「技術による前進」を社是とするアウディの送り出す新型は、いつもニュースに溢れている。
'94年、アウディは、アルミでスペースフレームを構築、
圧倒的な軽さを実現したA8を発表、
新たな高級車像というものを打ち立てた。
先頃発表された2代目は、この先進性を受け継ぎ、さらに先鋭化することによって、21世紀の高級車のあるべき姿を語ろうとしているようだ。

リポート|小倉正樹|M.Ogura(本誌) フォト|アウディ・ジャパン

 '94年にデビュー、アルミを使ったボディ構造で、当時のDセグメントでは考えられなかった軽量ボディを実現し、それがもたらす高性能でたちまち確固たる地位を築いたアウディA8。同社得意のクワトロ・システムを備えることもあって、従来のこのセグメントにはない走行感覚で、メルセデスのSクラスとBMWの7シリーズがほぼ独占していた牙城の一角を切り崩した。
 アウディは高級車に長い歴史を持つわけではない。どちらかといえば、新参だ。だが、逆にそれが、歴史を持ち、ある種の凝り固まった概念で作られた高級車に飽きたらぬ人々を惹き付けた。エアロダイナミクスに裏付けられた流麗なスタイリングとアルミボディゆえの好燃費、そしてアルミそのもののリサイクル性など、いわゆるグリーン性能が高いということで、特にインテリ層に好評だった。発売開始からおよそ8年間で、10万5000台がユーザーの手に渡ったと聞けば、成功したモデルといわざるを得ない。
 2代目A8は、こうした先代の残した実績にアウディが自信を持ち、21世紀の高級車にふさわしい諸性能を数々の電子装備で実現したものといえる。
 たとえば、その最大の特徴といえるASF(アウディ・スペース・フレーム)は、A2開発を経てさらに進化し、ボディを構成する部品は334点だったものを、267点に減少。さらにMIG溶接やレーザー溶接、アウディとしては初めてレーザー・ハイブリッド溶接もそれぞれ適所に使うことで、ボディのねじれ剛性を先代モデルよりも約60%向上させている。ボディ構造自体の重量はわずか215kgしかなく、車両重量も3.7クワトロで1770kgにすぎない。全長5.05m、全幅1.89m、全高1.44mの超豪華装備のビッグサルーンが、この重量で収まっているというのはやはり驚くべきことといえるのだ。
 フロント=4リンク、リア=トラペゾイタルという形式こそ踏襲するものの、サスペンションは全面的に見直されている。各部の軽量化はもちろんだが、新たに無段階可変ダンピング・コントロール機能付き4輪エアサスペンション――`アダプティブ・エアサスペンションaを採用したのが、最大のニュース。3つの速度センサー、4輪それぞれの上下運動センサーほか、操舵角やスロットル/ブレーキペダル・ポジションなどのセンサーシグナルが、アダプティブ・エアサスペンションの中央制御コントロールユニットに送られ、この制御ユニットは数ミリ秒の反応速度でショックアブソーバーの減衰力を調整する。
 また、車高やショックアブソーバーの減衰力が異なる4つのドライビングモード(オートマチック、ダイナミック、コンフォート、リフト)を用意し、選択肢に幅を加えてもいる。
 ダイナミックモードの場合は、静止状態でも、最低地上高はスタンダードより20mm低い100mmとなる。エアサスペンションもハードスプリング/高減衰力モードとなり、高いハンドリング性能をもたらす。ある一定以上の時間と速度条件を満たすと車高が変わるようになっていて、120km/h以上の速度で2分以上走行すると、車高は5mm下がり、逆に2分以上70km/h以下で走行するか、35km/h未満に下がると、車高が上がる。このアダプティブ・エアサスペンションは、スポーツサスも設定されている。
 エンジンは当面、3.7リッターと4.2リッターのガソリン、V8のみ。注目のW12はもう少し待たされることになる。とはいえ、パフォーマンス的には4.2リッターはもちろん、3.7リッターでも十分なものを持つ。基本的には先代からのキャリーオーバーとなるこのV8、今回のフルモデルチェンジで、3.7リッターは20psプラスの280ps、4.2リッターは25psプラスの335psへとパワーアップ。気筒あたり5バルブのマルチバルブレイアウト、アジャスタブル・インレット・カムシャフトなど、従来から持つ機構に、可変インテーク・マニホールドを加えている。
 さらに、マグネシウムやアルミ、樹脂コンポーネンツによる軽量構造で、エンジン重量を190kg以下とし、全長もわずか504mmのコンパクトな設計であることから、相変わらず技術レベルのきわめて高いエンジンといえて、キャリーオーバーでもなんら問題ないというところか。
 これらのV8に組み合わせられるトランスミッションは、新開発の6速AT。ティプトロニックでマニュアル的操作も可能なこのATは、DSP(ダイナミック・シフト・プログラム)とスポーツプログラムを有して、さらにスポーティな味わいを深めている。セレクターレバーを`Saのポジションに入れると、アクセルを急にオフにしてもシフトアップが防止され、コーナリング中のシフトアップも防止される、という。興味深いのは、オプションとしてではあるが、パドルシフトも用意されること。これがあると、この大型ラグジャリーサルーンを、まるで本物のスポーツカーのように楽しめてしまうということである。
 新しいA8にはまだまだ説明しなくてはならない新装備があるものの、この辺で走り始めることにしよう――。
 
  さらに進化したASFテクノロジーを、クーペを思わせるスタイリッシュなボディフォルムに包んで登場したニューA8。メルセデスとも、BMWとも違う、独自の高級車像をより鮮明に打ち出している。
  エンジンルームには、懐かしい眺めが帰ってきた。新型はエンジンカバーが廃止されて、インテークマニホールドやシリンダーヘッドカバーが露出するようになったのだ。さて、ここにW12が入るのはいつになるだろうか?
  エアサスペンション・ストラットには、エアサスペンション・ベローズが、無段階可変ツインチューブ・ショックアブソーバと同軸上にレイアウトされている。エア圧は最大16バールという。
  これはオプションのPAXシステム装着車。完全にパンクした場合でも、80km/h以下の速度で200kmまで走れるという。メートル表示のタイヤは、245/690R500Yというサイズ。
  全長5051×全幅1894×全高1444mmと、スリーサイズはほぼ先代から変わっていない。ただし、ホイールベースは2880mmから2994mmへと拡大されており、居住性は確実に向上。
 
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