サーブ9-3スポーツエステート

SAAB 9-3 SPORT ESTATE

V6を得ていよいよ走り出す9-3の裏本命

セダンとカブリオレしかなかった現行9-3に戸惑うサーブ・ファンは確実に存在していた。しかし、そんな心の隙間は今度こそ埋まるに違いない。待望のワゴンボディ、エステートがデビューしたのだから!

リポート|島下泰久|Y.Shimashita フォト|郡 大二郎|D.Kori


2.8リッターV6ターボが生み出す滑空感


 サーブ9-3スポーツセダンの登場は2003年初頭だから、もうすでに2年半が経つことになる。従来の9-3の伝統的な5ドアハッチバックボディから、装い新たにオーソドックスなセダン形態を採ることが明らかになったときから、サーブは9-3をセダンとエステート(と、カブリオレ)に分化させると明らかにしており、おそらくハッチバックの利便性に惚れ込んでいた先代オーナーなどは、その登場を今か今かと待っていたはず。そう考えると、ついにと言おうかようやくと言おうか、ちょっと待たされ過ぎた感はあるが、いよいよ裏・本命とでも言うべきそのワゴン版、9-3スポーツエステートがデビューを果した。
  サーブがこのモデルに託したのは、同郷のボルボV70のような高い実用性を持つ本格ワゴンではなく、たとえばアウディA4アバントのような、ライフスタイル演出型のスタイリッシュワゴンと見るのが正しい。それを端的に示しているのが全長で、スポーツセダンとの差はわずか30mmに過ぎない。
  おかげでプロファイルは、とても魅力的な仕上りを見せる。“ホッケースティック”と呼ばれるサーブ伝統のラインを描くDピラーと、アイスブロックを彷佛とさせる不透明のホワイトレンズを用いたテールランプが、短いリアオーバーハングと相まって独特のスポーティテイストを感じさせる。
  ただし、おかげでラゲッジスペース容量は犠牲になってしまった。通常時の419リッターは、実はスポーツセダンの450リッターを下回る。最大では1273リッターまで拡大するが、それもA4アバントほどではないにしろ決して広大ではない。ただし、リニアとアークでは助手席シートバックの前倒し機構が備わり、最長2.65mの長尺物を搭載することが可能とはされている。
  ラインナップには、注目すべき変化があった。最上級のエアロに新たにV型6気筒2.8リッターターボエンジンが組み合わされ、従来のエアロのパワートレインが新たにヴェクターに引き継がれたのだ。
  この新しいエアロの走りっぷりは、なかなか魅力的だった。250psを発生するこの新エンジンは、立ち上がりこそやや線が細いものの2000rpm台に入るとにわかに活気が漲りはじめ、そこから先はいかにもハイフローのターボらしい豪快なサウンドを響かせながらトップエンドまで一気に吹け上がる。サウンドチューニングには力が入れられたようで、窓を開けると豪快な排気音も楽しめた。心配は経済性だが、エアロに採用された6速ATは、その6速のギア比が高めの設定。おそらくこれで燃費を稼げるはずである。
  スポーツセダンのエアロでは闇雲に硬いだけだったサスペンションも、タイヤが18インチに拡大されているにも関わらず、以前のように跳ねまくることはなくなり、飛ばせばそれなりにフラット感も味わえた。ややトルクステアが出るものの、操舵力の軽減されたステアリングの反応も小気味良い。
  むしろ、これを味わったあとには他グレードのステアリングの重さの方が気になってしまった。エアロは俊敏性を演出するため、あえて軽くしたというが街中での使用、あるいは女性が乗ることを考えても、不都合がないなら操舵力は軽いに越したことはない。
  この9-3スポーツエステート、導入は遅かったが、その分使い勝手方面の作り込みはじっくり行なわれたようで、そこには大いに好感が持てる。新しいエンジンを含め、走りの洗練度も高い。これならば、冒頭にも書いたようにセダンに戻るには二の足を踏んでいたサーブ・ユーザーを吸引するのはもちろん、そのスタイリッシュな魅力で、新たな層にもアピールする可能性は十二分にありそうだ。


エンジンは4タイプ。2リッターターボ(写真右)が下から150ps/175ps/209psの3スペックで、今回のエステートから新たに2.8リッターのV6ターボ(同左)が加わった。フラットなトルク特性と、絶妙のサウンドチューンがウリだ。
グレード構成もエンジンラインナップに準じる。2リッターの150psがリニア、175psがアーク、209psがヴェクター、そしてV6がエアロ。Cd値0.33だが、サーブとしては初の前後軸におけるゼロリフトを達成している。
インパネまわりはセダンとまったく共通だが、新たにエアロ専用のメタル調トリムをあしらったスポーツステアリングを採用。トランスミッションはV6エアロが6AT、2リッターは5ATとなる。
体を包み込む絶妙なシートの掛け心地は9-3の美点。エアロとアークはレザー、ヴェクターはレザーとテキスタイルのコンビ、リニアはファブリックが標準となる。
ラゲッジ容量は通常時で419リッター、最大で1273リッター。特に広大ではないが、これはスタイル重視の確信犯だろう。リアシートは4:6の分割可倒式、トノカバーはワンプッシュでDピラー内側に沿って上方にスライドする。
エアロは18インチ(写真左:225/45R18)が標準。アークとリニアは16インチ(同右:215/55R16)となる。なお、ヴェクターは225/45R17サイズを装着する。
ラゲッジはツインフロアとなっており、サーブのアイデンティティである飛行機型にデザインされたアルミ製ハンドルを引くと、荷室フロアが2つに分割される。
SAAB 9-3 SPORT ESTATE
Aero
Arc
■全長/全幅/全高(mm)
4655/1760/1540
■ホイールベース(mm)
2675
■トレッド(前/後)(mm)
1525/1505
■車両重量(kg)
1590
1540
■エンジン種類
V6DOHC24V+ターボ
直4DOHC+ターボ
■排気量(cc)
2792
1998
■最高出力(ps(kW)/rpm)
250(184)/5500
175(129)/5500
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
35.7(350)/2000
27.0(265)/2200
■トランスミッション
6AT
5AT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク/Vディスク
Vディスク/ディスク
■タイヤ(ホイール)
225/45R18(7.5J)
215/55R16(6.5J)
■東京標準現金価格
¥5,370,000
¥4,280,000
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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