
 かつての夢が現実に――――
英国の伝統とドイツの技術の融合

ミニ ワン&クーパー
MINI One&Cooper

歴史的名車とバイエルンの
血を受け継ぐ新世代スモール

「Freude am Fahren(フロイデ・アム・ファーレン)」の思想のもと、いつの時代も“駆けぬける歓び”を追い求めてきたBMW。時代の流れに逆らうことになっても、その思想を貫こうとする姿勢は、いま、確実に世界のマーケットで支持を集めている。もちろん、新たに末弟としてファミリーに迎えられたミニも例外ではない。生まれや育ちが兄弟たちとは大きく異なっていても、確かにBMWの遺伝子を受け継いでいるのだ。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|郡 大二郎|D.Kohri

 | あらゆるところにオリジナルの
面影を色濃く残す新型

予約受付けを始めた途端、現物チェックもそこそこに1500人が駆けつけたとか。さすが「ミニ」の威光には凄まじいものがあるが、コンパクトカー界が一段と楽しくなったのは事実だ。
ところで、イギリスからドイツに帰化し、BMWの手で開発されたNEWミニに関しては、まだまだ賛否両論やかましい。それだけ往年の、いわゆるクラシック・ミニ(マニアとしては、ADO15と呼びたい)の存在感が濃かったわけで、リメイク版? を見る目が厳しいのも無理はない。
それはそれとして、機械としてのクルマそのものを観察すると、総合的にかなり上質の仕上がりになっている。デザインや名前はともかく、スポーティ&高級風味の名門が初めて手がけたFF小型セダンとして、十分に納得できる走行感覚と品質だ。
その上で、クラシック・ミニの勘どころを実によく勉強したのもわかる。あの名作を今後も生き長らえさせるには、確かにこれしかなかっただろう。そこでベーシック版のOneに乗りながら、21世紀のドイツ語で綴られた郷愁の物語を繙ひもといてみよう。
室内に座ってみて、往年を知るマニアがかならず苦笑するのはダッシュボードだろう。中央に置かれた速度計など、懐しのマークIを模したのはわかるが、あまりにも囚われすぎの感がある。そもそもこのメーターは大きすぎ、位置も低めなので、かえってドライバーからは読みにくい瞬間がある。後席から見てちょうどいいぐらいなのだ。
それはともかく、やや低めの着座位置、やや立ち気味のウィンドスクリーン(前だけでなく横も後ろも)など、いまのクルマになくミニにあったポイントを巧みに押さえてはある。いわゆる鴨居が頭から遠いと心理的なゆとりが広がり、小さいクルマも大きく乗れる。ミニの先入観と違うのは、ステアリングコラムがキャブオーバー式に突っ立っていないことだけだ。
それはさておき、ここで指摘しておきたいのは、NEWミニは常識ではセダンでも、実質的にはハッチバック・クーペだということ。いくら後席にちゃんと座れるからといって、ドッコイショともぐり込むのはツラい。ここはあくまで前席優先の、洒落たシティ・クーペと解釈すべきだ。これはNEWミニだけでなく、ほとんどの2/3ドア車にいえることだが。
そのパッケージングだが、空間利用率では、オリジナル・ミニからの進歩が少なすぎる。4人乗れるとはいえ、後席の膝の前には拳骨一個ぶんも残らない。つまり昔と変わらない。最新基準の衝撃吸収構造だとかシートが分厚いとか、いろいろ事情はあるだろう。でも、全長だって60cmも延びているのだ。その点でもセダンより、BMWのいうスペシャルティカーに属する。ドアも非常に大きいし。余談ながら、ウェストラインから上の部分が低いのは、チョップドルーフのロブ・ウォーカー・ミニを連想させたりする。それもスペシャルティたる所以だ。
ただし、ラゲッジスペースに関しては、しっかり現代している。どんなに小型でもハッチバックというだけで便利なもの。床面の奥行きは30cm強しかないが、トノカバーまで50cm以上と深いので、小振りのスーツケースぐらいなら楽に呑み込む。後席バックレストを畳めば奥行き1.2mになるから、ボードでも大丈夫だ。ただし途中、シート部に20cm近い段差が残り、奥までフラットというわけにはいかない。
走行感覚の味付けも、ちゃんと現代風の奥にミニの伝統? を活かしてある。もちろん、横置きエンジンによるFFという以外、昔(というほどでもないが)と共通のものは何もない。でも、エンジンは最新設計の専用シングルカム16バルブでありながら、シュルンと抵抗なく軽いモダン感覚とは違う。いかにもロングストロークらしく、低・中速から一本一本のピストンがクランクを漕ぐ手応えというか、レシプロらしい息吹が嬉しい。音も必要以上に消してないが、聞こえるのは排気音だけで、機械的な雑味はない。
そんなわけで、実際にはリミットまで無理なく吹けるのに、そんなに引っ張る気になれない。楽しいのは3000〜4000rpmの中速域で、「ため」の効いたアクセルレスポンスを確かめながらひとつひとつギアを切り換えると、やはりミニを40年ぶん正直に進化させた感触がある。
そういえば、オプションのタコメーター(いや、レヴカウンターと呼ぼうか)はドライバーの正面、ステアリングコラムの上にあるが、これも知る人ぞ知るの配置だ。センターメーターを持つ最も初期のミニには回転計がなく、小径の電気式を金属バンドでコラムに留めたり、正面のダッシュに置いたりしたものだ。
感心や感慨を超えて笑ってしまったのは、ボディの動きまで正真正銘のミニ風なことだ。往年のミニといえば、全長3mそこそこしかないのにけっして煽らず、徹底的にフラットな姿勢を保つことで知られている。いや、乗り心地がフラットなのではない。姿勢が水平のまま、ひょこひょこ上下するのだ。NEWミニもその点は変わらない。FFでありながら可能な限りホイールベースを長く取り、特にフロントのオーバーハングを切り詰めた結果、ちゃんと四隅でハコを支えるスタンスになった、ということだろう。
凹凸の吸収性はそれほど良くなく、サスペンションのストロークが深い感じでもない。ただ、舗装の継ぎ目などをドスッと拾う瞬間、いかにも剛性の高いボディでしっかり受け止めている安心感はある。ガツンなどと下品な突き上げは皆無だ。好みにもよるが、これなら都会の高級スニーカーとして、ダイレクト感あふれるフットワークは味わえる。
コーナリングの感触も伝統に忠実で、コーナーに向けて切り込んでもほとんど傾かず(というより乗員にロールを感じさせず)、ステアリングの切れ角の通りにツツーッと曲がって行く。最近は小型車でも、姿勢変化と荷重移動を生かして曲がる感触が主流だが、ミニはNEWでも舵角とタイヤの接地力に頼っている感じだ。
――と、ここまで検証した結果、NEWミニが「あれ」の忠実な後継車であることは確認できた。最新の感覚で「あれ」に乗れるわけで、歓迎するファンも多いはず。でも、クラシック・ミニと根本的に違うのは、これが何かを提案しているわけではないことだ。つまり名曲のカバーバージョンであり、NEWミニの後継車は想像できない。
率直にいえば、小型車の歴史を根底から書き換えたクラシック・ミニは「レボリューション」だったが、その名声に頼ってしまったNEWミニは「エボリューション」ということだ。
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MINI One
21世紀のドイツ語で語られるクラシック・ミニの現代的解釈

