(!)という。 |
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5.5リッターユニットは、MKB自慢の専用カム、コンロッド、バルブスプリングなどで強化。スーパーチャージャーもビッグプーリーやチューンドECUなどで最大過給圧をアップさせている。ヘッドカバーはこちらもカーボン。 |
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| シートは、表皮のみバックレスト上部にプレートが入るオリジナルのレザー仕様。センターコンソールには、シルバータイプのリアルカーボンパネルをセットする。 |
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バンパースポイラー、サイドシル、トランクリップというエアロの構成は、Sと共通。リアのディフューザー風造形は、MKBエアロ共通のモチーフだ。ホイールは「Alpha
III」でフロント10J、リア11Jの20インチ。 |
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