MERCEDES-BENZ
メルセデス・ベンツS600L
S600L

AUDIアウディS8
S8

「古豪」と「新鋭」ブランド力は
背景にあるストーリー性が決定する


プレステージサルーン市場、とりわけ日本では常に他を圧倒する強さを発揮しているメルセデスSクラス。
しかし、世界的には変化も現れている。
むろん、現段階におけるSの牙城は揺るぎない。だが現行モデルと急進勢力、アウディの旗艦を比較すると、将来的には不透明と思える部分も垣間見えるのだ。

リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara フォト|松本高好|T.Matsumoto

Sクラスが高級サルーンの頂点にある理由

 日本人は、魔法にかかっているのだろうか。Sクラスは、ダイムラー・メルセデスの時代(つまりSクラスという呼び名になる前)から、何世代にも渡ってプレステージ・サルーンのトップブランドとして君臨している。
 たとえば、欧米だと先代モデルは威厳の強さが威圧と感じられたためか、評判が芳しくなかった。ところが、日本では威風堂々としたメルセデス・ベンツとして大いに評価された。先々代からの正常進化と考えれば、それはそれで理解できる。実際、欧米と日本ではプレステージサルーンに求める価値も異なるだろう。ならば、あえて威厳を控えめにしてカジュアルとかスポーティといった表現も使えるようになった現行モデルは、日本人にとって物足りないのかといえば、そうでもない。トップブランドとしての座は揺るぎない。
 その理由を、定番ブランドの成せるワザと分析するのは簡単である。ただ、誤解を恐れずにいえば「スリーポインテッドスターが付いてりゃ、中身は何だっていいんだよ」と言葉を置き換えてしまうと、まがりなりにもクルマの評価を生業としているリポーターの立場として、日本人のブランド意識が少しばかり悲しく思える。
 たしかに、定番ブランドとして位置付けられること自体、その商品の価値の高さを証明していることにもなる。いまさら説明するまでもないが、Sクラスはイメージこそ変わっても、中身の機能はまさに本物である。
 「それにしても合点がいかない」とマーケティング・ハンドブックなるものをパラパラめくっていたら、最初の方のページに答えのヒントが記されていたのだ。
 要するに、世代の移行が行なわれたのでないだろうか。現行モデルのSクラスで中核を成す層は、たぶん50歳台だろう。つまり、団塊の世代である。それに対して、従来モデルまでは、戦前・戦中派が中核を成していたはずだ。こうした世代のグルーピングをすると、それぞれの消費動向に違いがあることが分かる。戦前・戦中派は、堅実であるが故に定番ブランドによって得られる信頼感を重視していた。一方、団塊の世代は社会人となったころに大量消費の時代に入り一気に生活が充足した。その後、大量消費から個人消費の時代に変化。懐かしい言葉だが、そのころに形成されたニューファミリーの主役でもあった。すなわち、団塊の世代は消費動向の変化を自ら経験したことで、モノを見る目が養われたのである。
 そう、日本ではクルマと人の世代の移行が時期的に一致したわけだ。こう考えると、Sクラスがプレステージサルーンのトップブランドとして君臨を続けていることの説明がつく。日本人が魔法にかかっているのではなく、世代の移行を踏まえてダイムラー・クライスラーが展開した製品戦略に見事にはまったといえる。だが、Sクラスとて現状に甘んじているわけにはいかない。モノを見る目が養われた団塊の世代は、定番よりも新規ブランドに価値を見出す可能性が大いにあるからだ。
 少し枠を広げて市場を見たとき、プレミアムサルーンの新鋭ブランドとして成長しているのがアウディだ。とくにA6やA4は、洗練されたデザインを新たなアイデンティティとして確立、販売面の拡大を続けている。最近のアウディほど、都会的という言葉が似合うクルマはない。ここで紹介するS8は、そのアウディの旗艦、A8のデリバティブモデルだ。
 

AUDI S8


  S8、そしてA8のアイデンティティといえるのがASF(アウディ・スペース・フレーム)。現段階、このクラスでは唯一となるオールアルミボディは、軽快な走りをもたらす。

  4.2リッターという排気量から、SクラスのV12に近いパワーを叩き出すS8のV8。アウディの中でも特別な存在である、Sシリーズの頂点に相応しいファインチューンの成果である。

  ●全長×全幅×全高=
   5035×1880×1415mm
●ホイールベース=2880mm
●車両重量=1850kg
●エンジン種類/排気量=
   V8DOHC40V/4172cc
●最高出力=
   360ps(265kW)/7000rpm
●最大トルク=
   43.9kg-m(430Nm)/3300rpm
●トランスミッション=5AT
●サスペンション前:後=
   4リンク:トラペゾイダル
●ブレーキ=Vディスク
●タイヤサイズ=245/45R18
●東京標準現金価格=11,500,000円 (アウディ・ジャパンTEL:0120-598-106)
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