今年初頭のデトロイト・ショーでプロトタイプが公開、ボルボ初の本格SUVとして市販が待たれていたXC90の国際試乗会が、世界最大のSUVマーケット、アメリカのサンフランシスコを拠点に開催された。
その充実した内容は本文に譲るが、いかにもボルボらしい質実剛健、乗員すべてに優しい作り込みがポイントといえそうだ。

リポート|吉田 匠|T.Yoshida フォト|ボルボ・カーズ・ジャパン

 不安定な株価が象徴するアメリカ経済の先行き不安などなんのその、アメリカ市場を最大のマーケットとするプレミアムなSUVが、世界中のメーカーから続々と登場している。
 特に、それに熱心なのがヨーロッパのメーカーで、先頃のパリ・サロンでもVWのトゥアレグ、道を選ばぬスポーツカーといえるポルシェ・カイエンが正式デビューを果たしたが、これらに先駆けて、今年のデトロイト・ショーでプロトタイプが公開されたもうひとつのヨーロッパ製ブランニューSUVが、スウェーデン生まれのボルボXC90である。
 クロスカントリーの略号であるXCを車名に使ったボルボには他にV70XCがあるが、これはステーションワゴンV70の車高を上げてオフロードも走行可能としたモデル。ところがXC90はそれより本格的なSUVで、プラットフォームの基本こそS80系のものを用いているが、その上に構築されるノーズからテールまでボルボらしいデザインで統一されたボディは、XC90専用のものである。
 もちろん、その内側に収まるメカニズムの多くも、ボルボの様々なモデルから流用したものだ。
 エンジンはS60、V70系の2.4リッターを2.5リッターとした5気筒ライトプレッシャーターボと、S80系の2.8リッターを2.9リッターとした6気筒ツインターボの2種類のガソリン、それに2.4リッター5気筒ディーゼルターボの3種類。トランスミッションは5段または4段のマニュアルモード付きギアトロニックATのみで、MTの設定はない。
 駆動系はすでにS60などに採用されている電子制御AWDと呼ばれるシステムで、前後アクスル間の速度差によって作動する油圧ポンプと湿式マルチディスクカップリング、電子制御バルブから成り、通常の舗装路では駆動力の95%を前輪に送りほぼFFに近い走りをする。その一方で、路面状況の変化などに応じて前輪95〜35%、後輪5〜65%の範囲で、前後トルク配分を瞬時に変化させる。
 それに加えて、「TRACS」と呼ばれるトラクションコントロールが左右輪間のトルク配分を適正化するから、あらゆる路面状況で常に必要なだけのトラクションが得られるという。
 サスペンションはフロントがストラット、リアがマルチリンクで、リアのダンパーとスプリングはサブフレームに取り付けられ、路面からの振動をボディに伝えない。
 一方、車高の高いSUVにありがちな転倒の危険性を避けるために、XC90には様々な工夫が見られるが、そのひとつがRSC(ロール・スタビリティ・コントロール)と呼ばれる安定性向上システムだ。これは、ジャイロセンサーからのデータによってクルマが最終的にどこまで傾くかを即座に計算、転倒の危険が大きいと判断したときには、電子制御AWDに連動したDSTCなるアンチスキッドシステムを作動させて必要なホイールにブレーキを掛け、エンジンのトルクを絞るなどして、クルマの安定を保つものである。
 さらに、万一クルマが転倒してしまった場合を想定して、ルーフは通常のスチールの4〜5倍の強度を持つホウ素鋼で強化されているというのも、実にボルボらしい話だ。
 もうひとつ、XC90がライバルに対して特長的なのは、キャビンを3列シートの7人乗りとしていることだ。しかもその3列目シートは子供専用ではなく、2列目を300mm範囲でスライド可能にするなどして、大人も座れるレッグルームを確保している。
 全長4.8m×全幅1.9m×全高1.74mというボディサイズはライバルと比べて特に大きいわけではないが、それにもかかわらず3列シートが実現できたのは、直列エンジン横置き配置によってキャビンフォワードなデザインを採用できたからだとボルボは力説している。ちなみに2860mmのホイールベースもS80より長い。
 さて、試乗会が開かれたのは、世界最大のSUVマーケットたる北米はサンフランシスコとその近郊で、試乗車はガソリンエンジン搭載の2.5TとT6の2モデルだった。
 まずは2.5リッターライトプレッシャーターボ5気筒、208psの2.5Tでサンフランシスコを出発、そこから北上してワインの産地として日本でも名を知られたソノマバレーを目指す。
 そこで印象に残ったのは、様々な感触が乗用車的なことで、乗り心地がSUVとしてはフラットな部類であることにまずは好印象を覚える。ドライバーとして好ましく感じたのはステアリングがセダン並みに正確なことで、郊外のワインディングを飛ばしてもSUVにありがちな曖昧な感触がなく、自信もってクルマをコントロールできる。しかも、アンダーステアが適度なレベルに抑えられているのもいい。
 2.9リッター6気筒ツインターボ、268psのT6に乗り移ると、2.5Tでも不満はなかったパフォーマンスが明らかに力強くなったのを実感する一方で、コーナーが連続するような部分では、鼻が若干重くなったのが感じられる。しかし、だからといってハンドリングに不具合があるわけではないから、望むスピードに達するまでの時間は短ければ短い方が好ましいという感覚の持ち主は、T6を選べばいい。
 つまりXC90は、ファミリーカーとしての要素を存分に備えた、いかにもボルボらしいSUVに思えたのだった。ただし、日本への導入は、来年の6月頃までオアズケになりそうだという。
 
