スウェーデン車特集の締めくくりは、ボルボとサーブの比較試乗をお届けしよう。
世界的に見れば個性的なスウェーデン車ではあるが、ではヨーテボリ産とトロールハッタン産には、どんな違いがあるのだろうか。
最初はそれぞれのラインナップ中、もっともスポーティなモデル同士を比べてみた。

リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara フォト|郡大二郎|D.Kori
車両協力(S60 T-5)=東邦オート(株) ボルボ・カーズ幕張 TEL:0120-72-1090

 スカンジナビアの風という、この企画のアイキャッチを見て、その刺激や薫りを探ってみたくなった。両者はともに、ボルボはフォード・グループ、サーブはGMグループのプレミアムブランドとして位置付けられ、メルセデス・ベンツやBMWの価値に迫ろうとしている。だが、ドイツ勢と同じ価値を目指しては意味がない。そこには、まさにスカンジナビアの風が必要となるわけだ。
 ボルボは、開発テーマとして3つの「フォー・ライフ」を掲げている。そのなかで注目できるのは、人間優先の哲学に基づくテーマの柱「エンジョイ・ライフ」だ。ボルボは、ここで紹介するS60を4ドアスポーツクーペと呼ぶ。なるほど、カタチからして新しいスポーツサルーンの在り方を全身で示しているように思え、見るからに走りがエンジョイできそうだ。
 実際に、S60の走りはスポーツサルーンと呼ぶにふさわしい。とくに、T-5が積む2.3リッターの直列5気筒20バルブエンジンは、ハイプレッシャーターボを組み合わせ250psを発揮。5速ATの2速と3速を使い分けながら郊外の道を駆け抜ければ、刺激的な走りが存分に楽しめる。
 なにしろ、アクセルを踏み込めばレブリミットの6000rpmまで鋭い吹け上がりを示し、5気筒という特殊なシリンダーレイアウトから想像するアンバランスな印象が一切ない。しかも、2000rpmそこそこから充実したトルクを発揮するだけに、日常的な場面ではアクセルを深く踏み込まなくても力強さの余裕が得られる。
 サスペンションは、前後ともに接地感を完ぺきにバランスさせている。そのため、あたかも自分が旋回の中心に位置している実感が持てる。それだけに、山岳路に持ち込めば4輪が路面を確実につかんでいる感覚が伝わり、安心してペースを上げられるのだ。
 一方、サーブは伝統のデザインと先進のテクノロジーを盛り込んだ、独創的なクルマ造りを続けてきた。この9-5は、2002年モデルでビッグマイナーチェンジを実施。デザインの大きな変更はないが、フロントマスクやインスツルメントパネルはサーブの伝統を感じさせる。テクノロジーの進化も見逃せず、5速ATやエレクトロニック・スタビリティ・コントロールを全モデルが採用する。
 走りについては、ドライバーとクルマとの一体感を開発テーマにしている。実際に、高性能モデルになるほどこのテーマを実体験できる。やはり2.3リッターとなる直列4気筒16バルブにハイプレッシャーターボを組み合わせたエンジンを積み、250psを発揮するエアロ2.3TSは、意のままに刺激的な走りが楽しめる。
 しかも、ステアリング操作に対する応答性が鋭さを増していることも特徴だ。それでいて、同じGMグループに属すオペルから譲り受けたベクトラ用の高剛性プラットフォームの効果で、走りの信頼感は十分に確保している。
 つまり、ボルボにしろサーブにしろ、刺激的な走りが楽しめるだけではなく、実用性や信頼性を完ぺきに調和させている。そのあたりは、インテリアデザインからも感じ取れる。機能的かつ実用的であり、インスツルメントパネルには操作性が高い大きなスイッチ類が整然と並んでいる。
 それでいて素っ気なさを感じさせないのも両車の価値だ。スウェーデン家具のような本物志向のデザインで、人を優しく迎え入れるような雰囲気がある。まさに、風の刺激と薫り(強烈な走りと優しい雰囲気)を両立させていることこそ、スカンジナビアン・スポーティサルーンの本質なのだ。
 
  S60のインパネは基本的にV70と共通。ただし、ステアリングやシフトレバーはよりスポーティな造形となる。ATはマニュアル操作が可能なギアトロニック付き5AT。
  250psを発生するハイプレッシャーターボは低〜中回転域も犠牲にしない味付け。ほどよいバイブレーションとサウンドが、スポーティな雰囲気をより高めている。
9-5のハイプレッシャーターボも250psを発揮する。4気筒らしからぬ滑らかな加速フィールも特徴だ。特別注文で5MTが選べるあたりも、いかにもスポーティサルーンらしい。
  インパネはサーブの伝統を感じさせる独特の造形。エアログレードにはスポーティなメタルパネルが装着される。キーシリンダーは当然、センターコンソール上にある。
  ボルボの新しい個性となるサイドパネルの力強い造形、そしてサーブならではの前傾したフォルムなど、両車それぞれのキャラクターを前面に押し出したデザインを採用する。


  VOLVO S60 T-5 SAAB 9-5 Aero 2.3TS
■全長/全幅/全高(mm)
4575/1815/1430
4830/1795/1475
■ホイールベース(mm)
2715
2705
■車両重量(kg)
1540
1590
■エンジン種類
直5DOHC20V
+ターボ
直4DOHC16V
+ターボ
■排気量(cc)
2318
2290
■最高出力(ps(kW)/rpm)
250(184)/5200
250(184)/5300
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
33.7(330)/
2400〜5200
33.7(330)/1900
■トランスミッション
5AT
5AT
■サスペンション(F:R)
ストラット:マルチリンク
ストラット:マルチリンク
■タイヤ(ホイール)
215/55R16
(標準仕様)
225/45R17
■東京標準現金価格
\5,200,000
\5,300,000
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。



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