 
MERCEDES-BENZメルセデス・ベンツS500L
SL500

Aston Martinアストン・マーチンDB7ヴァンテージ
DB7 Vantage
先進と古典

トップエンドスポーツに何を求めるか?

ともに長い歴史を持ちつつも、片や常に時代をリードする形で進化を続け、片や静かに伝統を守り続けるというように、その製品造りに対するアプローチの仕方は好対照ともいえるメルセデスとアストン。
21世紀へ突入したいま、それを最も分かりやすく伝えてくるのは、この2台ではないだろうか。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura
フォト|望月浩彦|H.Mochizuki

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時代に合わせて変化するSLと孤塁を守るDB7

アストン・マーチンを買ったことがないから想像するだけだが、あの目線からはメルセデスSLは見えないのではないか。アストンに寄り添う心の波長はあくまで誇り高き少数派。存在も値打ちも広く知られすぎたSLでは、選ばれし者としての実感が湧かない。
だからアストンはあんなに有名なのに、実は誰も知らない。それも当然で、おそらく今、世界で最も寡作のメーカーに違いない。最近でこそ年産1500台の成長ぶりだが、数年前までは150台(1年間で)できるかどうかという水準だった。1914年にライオネル・マーチンが1号車を仕立ててから、89年間で合計1万5000台にも届いていないだろう。
ここへ来ての急激な増加は、新型ヴァンキッシュの売れ行きのせいだ。'87年にフォードが株の75%を取得して傘下に収めてから待つことしばし、やっとシナジー効果が顕れ出したといったところか。それは同時に企業文化の大変革をも意味している。アストン自身、ヴァンキッシュの発売に際して「これからはパネルも現場合わせでなく、一発でピタリと取り付けられる」と、生産方式のグレードアップを誇るほどだったのだから。
逆に言えば、ヴァンキッシュ以前の最後のアストンであるDB7こそ、本当の意味で孤高のマイノリティを象徴するクルマでもある。なにしろコヴェントリーのモーターパネル社でプレスと溶接を施し、クルーのロールス・ロイス社に運んで塗装し、ニューポート・パグネルのアストン工場で専従の熟練工が組み立てるという、イングランド巡りのような作り方だったのだ。その後、ロールス・ロイスが親会社BMWの方針でグッドウッドに移るなど環境は変わったが、独特の雰囲気が色濃く残るのもDB7。だからこそ、あえてヴァンキッシュでなくこちらを選ぶディープな支持者のために、今でも作り続けられているのだろう。もっとも'91年にコードネームNPX(後のDB7)計画が発足した当時は、これぞフォード資本による新時代到来と注目されたものだが。
そんなDB7に対面すると、新しくて古い。古くて新しい。イギリスの裕福な家庭に漂う独特の空気がここにもある。それをここまでスマートにまとめたイアン・カラムの冴えには、あらためて脱帽せざるを得ない。フォードからギアに出向し、トリノ・デザイン界の空気を胸いっぱいに吸った彼だが、イギリスに渡ってからの仕事は徹底してトラディショナルだ。ジェフ・ローソンの急逝('99年)を受けてジャガーに移籍してからも、常々「ブランドごとの伝統的なイメージを崩さないことが最優先」と言っている。だからDB7にも、あの名作DB2から3、4、5、6と受け継がれてきたモチーフの断絶がなく、それでいて現代に通用する引き締まりと滑らかさも十分に盛り込まれている。
この点で対照的なのがSLで、これまでも代替わりごとに大きくイメージを変え、世間を騒がせてきた。新技術も含めてメルセデスの近未来を暗示する役割もあり、それも含めて彼ら自身が自動車界のリーダーだという自負心の顕れでもあるだろう。アストンのように静かに孤塁を守る気など、さらさら持ち合わせていないらしい。
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いま、メルセデスの持てるテクノロジーが凝縮して詰め込まれたトップレンジの2シータースポーツ。最大のウリはやはりバリオルーフで、クーペとロードスターをスイッチひとつの16秒で使い分けられる。エンジンは従来からの5リッターV8だが、シャシー系は高度に電子制御化され、運動性能と安全性をハイレベルで両立する。
●全長×全幅×全高=4535×1830×1300mm
●ホイールベース=2560mm
●車両重量=1840kg
●エンジン種類/排気量=V8SOHC24V/4965cc
●最高出力=306ps(225kW)/5600rpm
●最大トルク=46.9kg-m(460Nm)/2700〜4250rpm
●トランスミッション=5AT
●サスペンション前:後=4リンク:マルチリンク
●ブレーキ前:後=Vディスク:Vディスク
●タイヤサイズ前:後=255/40R18:285/35R18
●東京標準現金価格=12,800,000円
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。 |