メルセデスのトップレンジを価格で見ると、CLはその頂点に君臨している。
しかもそのAMG版とあらば、可能な限りの贅と技術の粋が込められたことは想像に難くない。
だが、それだけでは語り尽くせない何かが、このクルマには存在していた。

リポート|斎藤 聡|S.Saito フォト|望月浩彦|H.Mochizuki

 ABC(アクティブボディコントロール)をスポーツモードにしてESPを解除。しかる後に思い切りよくアクセルを踏み込む。直後、265/40R18サイズのポテンザRE050はいとも簡単に巨大なトルクにグリップを絡めとられ盛大にホイールスピン、テールを左右に振りながら豪快に加速を開始する。そして、コーナーで無造作にアクセルを踏み込めば、あっさりとリアが滑り出す。
 ムキ出しのパワーがドライバーのコントロールを振りほどき、あっさりと危うい一線を踏み超える。ナッパレザーとチェストウッドを多用したインテリアが醸し出す紳士然としたムードの裏に、そんな凶暴性が潜む。そして、これこそがCL55AMGの本領だ。
 CL500の5リッターV8を、ストロークアップにより5.5リッターへと拡大。さらにスーパーチャージャー装着で500psと71.4kg-mを発揮するエンジン。そして、アグレッシブなエクステリアと豪華なインテリアは、メルセデスのアドバンスド・スポーツの頂点に君臨するAMGのお約束だ。
 メルセデスといえばどこまでも理性的で、安全性重視のシャシーセッティングを採る。それは多くのドライバーにとっては歓迎すべきことかもしれないが、一部のスポーツカーファンにはもどかしくも感じられる。しかし、自動車メーカーの盟主を自認するメルセデスが、自らに課した禁をいまさら破るわけにはいかないだろう。
 それゆえのAMGなのだ。アドバンスド・スポーツにAMGを位置付けることで、ほかのメルセデスと一線を隔て、いまにもドライバーのコントロールを振りほどこうとするかのような凶暴さを秘めた、「危険な匂い」を持つモデルをリリースしているのだ。
 ABCをノーマルに、ESPをオンにすれば、CL55は至ってジェントルだ。多少ラフなアクセル操作をしても、一瞬巨大なパワーとトルクの片鱗を見せはするが、すぐさま電子制御デバイスによってベールの裏に隠されてしまう。深くアクセルを踏み込むと迫力のある加速を見せるが、それでもどこか安心感に包まれているのだ。V8の低く野太いエキゾーストサウンドや、スーパーチャージャーならではのリニアなレスポンス、そして怒涛のトルクだけでもしばらくは楽しんでいられるが――。
 そして、しばらく経って加速に慣れた頃、きっとあなたは禁断のスイッチに手をかけることになる。サスペンションのセッティングは多少引き締められているとはいえ、基本的な味付けはCL500と変わらないから、多少クルマの動きはルーズで曖昧なところがある。とくにリアを滑らせてカウンターを当てるような運転をするとき、それが顕著だ。個人的にはもっと正確さを重視したハンドリングが好みだが、見方を変えるとルーズさは許容度であり、曖昧さは懐の深さでもある。そこまでAMGが計算しているかどうかは判らないが、ある一線を踏み出してもすぐさま破綻は来さない。
 CL55AMGは、エレガントなグランツアラーの表情に獰猛な裏の顔を秘めた、すこぶる刺激的なラグジャリークーペだった。


  Mercedes-Benz CL55 AMG
■全長/全幅/全高(mm)
5015/1855/1400
■ホイールベース(mm)
2885
■トレッド(前/後)(mm)
1580/1580
■車両重量(kg)
2010
■エンジン種類
113M55/V8SOHC18V+S/C
■排気量(cc)
5438
■最高出力(ps(kW)/rpm)
500(368)/6100
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
71.4(700)/2750-4000
■トランスミッション
5AT
■サスペンション(F:R)
4リンク/エア:
マルチリンク/エア
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤ(ホイール)
F:245/45R18(8.5J)
R:265/40R18(9J)
■東京標準現金価格
\17,600,000
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。

 
フロントスポイラー、アルミホイールのデザインを一新。センターピラーのないピラーレス構造を採るが、ハードなドライビングに臨んでもボディの剛性感は極めて高い。
  S55やSL55にも積まれる5.5リッターV8スーパーチャージャーは、500ps/6100rpm、71.4kg-m/2750〜4000rpmというスペック。エキゾーストサウンドは重低音の効いたアメリカンなもの。
  ツインスポーク・アルミホイールの中には、8ピストン・キャリパーにドリルドローターを持つ巨大なブレーキが覗く。ローター径はフロント360mm、リア330mm。システムはSL55 AMG譲り。
明るい色調のチェストナット・ウッドパネルがふんだんにあしらわれたインテリア。最上級のナッパ・レザーは、シートはもちろんダッシュボード表面にも用いられる。
5ATはファイナルも含め、V12系用のギアをチョイス。通常のティップシフトに加え、ステアリング裏のスイッチでもシフト操作が行なえる「AMGステアリングシフト」を装備。



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