VOLKSWAGEN
フォルクスワーゲン・ニュービートルRSi
New Beetle RSi

MINI ミニ・クーパーS
Cooper S

似て非なるちょっとカルトな2台のエボ

編集長「ニュービートルRSiとミニのクーパーSを比較してみようゼ」
副編Y「エッ。それはちょっとムリじゃないですか。だって……」
編集長「ウンニャ。きっと面白いものができるハズだ。やろう!」
副編Y「じゃあ、編集長、書いて下さいよ。サラサラッと」
編集長「ウッ。それはだな、最後の手段だよ、最後の……」。

リポート|小倉正樹|M.Ogura(本誌)  フォト|望月浩彦|H.Mochizuki

単純明快なニュービートルRSi
少し悲しいクーパーS


 そう、この2台の比較にはかなりムリがある。ニュービートルも新しいミニも、かつての名車を現代技術で蘇らせたリメイク版であることは間違いないが、RSiは限定200台のリミテッドバージョンであって、今後何万台が世に出されるか分からないクーパーSとは、ポジションからしてまったく違う。排気量は異なるし、そのお値段にも相当な開きがある。どだい、ムリな話なのである。
 で、実は、この企画は止めてしまおうとも考えていた。だが、今月の特集は“リアルホット・カーズ”。それに、だ。いい出した手前、一旦口に出した以上は、編集長たるもの……。ヨシッ。ここでは、RSiの購入費ぐらいはポンッと出せるようなリッチマンになったつもりで、アーダコーダと書いてみるとしよう。

 まず、氏素性で両車を比較してみよう――。
 ニュービートルRSiは、比較的企画意図が明確なクルマである。ご存知のように、ニュービートルは、アメリカと日本では大好評。しかし、選択眼の厳しいドイツ本国では販売が低調。で、主としてドイツ本国市場に向けてのカンフル剤として、かつてのフォルクスワーゲン・モータースポーツ、現在のフォルクスワーゲンレーシングが、ドイツ国内で開催中のワンメイク「ニュービートル・カップ」のカップカー・イメージそのまま、造り上げたのがこのクルマ。VWにはかねてから、BMWのMのような、インディビデュアルへのニーズを探る動きがあって、これはそのトライアルともいえる。その本命は、ほかでもない、巻頭でお届けしたゴルフR32だ。
 一方、ニュー・ミニのクーパーSは、ある意味、シリーズの最上級スポーツモデルであることを示すだけの、少し悲しいネーミングだ。開発段階においても、その昔、クーパーをクーパーたらしめたクーパーさんには、おそらくなんの縁もゆかりもないだろう。ドイツのメーカーであるBMWが、未開拓領域である小型FF車分野に、ミニの名を借りて進出しようとしたのは、マーケティング上はよく理解できる。しかし、メルセデス同様のフルライン・メーカーになろうとするなら、なぜメルセデスのAクラスのように、あるいはVWのフェートンのように、堂々とやらないのだろう。プレミアムブランドのプライドがそうさせたのか、それとも失敗した時のことを考えてしまったのか……。
 氏素性の面では、やはりニュービートルRSiの方がなにかとスッキリとしている。単純といえば単純だが、聞いて納得するに躊躇しない。なにしろ、フォルクスワーゲンが自分自身の昔の看板を引っ張り出しているのだから、文句のつけようがない。だが、クーパーSにはどこか違和感が伴う。

リッチマンなら迷わずこうしてしまう!

