自然との暮らしを大切にするスウェーデン人は、クルマに乗っているときでさえ、それらと戯れることに悦びを感じる。
だから彼らはオープンカーが大好きだ。
では、ボルボとサーブのカブリオレはそんな価値をどのように表現しているのだろう。

リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara フォト|郡大二郎|D.Kori

 スウェーデンは、われわれが想像するより夏の陽射しが鮮やかであり、彩りも豊かな国だ。それだけに、街並みはドイツに似て整然としているものの、そこに吹く風はどこかサラッと軽いように感じる。そうした環境があるためか、ボルボもサーブも魅力的なカブリオレを用意している。
 もちろん、夏以外はすべて冬になるような国だ。カブリオレをそれらしく走らせる季節は限定されてしまう。だからこそ逆に、限られた季節を存分に楽しもうとするのだろう。事実、スウェーデンはドイツとともに欧州におけるカブリオレの主力市場となっている。
 ただし、ボルボとサーブの“らしさ”の演出はいささか異なる。ボルボは、C70カブリオレを上質なサルーンの延長に位置付けているように思える。オープントップボディにありがちな派手さを感じさせず、雰囲気は上品で清楚。周囲の目を意識することなしに、さり気なく乗りこなしながら、本人はカブリオレならではの心地よさが楽しめるといったクルマだ。
 走りも、ドライバーをいたずらに刺激しない。2.5リッターの20バルブDOHC直列5気筒エンジンは193psを発揮し、アクセルを踏み込むと十分な力強さが得られる。だが、それを引き出しながら走ろうとは思わない。アクセルを少しだけ踏んで、力強さを余裕として生かしながら走る。それがC70カブリオレの気分なのだ。
 ステアリング操作に対する応答性も穏やかであり、肩の力を抜いてリムに軽く手を添えながら、都会をスーッと走り抜けたくなるようなハンドリングである。そもそも、正直にいってボディ剛性がかなり緩いので、コーナーを攻める気にはならないのも事実だが……。
 それはさておき、C70カブリオレはトップを閉めたときの雰囲気を大切にしていることも特徴だ。トップの形状が無骨ではなく、最新モデルのボルボとは異なる柔らかなボディラインともマッチしている。外部からの透過音が大きめな点は気になるが、自ら発する騒音は最小限に抑えられているだけに“らしく”走れる環境であれば快適さが際立ってくる。
 サーブは、ボルボの穏やかさとは対極にあり、9-3エアロ2.0TSはスポーツモデルであることをカブリオレの特徴を生かしつつ表現。全身にまとうエアロパーツは、走りの刺激を象徴する。
 2.0リッターの16バルブDOHC直列4気筒にハイプレッシャーターボを組み合わせたエンジンは205psを発揮。低回転域から充実したトルクを立ち上げ、アクセルを踏み続けると高回転域のパワー感が快感を呼ぶ。ただ、路面状態によっては強めのトルクステアが発生する点は要注意だ。
 カブリオレとしては、ボディ剛性も高い方だ。プラットフォームは、もはや3世代前となるベクトラのそれを用いているが、その質実剛健さが走りのシッカリ感をもたらしている。引き締まったサスペンションに17インチタイヤを履いていても、スカットルシェイクの大きさは無視できないが、攻めの気分でコーナーを駆け抜けても走りの不満を感じない。
 それでいて、カブリオレらしさも存分に味わえる。9-3は、サーブ伝統の角度が立ったフロントウインドーを備えているだけに、開放感がきわめて高いからだ。
 だが、それも現行モデルの9-3までだ。本誌が発売される頃には、次期モデルの9-3が正式発表される。それは、フロントウインドーの傾斜が強くなり、もうひとつの特徴だったハッチバックボディにもなっていない。とはいうものの、だからこそ新時代のサーブらしさを感じるのだが……。
 ボルボはすでに、C70のスタイリングとは決別し、各モデルは独特の個性を際立たせている。スカンジナビアの風は、風向きは同じでも、その薫りを時代とともに変化させている、というわけだ。
 
  C70カブリオレは、先代S/V70と基本コンポーネンツを共用する。ロールオーバープロテクションシステムを備え、横転時には0.2秒でU字型のバーが飛び出し、乗員を守る。
  オーソドックスなインパネは、いま見ると逆に新鮮。オーディオはデンマークのダイナオーディオ社との共同開発品で、スピーカーは10個、アンプリファイヤーは400Wの実力。
  インテリアは明るい色調のベージュやグレーも用意され、コーディネイトの自由度はかなり高い。トップの開閉はフルオートで、約30秒で開閉することが可能。
  エアロ・カブリオレは2002年モデルから追加されたスポーティグレード。あのViggenと同じエアロパーツをまとい、ハイプレッシャーターボエンジンを積む。5MTも選べる。
  インパネのトリムはカーボン。夜間走行中に「ナイトパネル」スイッチを押せばスピードメーター以外の照明がダウンし、ドライバーの疲労を低減。元航空機メーカーらしい発想だ。
  バケットタイプのレザースポーツシートが標準装備。インテリアはブラック。トップの開閉はロックのみ外す必要があるが、あとはスイッチひとつでOK。所要時間は約25秒。


  VOLVO C70
CABRIOLET
SAAB 9-3 Aero
2.0TS CABRIOLET
■全長/全幅/全高(mm)
4715/1815/1400
4650/1710/1430
■ホイールベース(mm)
2665
2605
■車両重量(kg)
1660
1450
■エンジン種類
直5DOHC20V
+ターボ
直4DOHC16V
+ターボ
■排気量(cc)
2434
1984
■最高出力(ps(kW)/rpm)
193(142)/5100
205(151)/5750
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
27.5(270)/
1600〜5000
25.5(250)/1900
■トランスミッション
5AT
4AT
■サスペンション(F:R)
ストラット:
デルタリンク
ストラット:
トレーリングアーム
■タイヤ(ホイール)
225/50R16
215/45ZR17
■東京標準現金価格
\4,950,000
\5,300,000
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。



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