GERMANY:BMW ALPINA B10 V8S
ENGLAND:JAGUAR S-TYPE R


エボリューションか
レボリューションか


エボリューションズ・ワールドカップは宿命の対決からスタートする。
アルピナB10 V8S対ジャガーSタイプR。
フォーマルなサルーンを装いながら400ps級のチューンドV8をフロントに抱き、後輪を駆動するハイパフォーマーたち。
それぞれのスペックは一見似通っているがさて、そこにはどんな違いがあるのだろうか。

Sタイプが思わせるのはあの日の英国製スポーツ

ジャガーは、'90年代にボーダレス化のまっただ中に存在していた。フォード・グループの傘下に入り、ジャガーのブランドは守られたものの、開発に際して厳しい条件を突きつけられたことも事実だった。Sタイプは、リンカーンLSとの機能要素の共用化を促されたのだ。部品点数レベルでの共用化は数字として大きくなかったとはいえ、イギリス車らしさが薄らいだ感は否めない。
 BMWの開発担当取締役からフォードのプレミアム・オートモティブ・グループ代表に就任したウォルフガング・ライツレ博士(現在は退任し他社へ)も、ドイツ車らしさを知っていたからこそ、Sタイプが少しもイギリス車らしく思えなかったのかもしれない。
 ライツレ博士は、デビュー間もないSタイプをすぐに進化させることを指示。そして誕生したのが、現行モデルのマイナーチェンジ版Sタイプだ。つまり、Sタイプ自体がエボリューションモデルなのだ。サスペンションは、フロントを新開発しリアを設計変更。ボディはねじれ剛性を向上させ、エンジンも新たな仕様を投入した。
 とくに注目したいのは、エボリューションの中のエボリューションといえるSタイプRだ。そもそもRの称号は、XJRやXKRに与えられた「R」と同じ意味があり、ジャガーにとっては特別な価値を持つ。搭載するエンジンは、新たな仕様のひとつである4.2リッターのスーパーチャージャー付きV型8気筒だ。最高出力は406psに達し、ジャガー史上で最もパワフルなサルーンとなる。
 だが、パワーよりもアクセルに足を乗せた瞬間に猛然と立ち上がる、56.4kg-mのトルクの方が印象に残る。トルクが剥き出しになっている感があり、このあたりはエンジンの吹け上がりが良い意味で荒々しいイギリスの伝統的なスポーツカーを思わせる。
 ライツレ博士が指示した進化の方向とは、ボクの勝手な想像では少しばかり結果が異なる気もするが、ジャガーがドイツ車のようになったら元も子もない。実際にBMWとはまったく別物であり、エンジンだけを比べてもアルピナB10V8Sとの違いは明らかだ。
 B10V8Sが積む4.8リッターのV型8気筒エンジンも、SタイプRのエンジンに迫る52.0kg-mのトルクを獲得している。そのトルクはM5が積む5リッターエンジンが発揮する51.0kg-mにも勝る。圧倒的な強大さを誇るが、トルクがすべてではない。高回転域で、トルク感がパワー感へと変化するストーリー性を備えている。
 SタイプRが積むエンジンは、5800rpmあたりでレブリミッターに当たってしまうために、回転によってパワーを稼ぐ実感が得にくい。だからといって不満があるわけではなく、それはエボリューションモデルとしての「R」があえて狙った特性なのだ。
 その証拠に、過給をしていないジャガーのエンジンは高回転高出力型であり、Sタイプの新たな仕様として加わった4.2リッターのV型8気筒にしてもそうだ。6000回転で304psを発揮し、7000rpmに迫る勢いで鋭く吹け上がる。味わいは、完全に異質だ。エボリューションだからこそ、その価値を強調するのがイギリス車といえる。もちろん、SタイプRは穏やかに走らせれば上質なサルーンに変貌を遂げるのだが……。
 ならば、B10V8Sは540iに対してどんな位置付けなのかといえば、味わいは違うが異質というほどではない。BMWという大きな枠組みの中で、540iに対してM5とも少しだけ違う方向性で走りを際立たせたモデルがB10V8Sといえるだろう。
 その背景には、ドイツ車としての走りの不文律のような何かを感じずにはいられない。
 
BMW ALPINA B10 V8S

JAGUAR S-TYPE R
  XJR、XKRに続くジャガー「Rパフォーマンス」シリーズの第三弾がSタイプR。Sタイプのマイナーチェンジとともに登場した。エクステリアはメッシュグリルや前後スポイラーでノーマル系と差別化、インテリアの2トーンとなるシートパターンもR専用。そしていたるところに「R」エンブレムがちりばめられる。4.2リッターV8はスーパーチャージャーを組み合わせることで406ps/56.4kg-mを発生、SタイプRを、史上最速のジャガー・サルーンに仕立てている。ブレーキはこちらもブレンボ製。
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