 デザイン面はどうか――。
 昇華の度合いでいえば、ニュービートルRSiに軍配があがる。どちらがオリジナルのデザインエッセンスをより多く残しているかをいえば、クーパーSの方だ。
 我々日本人が受け入れやすいのは、ニュービートルだろう。というのは、適当にアッサリとしているからだ。新しいミニは、どうしてもドイツ的な骨太さを感じてしまう。ダッシュボードのデザインは、オリジナルミニの面影をよく残すものの、グニグニとしてドイツ人が考える現代版ミニというニュアンスが強い。ニュービートルは、その観点でいえば、アメリカ人が考える現代版ビートルであって、ドイツ人の考える現代版kdfでないのがいい。
 運転席に座って、ノスタルジックな雰囲気に包まれるのは、クーパーS。比較的立ち、上下方向の短いフロントガラスは、切り取る絵が少ない分、フロントスクリーンという昔ながらの表現を思い出させてくれる。ニュービートルRSiは、ハッキリいってしまうと、フロントガラスの下端が遠い彼方にあって、まるでワンモーションフォルムのミニバン。これだけは興ざめ。RSiの場合、室内にはこれでもかというくらいアルミが散りばめられ、トリムにはカーボンパネルも使われるから、派手すぎて気恥ずかしいというか、大人げないという印象も強い。もっとも、その役割を考えるなら、致し方ないというころなのだが……。
 では、走りはどうなのか――。 アウトバーンをユッタリと走り、時に極太のトルクと6速ミッションを利してスサマジイばかりダッシュを味わうような、つまりグランドツーリングカーという性格が強いのは、ニュービートルRSiだ。といって、決してツイスティなコースに弱いというわけではない。ハード的にはまったく問題ないが、見切りの悪さが、ドライバーをその気にさせないというだけなのだ。たとえば、狭い2車線の首都高では、隣に大型トラックが並んだだけでビクビクしてしまうという有様だ。
 クーパーSの方は、すばしっこいシティラナバウトだ。その操縦性はFFらしさが残されている方で、アクセルオフで比較的簡単にリアが流れるセッティングは、見方によっては現代的ではないといわれるかもしれないが、流れ出してからのコントロールは容易であり、ウデに覚えがあればこれはこれで楽しめる。FFを完全に消化しきってないといわれればそれまでだが、ワザワザそうしたフシもあり、判断しかねるところだ。
 いずれにしても、性能面は十二分で、残るは乗り心地、コンフォート性はどうなのかというところだが、これはニュービートルRSiがクーパーSを上回る。大径、ロープロファイルのタイヤを装着するというのに、RSiは、シットリとした乗り味。気分を盛り上げるためのスパイスとして、加速時にはそれらしいエキゾーストノートを聞かせるが、普段は至って静かで、ロードノイズも少ない。新しいミニのクーパーSは、その新しさにもかかわらず、ボディ剛性が不足気味に感じられてしまうのと、ポンポンと跳ねる場面があって、せっかくの17インチを履きこなしていないこと、意外やロードノイズが大きいというところがマイナスポイント。スーパーチャージャー付きエンジンのサウンドも、なんだかなぁという感じだ。
 さて、結論だが、リッチマンであるリポーターとしては、両方ともガレージに納めてしまおうと考えている。目的地によって、2台を使い分けたいと思う。両方ともフォーマルにはとても使えそうもなく、遊び車を2台抱えてしまうことになるが、リッチマンだから、そんなこと全然構わない! 散々、アーダコーダいっといて、このオチはないと思うが、どちらかを打ち捨ててしまうには2台ともあまりに美味なのである。
 この結論は予定調和という気がしないでもない。そう、所詮、この2台の比較なんてムリな話なのだ……。
 

MINI Cooper S

ウデに覚えあれば残るFFのクセも楽しく思う
すばしっこいシティラナバウト


ONEやクーパーよりもちょっと遅れてやって来たミニのホット・バージョン。エンジンは1.6リッター4気筒に空冷インタークーラー付きのスーパーチャージャーを組み合わせたもので、163psと22.3kg-mを発生。6速MTを介して0→100km/h加速7.4秒、最高速218km/hというパフォーマンスを発揮する。外観ではボンネットのエアスクープやルーフエンドスポイラーなどが他モデルとの識別点。


■全長×全幅×全高=3655×1690×1425mm
■ホイールベース=2465mm
■車両重量=1180kg
■エンジン種類/排気量=直4SOHC8V+スーパーチャージャー/1598cc
■最高出力=163ps(120kW)/6000rpm
■最大トルク=22.3kg-m(219Nm)/4000rpm
■トランスミッション=6MT
■サスペンション(前/後)=ストラット/マルチリンク
■ブレーキ(前/後)=ディスク/ディスク
■タイヤサイズ(ホイール)=195/55R16(6.5J)
■東京標準現金価格=2,600,000円  (MINIコールセンター

VOLKSWAGEN New Beetle RSi

極太トルクを6速で味わう 贅沢なグランドツーリングカー

当時のVWモータースポーツがプロデュース、日本では45台が限定発売されたニュービートルRSi。ノーマル比で全長10mm、全幅80mmボリュームアップしたボディに、3.2リッターV6+4モーション・システムを搭載。ミッションも6速MTのみと、その成り立ちは結構スパルタン。実際、0→100km/h加速6.9秒、最高速225km/hと、カップカーばりのアピアランスに違わぬ高性能を内に秘める。


■全長×全幅×全高=4100×1810×1470mm
■ホイールベース=2515mm
■車両重量=1515kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V/3189cc
■最高出力=224ps(165kW)/6200rpm
■最大トルク=32.6kg-m(320Nm)/3000rpm
■トランスミッション=6MT
■サスペンション(前/後)=ストラット/ダブルウイッシュボーン
■ブレーキ(前/後)=Vディスク/ディスク
■タイヤサイズ(ホイール)=235/40R18(9J)
■取材協力=フォルクスワーゲングループジャパン
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