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Oneもクーパーも同じ1.6リッター直4となるペンタゴンエンジンを搭載。これはBMWとクライスラーの共同開発になるエンジンで、Oneでは最高出力90ps、最大トルク14.3kg-mを発生する。 |
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Oneの標準タイヤサイズは175/65R15。ホイール(5.5J×15)もフルカバー付きのスチール製となる。その他、タイヤ空気圧警告灯がOne、クーパーともに標準で装備される。 |
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Oneではルーフがボディ同色で、テールゲートハンドルやドアミラーはブラックが標準となる。また、ドアミラーは電動可倒式を採用。 |
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巨大なセンタースピードメーターなど、インテリアの造形やレイアウトにも、クラシック・ミニを意識したデザインが取り入れられる。 |
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シートの形状や大きさはOneもクーパーも同じで、ファブリックとなるシート地のデザインだけが異なる。オプションでレザーシートも選べる。 |
Specification
●全長×全幅×全高 3626×1688×1416mm
●ホイールベース 2467mm
●トレッド前:後 1458:1466
●車両重量 1040kg
●エンジン種類/排気量 直4SOHC/1598cc
●最高出力 90ps(66kW)/5500rpm
●最大トルク 14.3kg-m(140Nm)/3000rpm
●トランスミッション 5MT
●サスペンション前:後 ストラット:マルチリンク
●ブレーキ前:後 Vディスク:ディスク
●タイヤサイズ 175/65R15
●東京標準現金価格 1,950,000円
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