  新世代ボルボよろしくワイドショルダー、V字ボンネットといったデザインキーを採用。ワゴンのV70に対しテールゲートを寝かせるなどしてSUVらしさを強調する。なお、このテールゲートは上下7:3の分割開閉式。
エンジンは、従来型からそれぞれ排気量アップされた2.9リッター直6ツインターボ(左)と2.5リッター直5ライトプレッシャーターボの2基で、ともにフロントに横置きして搭載。ミッションはT-6に4AT、2.5Tに5ATが組み合わされる。
  サスペンションは、フロントがストラットでリアがマルチリンク。安全性はクラストップレベルで、3列すべてのシート側面に頭部側面衝撃吸収エアバッグが装備されるほか、万一に備え、ルーフは特殊スチールによって強化されている。
  スリーサイズは全長4798×全幅1898×全高1784mmと、SUVでいえばクラス標準。またホイールベースはS80よりも69mm長い2859mmとし、3列シートの7人乗りを可能に。
新開発となるRSC(ロール・スタビリティ・コントロール)。横転の危険性が認められると横滑り防止システムDSTCが作動し、必要なホイールにブレーキをかけ、エンジンのトルクを絞って車両を安定方向へと導く。
2列目シートは4:2:4で分割、それぞれ最大で約300mmのスライドが可能となり、3列目シートの利便性を高めている。なお、2列シートの5人乗り仕様もチョイス可能。
  高めのヒップポイントに合わせ、やや上向きに傾斜して設置されたメーターパネルやコントロールスイッチ類。ただし、ひとつひとつは見慣れたボルボのそれであり、クリーンで暖かみのある雰囲気は相変わらず。
  VOLVO XC90
  2.5T T-6
■全長/全幅/全高(mm)
4798/1898/1784
■ホイールベース(mm)
2859
■トレッド(前/後)(mm)
1634/1634
■車両重量(kg)
1982
2046
■エンジン種類
B5254T2/
直5DOHC20V
+ターボ
B6294T/
直6DOHC24V
+ツインターボ
■排気量(cc)
2521
2922
■最高出力(ps(kW)/rpm)
208(156)/5000
268(201)/5100
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
32.5(320)/
1500-4500
38.7(380)/
1800-5000
■トランスミッション
5AT
4AT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
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