いまやほぼすべてのメーカー(グループ)がカテゴリーに参入。
随一の激戦区となっているコンパクトカー市場。
今年も新型VWポロを筆頭に、ミニ、マーチ、デミオ、C3などなど……多士済々、個性的なモデルが顔を揃えた。
ここでは、そんなコンパクトカーの2002年を振り返る。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|郡大二郎|D.Kori
 おなかの贅肉がすっきり取れたら人生リセットで、また青春が帰ってくるような気がしたこと、たぶん誰でもあるはずだ。それをクルマに当てはめれば、コンパクトカーということになる。実際乗るクルマを小さくしただけで相対的に街や道路が広く感じられるのは本当で、だからこそ「これからはコンパクトカーが主役」なのだ。
 それは最近のクルマ界の動きにも如実に表れている。2002年のニューモデルだけ振り返ってみても、こんなに! と今さら驚くほどの力作ぞろいだ。それ以前からの強豪も含めると、洋の東西を問わず「よりどりみどり」のワンダーランド状態。それも互いにちっとも似ていない意地の張り合いでは、大きなクラスよりずっと熱い。すなわち、どのメーカーも、コンパクトカーの重要性をますます強く認識しているという証明だ。
 それは、ただ数が売れるから大切というだけではなく、優れたコンパクトカーを作れるかどうかが、思想面でも企業の値打ちを大きく左右するという意識があるからだ。次世代をきちんと見通しているかどうか、中・長期的には新エネルギー車の開発ができるかどうかで判断され、今の問題としては、優秀なコンパクトカーを作れるかどうかで値踏みされるわけだ。
 そんな中でコンパクトカーといえども、ただ安くて買いやすいだけのものではなくなった。最近、特に2002年に注目されたどの新作コンパクトカーも、しっかりしたボディの剛性感、高水準なサスペンション性能、充実した快適装備、従来のクラスの垣根を越えた安全性などを、ほとんどすべて備えている。スペースユーティリティも確実に進化を続けた結果、もはや「小さな大型」と呼びたいほどの境地に達している。
 それは同時に、消費者に対する鋭い問い掛けでもある。「これからのモータリゼーションを、あなたはどう考えているのか」と、喉元に突きつけられた匕あい首くちが新しいコンパクトカーの群なのだ。日本をはじめアジア各国の都市部では、交通の過密状態も飽和点に達している。ヨーロッパでも、簡単に再開発しにくい旧市街など、もはや限界に近い。そんな状況を理解してコンパクトカーを使うことが、ひいては自由なモータリゼーションを守ることであり、知的水準の高さを示すと思われる時代が、もうそこまで来ている。

 2002年を彩った多くのコンパクトカーが、それぞれ濃い内容を誇るのも、そこにこそポイントがある。その流れを一気に加速したものとして、かつてAクラスやスマートを打ち出したメルセデス、大衆車ゴルフやカローラを際限なく高級化してきたVWやトヨタの功績は大きい。これらのコンパクトカーは、これだけでほとんど暮らしの全シーンをカバーできるほどの万能性を誇るだけでなく、もっと大きい(したがって高級と思われる)クルマのユーザーにとっても、気軽なスーパーサブとして、予想を上回る魅力を発揮してくれるはずだ。
 そこで今回は、2002年に日本国内デビューを果たした新型コンパクトカーの中から、注目株を何台かピックアップしてみよう。
 まず本誌の読者なら、優秀なコンパクトカーと言われてすぐ連想するのが新型VWポロに違いない。すでに何回も誌面で活躍しているから、今さら多言は要すまい。どの角度から評価しても納得できる優等生だ。その上ブランドイメージに対する信頼感もあるから、友人に薦めても恨まれる心配はない。
 新型で特筆すべきは、旧型より20cm近くも全長を延ばし、ほぼゴルフIIに匹敵するサイズにまで成長した結果、格段に室内(特に後席)が広くなったことと、静かになったことだ。それまで小型VW系につきものだった、アクセルを深く踏んだ時のゴワ〜ッという唸りが軽くなるだけで、こんなに全体の質感が向上するとは予想以上だった。
 この重厚さを演出するのが、ほとんど過剰品質と呼びたいほどの剛性感。これだけのために数十万円余分に払っても惜しくないと思わせるものはある。ただし、そのために少し重量も嵩んで、発進停止の多い日本では立ち上がりの加速に対する不満の声もあった。そこで2003年モデルでは最終減速比を4.361から4.380へと低めに変更した。数字で見るとわずかな違い(4速100km/hで100rpmだけ上がる)だが、日常的な範囲でのきびきび感が増したのは事実。とりあえずこれで現状での完成形と言える。
 本国でのデビューからこんなに早く日本でもC3を発売するとは、シトロエン・ジャポンもいよいよ本気らしい。新作C3は小洒落たパーソナルカーとして、あるいは若いファミリー向けに推薦したいファッショナブル・スニーカーだ。率直に言って、第一印象は良くない。販売店の近所をひと回りするだけでは、けっして長所が見えないクルマだ。しかし、しばらく真剣に乗ると、あたかも犬がなつくように、急にぴったり波長が合ってしまうのがわかる。
 そこで感心するのは、やはり「乗用車」の本質を底の底まで理解し抜いた設計だということ。大きなうねりなど、サイズを忘れるほどフラットに乗り切る。新世代PSAらしくリアにトーションビームを採用し、昔のフランス系のようなフニャ〜ッとしたロール感は薄れたが、どこでもベタッと貼り付いたような接地感には、思わずニヤリとさせられる。
 さりとて、室内の仕立てなどエキセントリックすぎるわけでもなく、ごく普通に使える。4速ATにティプトロニックが付くところなど、むしろプジョーより贅沢だ。ダッシュボードの仕上げなどもう一歩の部分もあるが、そういう部分を重視する価値観の持ち主なら、最初からVWかトヨタを選んだ方が無難だろう。あと、あえてフロントをゆったり取るように配置した関係で、ライバルにくらべると後席スペースが不足気味。そこで冒頭に書いたようなお薦めの対象になる。
 
撮影車は2003年モデルで、ファイナル比変更など細部のリファインを受けている。ボディサイズは4ドアモデルで全長3890×全幅1665×全高1480mm。搭載するエンジンは1.4リッター直4DOHC16Vで最高出力75ps/5000rpm、最大トルク12.8kg-m/3800rpmを発揮する。日本では4速AT仕様のみが用意され、価格は4ドア1,980,000円、2ドア1,780,000円となる。(問い合わせ先:フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン
あらゆるシーンに適合するバーサタイル(万能性)を追求したというシトロエンの新世代コンパクト。ボディサイズは全長3850×全幅1670×全高1540mm。エンジンは直4SOHC16Vを搭載。1.4リッターと1.6リッターの2タイプが用意され、1.4リッターでは最高出力75ps/5400rpm、最大トルク12.5kg-m/3300 rpmのスペックとなる。価格は1.4が1,820,000円、1.6が1,998,000円。撮影車は1.4リッターのスタイルパッケージ装着車。(問い合わせ先:シトロエン・ジャポン
 
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