ミニ・クーパーS

MINI COOPER S

時代を超えるスポーツスピリット
シリーズ最強のクーパーS登場


クーパーSのデビューによりラインナップも完成。ようやく全容が見えてきた新しいMINI。
自動車史を塗り替えた偉大なる名車の後継であり、リメイクであり、21世紀版であると同時に、BMWが手がける初のコンパクトカーであり、FWD車でもある。
そんな多様な価値が凝縮された新しい“プレミアム・コンパクト”の魅力と実力を、今回は海外試乗、国内試乗、オーナーインタビュー、比較試乗という4つのパートに分けて、すべて余すところなくお見せする。
まずは、ポルトガルの首都リスボンを基点にして行なわれたクーパーS国際試乗会のリポートから――。


リポート|萩原秀輝 |H.Hagiwara フォト|BMWジャパン



刺激の強さだけを求めたモデルとは一線を画す質感

 何やら新型ミニの回りが騒がしい。それだけ注目されているということなのだろう。リポーター諸氏は、タップリとした思い入れを込めて様々な評価をしている。また、元祖ミニを愛してやまない人々には、新型ミニはフェイクであるとかカバーであるとか、素直に受け入れがたい存在となっているようだ。
  そうした評価を否定はしないが、世の大勢ではない。ミニというブランドによって、コンパクトカーにプレミアムセグメントを確立するというBMWグループの戦略はすでに成功をもたらしている。オリジナルへのこだわりとは無関係に、市場は様々な背景を意識することさえなく、あるがままのニュー・ミニを評価しているためだろう。
  その勢いはもはや止めようがなく、ミニ・ファミリーは増殖中だ。ONEとクーパーに続き、'01年の東京モーターショーでは、ワールドプレミアとなったクーパーSを発表。プレミアムセグメントを確立しただけでは満足せずに、早くもハイパフォーマンスモデルを投入している。そして、クーパーSは予定通りに、'02年春から販売が開始されたのである。
  そのクーパーSが搭載するのは、他のミニが積む直4SOHC16バルブに、空冷インタークーラー付きのスーパーチャージャーを組み合わせたエンジンだ。スーパーチャージャーは、2個のロータリーピストンで構成されるルーツ型ブロワーを持ち、吸気を最大0.8barまで加圧する。そこで発生した熱をインタークーラーで冷却し、充填効率を高めつつシリンダーへ過給。その最高出力は163ps、最大トルクは22.3kg-mにまで達するという。
  ちなみに、シリンダーブロックには変更がなく、この事実はBMWとクライスラーが共同開発したエンジン(BMWとクライスラーが共同出資したブラジルのトライテック社で製造され
る)の基本設計が極めて高かったことを証明している。ただし、ピストン、コンロッド、クランクシャフトなどは専用に設計され、オイルジェット式ピストンクーラーや水冷式オイルクーラーも新たに採用されている。
  さて、今回のプレス試乗会は、ポルトガルのリスボンからユーラシア大陸の最西端、ロカ岬を往復するというルートで開催された。混雑したリスボン市街、大西洋岸の丘陵地帯を抜けるワインディングロード、流れの速い高速道路など、試乗の舞台は変化に富んでいた。早速、市街地での走りからリポートをお届けしよう。
  まず、最初に感心させられたのは、163psがもたらす刺激ではなく、エンジンや駆動系の滑らかさだ。とにかく各部の洗練度が高いのである。ゲトラグ製の6速MTを1速に入れクラッチをつなぐと、きわめてスムーズに発進する。クラッチのつながりに唐突感はないので余計な気遣いはいらない。ハイパフォーマンスモデルであっても、刺激の強さだけを求めるのではなく、走りの質感を損なわないことは、プレミアムセグメントの一員である限り必然となるのだろう。
  逆に、クラッチのつながりにダイレクト感を持たせることは容易だったはずだ。何もしなければ、当然プレッシャープレートも強化されているのでダイレクト感が増し、その分、慎重なクラッチ操作と強めの踏力を要求しただろう。だが、クーパーSはクラッチにダンパーの役割を果たすスプリングを設け、さらに高級車が採用するデュアルマスフライホイールを組み合わせている。その結果、市街地を走っていてもMTであること自体が負担にならないほど、余計な気遣いのいらないスムーズな走りを獲得しているのだ。
  また、スーパーチャージャーは低回転域から効果を発揮するだけに、スタート直後から充実したトルクが得られる。早めのシフトアップを繰り返してもモタつくことがなく、1000rpm台の後半に乗せておけば、市街地で必要な力はいつでも引き出せる。同時に、アクセル操作に対する応答の遅れがなく、踏み込み量に対する力強さの立ち上がりが素直なこともスーパーチャージャーの魅力だ。なおかつ、低回転域から充実したトルクを得ていても、その変動幅を電子制御式のスロットルが巧みに制御してくれるため、ラフなアクセル操作に対しても走りがギクシャクしないのが印象的だ。
 
  基本的なレイアウトはONEやクーパーと共通するが、クローム調のインテリアトリムなどで、スポーティさを強調する。
  6速MTを採用するクーパーS。ギア比は4.167/2.619/1.333/1.089/
1.333/1.089となり、1,2,5,6速時はファイナルが2.742、3,4速時は4.048となる設定。シフトゲートはスタンダードなHパターンで、1速の左側に「R」がくる。
クーパーSでは、人間工学に基づいて設計されたスポーツシートが標準装備となるほか、レザーシフトノブやステンレス製のスチールフットレスト、マグネシウム調のインテリアトリムなどが、専用または標準装備として用意されている。

MINIの生まれ故郷
英国オックスフォード工場を訪ねる

 少しばかり誤解があるようだが、ニュー・ミニはBMWグループが手がけるクルマではあるけれども、ドイツ本国で造られているわけではない。実際には、エンジンはブラジルから、さまざまな補機類はイギリスやアメリカ(その中には日本のサプライヤーも数多く入っている)から、ボディパネルはドイツからも送り込まれ、それらの組み立てはイギリスの学園都市として名高いオックスフォードで行なわれているのだ。
  BMWグループが持つオックスフォード工場は、ローバーから受け継いだ煉瓦造りの古い建物を順次建て替えている真っ最中だった。新しくなった建物は、設備や管理システムも最新鋭を誇り、その構成はBMWグループのノウハウに基づいている。したがって、ニュー・ミニの品質も基本的にBMWと変わりがない。
  今回、公開されたのは、そのなかのボディ組み立てラインと車体のアッセンブリーライン、そして高い品質を維持管理するためのクオリティ&エンジニアリング部門である。
  ボディは、BMWのグループ工場からプレスされたパーツが集められ、229基のロボットによりほぼ全自動で組み立てられる。ただし、ピラーの接合部といった重要な部分は、手作業により溶接されるという。このあたりにも、BMWグループのノウハウがしっかりと生かされているようだ。
  組み立て中のボディを見ると、剛性向上のための配慮が行き届き、主要メンバー内には小さな隔壁が無数に入っていた。たとえばフロントのサスペンションタワーひとつをとって見ても、閉断面を巧みに組み合わせた構造となっている。しかも、製造行程は厳密に管理され、それを担うクオリティ&エンジニアリング部門はまるで開発部門のようだった。
  また、工場内は明るく清潔。しかも、アッセンブリーラインには身体をかがめずに作業できるような設計が施されるなど、労働環境の向上や環境汚染に対する配慮も十分になされている、という印象を受けた。
  工場のラインスピードは比較的ゆっくりであり、効率最優先ではないことがわかる。それでも4500人が働き、2002年は10万台のミニがここから送り出される予定という。
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